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 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための全国一斉の休校措置が、新学期から解除されることになり、文部科学省が再開に向けた指針を公表した。

 近距離で話をする時のマスク着用や換気の徹底などを指示するとともに、再開後、子どもや教職員に感染者が出た場合は、学級や学校単位で休業することを認める内容となっている。

 安倍首相の要請で唐突に始まった一斉休校には多くの疑問があった。感染状況や通学範囲の広さ、往来の激しさなどは、地域によって異なる。自治体が学校ごとに危険度を見極め、柔軟に判断する方が理にかなう。

 休校をめぐっては他にも、小さな子がいる保護者が働きに出られない▽代わりになる学童保育の施設の方が感染リスクが高い恐れがある▽栄養は給食が頼りという子もいて、健康が損なわれる▽給食業者や非常勤職員の働く場が失われる――などの指摘が出ていた。万全とはいえないが、指針はそうした課題の克服にも目配りしている。

 授業が来月始まっても、本人や家族に基礎疾患があるなどの理由で、登校に不安を持つ家庭もあるだろう。各校は個々の状況把握に努め、そうした場合には出席を強いることのないように留意してもらいたい。

 言うまでもないが、学校再開は警戒を緩めていいという合図ではない。政府の専門家会議は都市部などでの大規模流行に警鐘を鳴らしている。校内にはいなくても、周辺地域で感染者が急増した場合はただちに休校に切り替えるなど、臨機応変の対応が求められる。

 また、開校か閉鎖かの二者択一ではなく、他に取りうる手段も用意しておきたい。学年や学級別に授業日を設ける分散登校など、密集を避けつつ授業を進める工夫があっていい。休校にする場合も、学校施設を開放して自宅で一人になる子たちの居場所をつくることはできる。

 気になるのは休校に伴う学習の遅れだ。9年前の3月に起きた東日本大震災では、被災した学校の多くは4月中下旬まで、遅いところでは5月下旬まで始業がずれ込んだ。その後、夏冬の休みを短くしたり、土曜授業を行ったりして取り戻したという。当時の知見も生かし、児童生徒や教員の負担が過大にならない方法を探ってほしい。

 ネットを使った授業動画や、デジタル教材による自習の試みも広がっている。ただ、自宅に機器があるかどうかや自学自習ができる環境か否かは家庭による差が大きく、教育格差を広げかねない面もある。対面学習の重要性に変わりはない。NPOなどと連携し、学習支援事業の強化もあわせて進めたい。

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