「Getty Images」より
女性に酒を飲ませ、酩酊状態にさせたうえ性交したとして、準強制性交等罪に問われていたナンパ塾『リアルナンパアカデミー』(以下RNA)の塾長・渡部泰介被告(43)に対する判決公判が2020年3月12日に東京地裁で開かれ、家令和典裁判長は渡部被告に懲役13年(未決勾留日数300日算入、動画が保存されているPCやHDDの没収)の判決を言い渡した(求刑・懲役14年)。
RNAは座学に加え路上でのナンパ実践により塾長のメソッドを学ぶナンパ塾で、100人ほどの塾生がいるといわれていた。2018年から、塾生らが相次いで逮捕され、同年9月、渡部被告も逮捕された。塾生・塾長あわせ逮捕者は11名にのぼっている。
起訴された複数の塾生らに対しては、東京地裁で公判が開かれ、すでに実刑判決が言い渡されている。彼らの公判で明かされたRNAの手口は共通しており、渡部被告の公判に証人出廷した被害者や塾生らの証言とも一致していた。
RNAの手口はこうだ。まず繁華街で女性をナンパし、店で飲んだのち、近隣のホテルや、RNA所有の通称『ハウス』と呼ばれる部屋に女性を連れ込む。ダーツゲームやカードゲームを持ちかけ、負けると罰ゲームとしてウオツカやイエーガーなど度数の高い酒を飲むルールで女性を酩酊させたのち、性行為に及ぶのである。
ある被害女性はダーツに勝ち続けたため、塾生らは急遽カードゲームに移行し、共犯と手札をメールで教えあうなどのイカサマ行為をして女性を負けに追い込んだ。さらに性行為を動画などで記録し、それをRNAのグループラインに送信していたことも明らかになっている。これは『和姦の証拠を残す』という塾長・渡部被告の教えによるものである。ハウスは東京・新宿区だけでなく大阪にもあった。
渡部被告は3件の準強制性交等罪で起訴されていた。2017年11月13日に東京都内のホテル一室において、塾生だった元会社員・大瀧真輝と共謀の上、飲酒酩酊し抗拒不能となったAさんと性交したという「Aさん事件」。2018年3月2日、大阪ハウスにおいて、塾生だった歯科医師のS(不起訴)と会社役員のG(同)らとナンパをしたCさんに飲酒酩酊させ抗拒不能な状態に陥らせて性交したという「Cさん事件」。同年3月10日、元塾生の元世田谷区職員・根津天亮、ブランド販売会社の役員・吉岡新一郎らと、都内のハウスにおいて飲酒酩酊し抗拒不能となったBさんと性交したという「Bさん事件」だ。
2018年12月10日、初公判における「Aさん事件」の罪状認否で渡部被告は「女性を抗拒不能にしたことはなく、たとえ抗拒不能だったとしてもそれを認識していなかった」として、起訴事実を否認。あくまでも女性の同意の元、性交をしたと主張していた。「Bさん事件」、「Cさん事件」も同様の主張である。否認事件のため、検察官が証拠請求した被害者や元塾生らの調書を渡部被告側が不同意としたことから、関係者らの証人尋問が続き、審理は長期化した。初公判から1年5カ月後にようやく開かれた判決公判。東京地裁は「抗拒不能であることを認識していた」と、渡部被告の主張を退けた。
この日の判決までには、起訴された塾生らの一審公判は終結している。渡部被告とともに「Aさん事件」を犯した大瀧は、「Yさん事件」にも問われ、懲役7年の判決を言い渡された。「Yさん事件」は、元会社員・羽生卓矢とともにYさんに対し同様にナンパの上飲酒酩酊させ抗拒不能な状態に陥らせ性交したというものだ。
この羽生は大瀧と起こした事件のほか、元東京メトロ社員・根本賢とともに同様の手口で起こした「Xさん事件」により懲役7年の判決を受けた。渡部被告とともにナンパした「Bさん事件」に問われた根津は懲役5年、吉岡は懲役5年の判決を言い渡されている。(注:Xさん、Yさんについては公判ではAさん、Bさんという呼称が用いられていたが、渡部被告の事件のAさん、Bさんとは異なるため、本稿ではXさん、Yさんとした)
渡部被告の公判に先立って行われた彼らの公判からは、RNAにおける、ナンパから性交に至るまでの卑劣な実態が明らかになっている。加えて、彼らの中には起訴され公判に至ってなお、渡部被告と同様に、被害者である女性に非があるという考えを示すものや、塾長・渡部被告への尊敬を捨てきれないものもいた。