玖拾漆.恐怖の人間電球
雪「かぐや姫さま、ただいま戻り…、かっ、かぐや姫さまっ!」
俺「うーん。ちょっと明るいか…。あ、雪、お帰り。どうしたの、雪?」
雪の声に振り返ると、雪が驚いた顔で尻もちをついていた。
雪「かぐや姫さま、どうなさったんですか?」
言われてやっと自分の状況が変なことに気付いた。
俺「あー、やっぱりちょっと明るすぎだよね。もっとさり気ないくらいがいいかな?」
さすがに室内明かりなしで部屋が煌々と照らしだされているのはいくらなんでも明るすぎた。これじゃ人間電球だ。俺は反省して適当に光量を調整してみた。
雪「そっ、そもそも何で光ってるんですかーっ!!」
俺「だめ……かな?」
俺は何となくチワワのような表情で首をかしげてみた。
雪「だっ、だだだ、ダメとかそういうんじゃなくて、そのっ、いっ、いきなりでびっくりして」
俺「ほんとにダメじゃないの?」
チワワの表情のまま雪にずずいっと近づいていく。
雪「かっ、かぐや姫さまっ。これ以上は、わっ、私、死んでしまいますぅ」
雪は俺の目をうっとりと見たままぶるぶると震えだした。
(くぅ~、何この可愛い子っ!)
俺は思わず雪にがしっと抱きついてぎゅっと抱きしめた。
雪「くっ、苦しいです……」
俺「ごめん。雪が可愛いから思わずいじめちゃった。テヘペロッ」
雪「かっ、かわっ……」
雪は表情からはその白い肌を真っ赤にして恥ずかしがっているのが伺えるのだが、ハレの日のためにおしろいを厚塗りしているせいで、全く顔色の変化を見ることができない。これじゃ魅力半減だよ、俺的に。
俺「実はね、おしろいを塗る代わりに自分から光ってみたらいいんじゃないかと思って実験してたんだ。どう思う?」
雪「ほわ~」
(だめだ。雪は今、混乱していて戦闘不能のようだ)
いずれにしても、今からおしろいを塗っていては間に合わないからこのまま行くっきゃない。近くに来るのはこの屋敷の人だけだし、遠目に見たら何が起きてるのかはわからないだろう。
俺はまだ復活しない雪から化粧道具を受け取ると、眉を整えて口紅と頬紅を差した。それから式神が着ていた服を着て、準備万端整った。
俺「雪。雪、行くよ」
雪「はっ、かぐや姫さま。私、どうしていたのでしょう?」
俺「ちょっとぼーっとしてただけだよ。もう全部できたから行こうか」
雪「はい。かしこまりました」
そう言って、雪はもう一度俺の顔を見て、また顔を赤らめたようにして視線を逸らし、俺を先導して会場へと向かっていった。
次回更新は変則的ですが土曜日の予定です。