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 4カ月後に迫った東京五輪について、国際オリンピック委員会(IOC)は開催の延期を含めた検討を始めると表明した。首相も国会で「延期の判断も行わざるを得ない」と述べた。

 新型コロナウイルスの感染が広がり、世界のスポーツ界からも見直しを求める声が急速に高まっている状況を踏まえれば、当然の判断といえよう。

 IOCは4週間以内に結論を出す方針だというが、中ぶらりんの状態は短くしなければならない。ことし夏の開催を見送ることをすみやかに正式決定し、そのうえで延期の幅や諸課題について議論するなど、混乱と動揺を少しでも抑えるやり方を考えてもらいたい。

 この間のIOCの迷走は不信を深めた。今月17日に臨時理事会を開くなどして予定どおりの開催を確認。ところが2日後にバッハ会長自身が米紙の取材に「異なるシナリオを複数検討している」と述べて波紋を呼び、そのまた2日後にはドイツのラジオ局に対し、延期は難しいとの見解を語った。

 感染拡大の勢いが急で情勢が日々動いたとはいえ、情報発信の稚拙さに選手をはじめとする関係者は振り回された。

 日本側の対応も心もとない限りで、マラソンコースを札幌に移したときと同様、IOCとしっかり意思疎通が図れているのか、大きな疑問を残した。

 今後の検討にあたっては、両者の間の溝を埋めるとともに、解決しなければならない課題、考えられる選択肢、それぞれのメリット・デメリット、新たに生じる問題を乗り越える方策、そのための費用と分担のあり方などを整理し、人々に分かりやすい形で示す必要がある。この際、真夏の開催にこだわるのはやめ、柔軟に考えてはどうか。

 選手たちが力を発揮できる公平な条件の整備、競技会場の手配、運営ボランティアの確保、大勢の観客を迎え入れる態勢の再構築など、テーマは数え上げればきりがない。何より、どんな状態になれば開催に踏み切るのか、誰が、いつまでに、どんな手続きによって決定するかの説明は欠かせない。世界保健機関(WHO)との連携がこれまで以上に求められよう。

 五輪の開催はパラリンピックと一体であることも忘れてはいけない。選手の障害によってはウイルスに感染すると重症化する恐れがある。健常者に対する以上に、科学的知見の集積と慎重な判断が必要だ。

 今回の事態は、スポーツは平和で落ち着いた環境があってこそ成り立つものであることを、改めて突きつけた。各方面に幅広く目配りをしたうえで、安全安心な五輪を探りたい。

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