台北支局があるのにタイから駆け込み入境する意味はどこに
事実、2回にわたった「隔離日記」では、バンコクから出発した往路の機内で「大好きなシャーリーズ・セロンが出演する米国映画『スキャンダル(Bombshell)」』を観たことをはじめ、「1日目の朝はタピオカの入ってないミルクティーで始まりました」という危機感のない個人的エピソードを羅列。
入境後の台湾では要隔離者への地元自治体からの支援物資を「プレゼント」と表現し、台湾の市民らのマスク購入が実名制で一人あたり週3~5枚に制限されているなか、支援物資のマスク14枚や、栄養食品など一式の写真をアップ。
さらに隔離先ホテル選びでも「懐かしい台湾映画『非情城市』(*ママ=正しくは『悲情城市』)の舞台にもなった基隆の再訪も考えました」「せっかくなので台湾海峡の金門島は?」などとレジャー気分あふれる表現が、「防疫に必死の台湾に対し、税金負担だけでなく、人的面でも多大な迷惑をかけていることを自覚していない」「おなじ日本人として恥ずかしい」と槍玉にあげられていた。
元来親日感情の強い台湾社会だが、今回の新型ウイルスに対する台湾の厳しい防疫姿勢と、初動で出遅れた日本の危機感の薄さが対比され、「憧れ」の日本社会に対する信頼感が大きく揺らぎ始めている。
そんな中、台湾の防疫強化に足並みをそろえようとしている在台邦人らにとって、吉岡編集部員の「隔離日記」は「空気が読めていない」「台北には自社の支局長がいるのに、駆け込み入境までして書く意味のある情報なのか」と反感をもって受け止められた。それが炎上の原因になった。
台湾で長く暮らす50代の邦人男性らは「この編集委員がいう『4月の取材予定』がどれほど大事なのかわからないが、台湾社会の空気も読めない状態で駆け込み入境して、どんな取材ができるのか疑問」と一蹴。「例えば蔡英文総統に今回の台湾の防疫姿勢について単独インタビューをするのだとしても、この編集委員が聞き手になったような記事に対し、少なくとも在台邦人社会は読む気もしないという人が大方だと思う」と切り捨てている。