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【社説】

一斉休校 学童保育拡充の契機に

 新型コロナウイルスの感染症対策で休校が続く間、放課後児童クラブ(学童保育)に大きな負担がかかっている。子育て支援に必要な施設だ。厳しい運営実態に目を向け拡充策を考える機会にしたい。

 一万八千二百六十一人。二〇一九年五月時点で学童保育を利用したいのにできない待機児童数だ。

 感染症が発生する前で、都市部を中心にこれだけの子どもたちが利用できないほど施設はぎりぎりの運営を強いられている。

 そこへ一斉休校の実施だ。学校に行けない子どもたちの受け皿となったことで負担が増した。

 政府は、学校再開に向けた指針を二十四日に公表したが、感染の拡大状況によっては新学期も休校が続く地域は出るだろう。支え手の手薄な弱い部分へのしわ寄せが続きそうだ。

 学童保育は共働きやひとり親家庭の小学生が放課後や夏休みなどに、宿題をしたり友達と遊んだりする居場所で、公営や民間など全国に約二万六千カ所ある。学童保育は、こうした家庭にとっては仕事を続けるための命綱と言える。

 政府は一斉休校を要請する際、学童保育は原則開所するよう要請した。だが、唐突な休校要請で人繰りに苦心している。人手不足など現場の実態を政府は十分に認識しての開所要請だったようには思えない。

 厚生労働省によると、十六日時点で学童保育を設置している自治体の約七割が午前中から開所する対応をとっている。それ以外でも低学年は学校が、高学年を学童保育が受け入れるなどしてやっと対応している自治体もある。

 負担増に日本学童保育学会は子どもの居場所としての役割を学童保育に「丸投げ」されたとの緊急声明を出した。現場の混乱と困難を考えれば当然の危機感だろう。

 職員である指導員は発達段階や家庭環境の違う子どもたちに向き合う専門性が求められる。だが、全国学童保育連絡協議会によると非正規職員が公営施設でも半数近い。全体の半数以上が年収百五十万円未満だ。

 不安定な雇用、不十分な待遇でも子どもに寄り添う担い手に頼っているのが実情である。

 政府は三十万人分の定員拡充を進めているが、需要に追いついていない。施設の充実や職員の待遇改善に政府や自治体のさらなる財政支援は欠かせない。政府は学童保育は重要な子育て支援策と認識し態勢強化を図るべきだ。

 

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