文化庁は23日、国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」への補助金約7800万円を全額不交付とした決定を見直し、一部減額して愛知県に約6700万円を支給すると決めた。文化庁は県の申請手続きの不備を理由に不交付としたが、県が不備を認めて申請し直したとしている。
芸術祭では従軍慰安婦を象徴する少女像などが物議を醸し、企画展「表現の不自由展・その後」が一時中止に追い込まれた。文化庁は、県が補助金申請の際に会場の安全性や事業の円滑な運営を懸念しながら報告しなかったとして、内定していた補助金の不交付を昨年9月に決めた。
これに対し県は、補助金適正化法に基づき不服を申し出た。県は審査の過程で安全面などの懸念を事前に報告しなかったことを認め、不服申し出を取り下げた上で、企画展の再開に要した経費などを除いて再び補助金を申請。文化庁は一転、交付が適切だと判断した。
愛知県の大村秀章知事は県庁で記者会見し「県と文化庁が協議した結果、折り合った」と述べた。
文化庁は昨年4月、外部有識者による審査委員会を経て芸術祭を補助事業に採択したが、不交付は事務方による内部審査だけで決めた。これに反発し、審査委員を務めた大学特命教授が辞任したほか、さまざまな文化芸術団体や識者から「事後検閲」「表現の自由の侵害だ」と批判が相次ぎ、不交付決定の撤回を求める声が上がっていた。
〔共同〕
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