2020年03月23日

◆ 五輪の延期は可能か?

 五輪の延期は可能だと思っている人が多いが、考えが甘すぎる。

 ──

 「五輪を延期するべきだ」と考えている人が多い。世論調査では大幅な過半数となっている。
 延期するべきだという考えの前提となるのは、「延期は可能だ」ということだ。だが、本当に可能か? それは考えが甘すぎるというしかない。

 人々が「延期すべきだ」というとき、その前提となるのは「延期が可能だ」ということだ。その意味は、「来年の夏には新型コロナは収まっている(少なくとも小康状態である)」ということだ。つまり、問題が一応片付いている、ということだ。しかし、そんな楽観的なシナリオは実現するのか?

 あえて言おう。「人々は何も考えていないのだ」と。単に今夏の状態のことを心配しているだけであって、来冬や来夏のことなどは何も考えていないのだ。そして、「時がたてば災難は過ぎ去る」と勝手に楽観しているのだ。
 あまりにも考えが甘いと言わざるを得ない。

 簡単に言えば、人々は朝三暮四の猿と同じなのである。猿が朝のことしか考えられないように、人々は今夏のことしか考えられない。今夏を乗りきることだけを考えていて、その先のことをまったく考えていない。だから、今夏のことはさんざん心配するくせに、来冬や来夏のことなどはまったく心配していないのだ。そして「来夏には五輪をまともに開催できる」と思い込んでいる。
 あまりにも考えが甘いと言わざるを得ない。

 ──

 では、実際には、どうなるか? 
 うまく行けば、今夏には新型コロナが大流行して、大半の人々が感染して、免疫を付ける。そのことで、来冬の被害を最小化できる。また、来夏の被害も最小化できる。すでに今夏のうちに感染しているのだから、来夏になって新たに感染することはないからだ。……これが最善のシナリオであって、私はこれをお薦めする。
  → 五輪の延期は最悪だ: Open ブログ
 夏に感染すれば、最小限の死者を出すことになる。この場合、多数の人々が感染するが、そこで免疫を得るから、次の冬には免疫を得た状態でシーズン入りすることになる。この場合には、(免疫を得ているので)死者は最小限だ。

 しかし、現実には、そうなりそうにない。人々は今夏の感染を最小化しようとする。だから、そうなるだろう。
 では、その場合には、将来はどうなるか? こうだ。
  ・ 今夏の被害は最小化する。感染者数は最小だ。
  ・ 今夏に免疫を付けた人が最小なので、来冬の被害は最大化する。死者も最大だ。
  ・ 被害が最大なので、世界は大混乱。経済はメチャクチャ。
  ・ そのまま、来春・来夏に突入するが、状態は地獄だ。
  ・ 地獄の状態なので、五輪を開催する余裕はない。
  ・ 死者の喪に服するために、五輪は中止。


 これが最もありそうなことだ。比喩的に言えば、東日本大震災があった 2011年に五輪(または別の祝祭)があったとしたら、それは開催されるだろうか? いや、無理だ。地獄のような事件があって、多数の人々が死んでいて、鎮魂が必要なときゆえ、お祭り騒ぎなんかをやれるはずがない。当然、自粛となる。
 それと同様だ。莫大な感染死者を出す来冬の地獄状態のあとでは、鎮魂が必要なときゆえ、お祭り騒ぎなんかをやれるはずがない。当然、自粛となる。つまり、五輪は中止だ。
 そして、そのことは、「来冬は地獄のようになる」という見通しを得れば、当然の予想なのだ。
 
 にもかかわらず、人々は来冬や来夏の地獄のような惨状について、予想が付かないでいる。あまりにも考えが甘すぎるというしかない。朝三暮四の猿も同然だ。



 [ 付記1 ]
 今は都市封鎖の形で、世界の各地が生産停止状態だ。しかし、このような生産停止状態が長続きするはずがない。いつまでもやっていれば、全員が餓死するだけだ。
 となれば、いつかは(感染が続いた状態のまま)生産活動を開始せざるを得ない。つまり、都市封鎖を解くしかない。
 とすれば、将来的には、「新型コロナと人類とは共存する」という形になるしかないのだ。「新型コロナを制圧しよう」などと思っても、それは不可能なのだから、新型コロナと共存しながら、相手の拡大をなるべく弱めることで妥協するしかないのだ。
 当然ながら、感染者や死者は今後もずっと続くことになる。それを受け入れるしかない。
 今後は都市封鎖を解いて、感染の拡大をある程度は受け入れながら、人々は生産活動を続けることになる。だとすれば、そのことを理解した上で、被害がいっそう悪化する来年になる前に、今年のうちに、五輪を開催する方が利口だろう。(新型コロナと共存する形で。)

 [ 付記2 ]
 ただし、実を言うと、新型コロナを制圧する方法はある。それは「社会全体でマスクをすること」だ。実際、日本・タイ・ベトナム・中国・韓国では、その方法で成功した(または成功しつつある)。
 しかし、マスクについては、欧米人はどうしてもイヤがる。WHO もマスクの効用を否定する。……こういう状況では、欧米では新型コロナが蔓延するのは不可避だろう。となれば、新型コロナと共存するしかないのだ。(欧米では、ね。)

 ※ 日本では一応、生活可能だし、制圧できている。
   このまま夏に突入すれば、一応の勝利を得る。
 
 ※ 参考記事
   → マスクで飛沫感染防止: Open ブログ
   → マスクで医療崩壊の阻止: Open ブログ

 [ 付記3 ]
 「マスクについては、欧米人はどうしてもイヤがる」
 と上に書いたあとで、ニュースを見たら、欧米でも論調が変わりつつあるようだ。
 《 フランス政府「マスク不要」論に高まる異論 「アジアを見習え」の声 》
 フランスでは一般に「マスクは病人がつけるもの」とされてきた。だが、新型コロナはアジアに比べて欧州での感染拡大の勢いが激しいことから、医療界でもマスクの効用に注目が集まった。
 仏紙パリジャンでは医師らが連名で「東南アジアはマスク着用を一般に広げ、外出禁止令なしに感染拡大を押さえた」として、政府の方針見直しを訴える公開書簡を発表。ルモンド紙は、日中韓などアジア各国でマスク着用が奨励されている現状を紹介し、欧州とアジアの格差を報じた。
( → 産経ニュース

 ようやく世界も、マスクの重要性に気づきつつあるようだ。
 ただし相も変わらず、日本の専門家会議は気づかない。気づくとしたら、欧米で公式発表が出たあとで、20日後ぐらいだろう。何事も、周回遅れ。
  → 専門家会議の見解(補足): Open ブログ

posted by 管理人 at 18:52| Comment(0) |  インフルエンザ | 更新情報をチェックする
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