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(鈴のような音)
(武志)ハハ…。
はっきり聞こえたな…。(喜美子)うん。
こういう皿の形状やからか。そやろな。
釉薬の塗り方もあるんやろか…。あるやろな。
焼き上がって完成したと思てたのに…終わってなかったんや…。
♪~
生きてるんやな…。
そや 生きてるで。
本焼きをして冷ましている間に貫入といわれるヒビ模様が武志の器に広がります。
聞こえてきたのは かすかにヒビが入る音。
(貫入が入る音)
ハハハ…。
器が… 生きている音です。
(貫入が入る音)
♪~
♪「涙が降れば きっと消えてしまう」
♪「揺らぐ残り火 どうかここにいて」
♪「私を創る 出会いもサヨナラも」
♪~
♪「日々 恋をして胸を焦がしたい」
♪「いたずらな空にも悔やんでいられない」
♪「ほら 笑うのよ赤い太陽のように」
♪「いつの日も雨に負けるもんか」
♪「今日の日も 涙に負けるもんか」
(八郎)そんなに はまってるんですか?(大野)ほやねん。
今日もな 感性磨くんやいうてお友達とバーゲン出かけたわ。
えっ。ハハハハ… 何でも楽しんでるわ。
川原喜美子先生のおかげや。
ほいで ハチさんはいつまで 名古屋で1人で暮らすんや?
ああ 1人やんな?
あ… はい。 はい 1人です。
ハハハハッ… 今 おもろい冗談言うて切り返そうとしたやろ。
それで 思い浮かばんと やめたな。すみません。
(笑い声)
もう 名古屋帰ってきたらええねん。
ちゃうわ 信楽帰ってきたらええねん。ハッハッハッハッ…。
わしも ええ加減やな。ほんまですよ もう。
ほらぁ 昔のうわさする人もいやるかもしれんけど…。
ああ もう そんなん気にしてません。
一回 名古屋引き払おう思たんです。うん。
武志のそばにいてやろ思てね。
せやけど… 会社辞めてまでいうたら…また それも 武志の負担になるやろ思て。
今のところ このままで。
♪~
お昼 食べたん?いや…。
置いといたん 食べてへんの?
うん…。
♪~
もう聞こえへんのやろか…。う~ん…。
もう落ち着いたんやろなぁ。そやな。
ほんでも生きてるで。
作品は生き物や。
分かってる。
うん。
はあ…。
武志?
武志?
(ノック)
開けるで?・(武志)ああ。
よいしょ…。体調 悪いんか。
あ いや…。ほんま?大丈夫。
大丈夫なんやったら ごはん食べ。いや…。
朝も ろくに食べてへんやん。味がしぃひん。
熱は?ない。
食欲は。ないことはない。
ほな 食べぇ。
何も食べへんわけにはいかへんで。
お母ちゃんはなあんたが生きていくことしか考えてへんねん。
生きていくために 食べて下さい。
♪~
よし…。
頂きます。どうぞ。
♪~
何やったら食べられそう?食べられそうなもん言うて。
何でも同じや思う…。ほんでも 食欲はあるんやろ?
食べたいいう気持ちはあるで。ほな 食べたいもん言うて。
何かあるんちゃう? こう…これやったら食べられるぅわいうの果物とか。
ええよ。 これ 頑張って食べるし。
大丈夫。 ハハッ。
ほな…。
♪~
そや 今日の予定は?いうても もう お昼過ぎてるけど。
何もない。することなくなったか。
ハハッ…ごはん食べるんが 今日の仕事や。
そうか。ほな それが今日の大事な仕事や。
おう。おう。
(陽子)ほら… あの… あれ あれ。あれ あれ あの人 あの人…ほら 「自由は不自由や~」いうやつ…。
(加代)あれあれ言われても分からへんがな。
名前が出てけえへんのや。え~っと ほら ほら あの人 あの人…あ… 先日 芸術功労賞いうの取った人誰やったかな…。
ジョージ富士川先生?せや! ジョージ富士川や~!
ジョージ富士川のこと言うてたんか!もう…。
サニーにも来たことあるんやでぇ。(なな子)え~。
喜美ちゃんもな 仲よう話してたわ。
(信作)こんにちは~ 入るでぇ。おう。
(陽子)どないしたん。(信作)仕事で来たんや。
ええかな?まあ… ええけど 終わったから。
すんません。あ~ ハハッ。喜美子 悪いけど また大作戦や。
今回は うちの若いもんらが企画した。おう。 入れ。
(鳥居)失礼しますぅ。あ~。
こんにちは。こんにちは。(3人)こんにちは。
鳥居さんやね?はい。うん。
何してん 入れ ほら。
(岩崎)岩崎と申しますこんにちは。
こんにちは。(3人)こんにちは。
で?年明けに こういうものを企画しました。
信楽で活動されている陶芸家さんの作品を集めた展示会です。
あの 陶芸家さんだけやのうて…。
ああ そうです。一般の方々の作品も展示します。
え~。 ほやから 「みんなの陶芸展」。(3人)お~!
あっ 演歌歌手も?
あ~ それは 大野課長が…。
あの 小さなイベントですけどこういう小さなことを積み重ねて…あの…あの~。ほらっ。
私たち若い世代がバトンを引き継いで生まれ育った町を盛り上げていこう思います!
頑張りますんで よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
よっしゃ! ようできた。
目ぇ通しといてくれ。行くで 次。
よし。お時間頂き ありがとうございました。
ありがとうございました。ご苦労さんです。
ほな 失礼しますぅ お邪魔しました。さっ さっ 次 行こ。
何て 何て?15日間やるんですって。
そんな長う…。長いねぇ。
ちょっと 話 してええ?あ… ごはん残して ごめんな。
ううん 武志の作品のことや。うん?
作品 うまいこといったら智也君に見せる言うてたよな?ああ…。
琵琶湖大橋 渡って見せに行ったらええわ智也君のお母さんにな。
え… 一緒に行かへんの。行かへん。
え… 行く言うてたやん。そんな暇のうなった。
京都の展示会もあるし終わったら 今年は もっかい穴窯たくで。もっかい?
「みんなの陶芸展」いうのがあるんよ。それに出品しよう思う。
「みんなの陶芸展」…?
役場のな武志と同じ若い子ぉらが企画した。
それに参加しよう思う。誰でも参加できんねん。
子どもも 大人もな。ふ~ん…。
忙しなるし 堪忍な。
ああ…。
(戸の開閉音)
♪~
なあ。うん?
「みんなの陶芸展」参加せえいうこと?
そんなこと言うてへんやん。誰でも参加できるって…。
うん。
参加しよかな…。
なあ お母ちゃんの作品の横に俺の作品 並べてええ?
あかん。何で。
親の力 借りて 出品するんか。
いや…。
参加するんやったら自分で言い。担当は 鳥居さんと岩崎さん言うてた。
自分で 頭 下げなさい。
いつや。年明けや。
年明けか…。
それやったら…それまでに作品 1つ… 2つは作れるな。
うん…。
よっしゃ。
♪~
何ぃ。
♪~