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【今は昔】転生!かぐや姫【竹取の翁ありけり】 作者:七師

第2章「かぐや姫」

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玖拾捌.スーパーシークレットライブ

 おしろいの代わりに自ら光るというアイデアは結果的に大成功だったようだ。


 顔だけが光るとお化けっぽくなると思って服も含めて全身が光るようにしていたのだけれど、特に日が沈んで以降は夕闇の中に俺の姿が淡い光に浮き上がって見えてたいそう幻想的に見えたのだと後で爺が言っていた。それは昼の大惨事を補ってあまりあるほどだったらしく、夜は大盛り上がりだったそうだ。


 しかし、式神の残酷な和歌は噂が噂を呼び、俺に直接和歌を渡そうというものはかなり和歌に自信がなければ躊躇するようになった。


 (それはそれで俺的にはラッキーかも)


 当初はどうなるかと思ったけれど、結果的には式神のお陰で負担が軽くなったわけで、あの変態でもたまには役に立つものだ。そんなことを本人に言うとつけあがりそうだから言わないけど。


 (そういえば、お話の中のかぐや姫は並み居る求婚者をことごとく袖にするんだったよな。で、最終的に5人に絞るんだったっけ?)


 俺は、こっちの天照に拉致される前に中間試験の勉強のために竹取物語の問題を解いていたところだったことを思い出した。もっとも、全部通して読んだわけではないので細かいところは分からないが、あらすじくらいは把握しているつもりではある。


 5人の求婚者は皆公卿や皇子で、かぐや姫に無理難題を突きつけられて誰一人解くことができず、結婚を諦めるのだ。


 (あの中に5人の公卿はいるのかな?)


 俺もお話のかぐや姫と同様、誰とも結婚するつもりはないが、超が付くほど有名な古典の登場人物がいるかもしれないと思うと一度見てみたいという思いは抑え切れない。


 俺は目を凝らして来賓席の方を眺めていた。


 婆「かぐや姫がそんな真剣な顔で殿方を物色し始めるとは。ようやくかぐや姫も自覚が出てきたのですね」

 俺「違います」

 婆「そんな恥ずかしがらなくてもいいんですよ。しかし、あまりに見つめると殿方のほうが持たないのでほどほどにしておきなさいね」

 俺「あっ……」


 ふと気づくと、来賓席で目を回して倒れる貴族が続出している。光り輝く俺の魅力が乗った視線に射殺された哀れな男の残骸たちだ。


 (自重、自重っと)


 翌日は歌会が行われた。歌が上手いことが判明した式神に出させようと一瞬思ったけれど、昨日結果的にうまく行ったからといって今日も変態がうまくやるかどうかはわからないと思い直して自分で出ることにした。


 平安時代の貴族の恋愛事情というのは極端に少ない出会いが特徴の1つだ。現代ならそれを生かすかどうかはともかく、小中高大のどこかで男女が交流するような機会があるのが普通だが、平安時代の貴族の女性は基本的に屋敷から外に出ることはない。女房として奉公する場合も住み込みだ。


 なので男女が知り合う機会というのは、基本的にうわさ話を聞きつけた男性が気になる女性の家を覗いて好みだったら和歌を送って、という流れになる。しかし、俺の屋敷は結界が張ってあるせいで外から覗くことは不可能だった。


 そういうわけで、この祝宴は俺を直接見ることができるまたとないチャンスであり、その中でも歌会は俺と同席することができる超貴重なイベントで、そこに出席できる権利は超人気アーティストのシークレットライブのチケットよりもレアだった。


 俺「雪もやってみればいいんだよ」

 雪「わっ、私は結構ですっ」

 俺「いいからいいから。全然痛くないし、むしろ気持ちいいから。ねっ」

 雪「だっ、ダメですって、やっ、そんな無理矢理」

 俺「うへへ、やっぱり雪の肌すべすべで気持ちいい」

 雪「やん、ちょっとそんなとこっ、つっついちゃダメ。くすぐったいよぉ」

 俺「ダメだよ、雪。今いい所なんだから動かないで」

 雪「かっ、かぐや姫さまぁ」

 俺「ふぅふぅ、もうちょっと……で、終わるから……、我慢して……」


 歌会に先立って、俺は雪を俺の部屋に呼んで密会をしていた。べっ、別にいかがわしいことなんかしてないよっ。例の全身発光する魔法を雪にもかけてあげてるだけなんだからねっ。


 全身発光魔法は普通は物に対して使うもので対象物に呪印を施す必要があるのだけれど、それを人体に施すために一種の刺青のようなことをやっているのだ。刺青といっても、普段の見た目は透明で書いたものが見えないというもので、刺青を入れるときにもくくすぐった気持ちいいだけで痛みはないという魔法の刺青を使っている。


 ところが雪はどうもそれに抵抗感があるらしく、それでさっきのような会話になっていたのだ。だから、紛らわしいことを書いてアクセス数を上げようとか、そんな下心はないんだってば。

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