国民一人ひとりへの現金の給付や電子商品券、減税、キャッシュレス決済でのポイント還元制度の拡充など、さまざまな提案が与野党から飛び交う。
安倍政権が新年度に向けて検討を急ぐ、緊急経済対策の具体的な内容についてだ。
新型コロナウイルスの感染の広がりが、人々のくらしや経済に与える影響は大きい。首相は「マグニチュードに見合う巨大な政策を打つ」と強調する。
与党からは財政支出について、リーマン・ショック後の15・4兆円や昨年12月に決めた13・2兆円の経済対策を「上回る規模を考えなければいけない」といった声があがる。
だれもが先の見えない不安を抱えており、対策は急を要する。しかし落ち込む消費を刺激するにしても、人と人の接触が増えて感染のリスクが高まるような手段では、本末転倒だ。
感染と経済、双方の状況に応じて、どの時期にどんな対策をとるべきか、慎重に判断しなければならない。規模ありきではなく、具体策の目的、効果や課題を洗い出し、冷静に優先順位を見極める必要がある。
最も優先すべきは、仕事や収入を失った人の生活を守ることだ。支えが欠かせない人に優先して支援が届く、わかりやすい制度設計が求められる。
政府は個人事業主などへの緊急融資について、一斉休校の影響以外の理由でも認める。公共料金の支払いが難しいときは一定期間の猶予を事業者に求め、社会保険料や税金も猶予する。条件や手続きなどでさらに改善できるところはないか、検討を重ねてほしい。
収入に不安を感じ、事業者がイベントの自粛をためらったり、解雇が広がったりすることを防ぐ手立ても講じるべきだ。
現金の給付ではリーマン・ショック後の2009年に、1人1万2千円、65歳以上と18歳以下には2万円の定額給付金を配ったことがある。ただ、貯金に回るとの指摘は根強く、効果には疑問も残る。すべての国民に一律に配るよりも、影響の大きい人へ重点配分できるようにしたい。
消費税の減税は、事業者に値札の張り替えなどの手間がかかるうえ、店頭での値下げが実際に進まないと、消費喚起の効果は期待できない。ポイント還元も、使えない人には恩恵が及ばない。政策にかかる費用と効果を精査することが大切だ。
中国からの輸入が激減するなど、感染の世界的な拡大で、国境を越えた人やモノの動きが制約されている。国内の企業活動や経済全体に与える影響について点検を急ぎ、最善の手を打たねばならない。
速報・新着ニュース
あわせて読みたい
PR注目情報