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【社説】

トヨタとNTT 未来の街の日本連合

 トヨタ自動車とNTTが「スマートシティー」分野での業務資本提携に合意した。日本を代表する「巨人」が手を結ぶ以上、人を中心にした手本となる街づくりを目指すべきだ。

 両社は約二千億円ずつ相互出資した上で、共同でスマートシティーの基盤を構築していく。両社は二〇一七年、インターネットに接続するコネクテッドカー(つながる車)分野での協業で合意していたが、さらに長期的な視点で未来の街づくりを推進して相互に企業価値を高めていくため、資本提携にまで踏み切った。

 スマートシティーは、渋滞などの社会的課題を新技術で克服することを目的に整備された、持続可能な都市のことだ。異業種との連携を加速するトヨタは今年一月、静岡県裾野市の子会社工場跡地(約七十万平方メートル)を活用したスマートシティー構想を発表した。トヨタが開発している自動運転の電気自動車(EV)が走り、人工知能(AI)を活用した健康チェックも行うという。

 実現するには、情報通信インフラが不可欠だ。トヨタの豊田章男社長は二十四日の会見で、通信を血管に例えて「NTTは社会システムの根幹を担っている」と評価した。裾野の開発を先行事例として協業を進め、その後は他都市に拡大していく計画だ。

 NTTも、米ラスベガスでスマートシティー整備に取り組んでいるほか、マレーシアでは二月から実証実験を始めた。日本ではこれから、第五世代(5G)移動通信システムを使ったサービスが本格化するが、さらに次世代の通信技術も見据えてトヨタとの連携を深めるとみられる。

 スマートシティーは、日本、世界各地で計画が立ち上がり、競い合うように開発が進む。そのタイミングで両社が手を組んだことは「日本連合」が形成されたことを意味し、今後はどんな企業が参画していくかが注目される。NTTの澤田純社長が会見で、スマートシティーに力を入れるグーグルなど米巨大IT企業へのライバル心をあらわにしたのも、意気込みの表れといっていい。

 一方、5G先進国の韓国でも、広範な産業界での利活用は広がっていない。スマートシティーで収集される膨大な住民データの厳格な管理も大きな課題だ。世界のライバル勢に対抗する上では、住民ファーストを徹底し、安全や暮らしやすさを重視した「日本らしさ」の確立も求められる。

 

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