台北支局もあるのになぜ

 これほどにまで炎上した理由について、長く台湾で暮らしている50代の邦人男性らは、「私たち在台邦人が、防疫に必死の台湾の皆さんにどれほど気をつかっているか、少しは考えてほしい。台湾には日本語がわかる人も多いのに、こんな恥さらしな日記を公開するなんて」と憤る。

 今回の新型ウイルス騒動では、台湾が早期に中国からの入境を制限するなど厳しい防疫姿勢を示したのに対し、中国の習近平国家主席国賓訪日が目前だった日本では、安易な楽観論に立って初動に出遅れが目立った。

 台湾は2011年の東日本大震災発生当時、世界最多の約200億円もの義援金を被災地に寄せたことからもわかるように、元来が親日感情の強い場所。歴史的に関わりの深い日本をさまざまな面で「進んだ国」とみる憧れなどが下敷きになっているが、今回の日本の危機感のない防疫対応を目の当たりにして、日本への心配だけでなく、失望感までもが漂い始めている。

 この邦人男性らは「あれほど日本人に親切だったのに、エレベーター内やタクシー利用時などは、露骨に日本人を警戒するようなそぶりがみられ、在台邦人はただでさえ肩身が狭い時期。マスクなども無駄に消費しないよう気づかっている」と解説。「そもそも朝日新聞は自社の台北支局が存在し、居留証を持った支局長も駐在している。わざわざこの微妙な時期にバンコク駐在の編集委員が4月の取材予定のために滑り込みで入境する意味がわからない。台湾の皆さんが週末に薬局で行列して入手しているような、貴重なマスクが14枚も入った支援物資を『プレゼント』と表現してこれ見よがしに公開する神経も信じがたい」「限られた状況の中で一生懸命防疫に尽くしている台湾の人々を侮辱している。台湾人にとっても、台湾で遠慮がちに暮らす日本人にとっても、迷惑で不愉快」と吐き捨てる。

 朝日新聞では3月13日、同社の小滝ちひろ編集委員がツイッター上で新型コロナウイルスについて「戦争でもないのに超大国の大統領が恐れ慄(おのの)く。新コロナウイルスは、ある意味で痛快な存在かもしれない」などと投稿し、「死者や重篤者が続出し、世界経済が大打撃を受ける中、不謹慎だ」との批判が殺到。その後本人が突然アカウントごと削除し、同社広報はツイッターアカウントを通じて「(ツイッターの投稿は)報道姿勢と相いれない行為」と説明。また広報は14日、「『痛快』という表現は著しく不適切」「感染した方をはじめ多くの皆さまに不快な思いをさせた」と、謝罪している。

 しかし、今回噴出した批判の声のひとつに対し、フェイスブック上の「朝日新聞アジア太平洋」は「ごらんくださり、ありがとうございます。4月にどうしてもこの時期にお伝えしたい取材の予定がありす(*ママ)ので、なんとか入りたいと考えて参りました。台湾の防疫対策をより理解し、また読者の方にも伝えたいと考えてFBも始めました。日本で必ず参考になる面も多々あると考えたからです。(略)2回目以降、そして4月の記事もぜひよろしくお願いします」と開き直るかのように明言している。