【プチ鹿島の本音】紅白「AIひばり」にザワザワ

プチ鹿島
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 年明けのラジオで早々にしゃべったのですが、ここでも書きたい話題があります。それは「AI美空ひばり」です。昨年末のNHK紅白歌合戦に「出場」しました。

 「NHKスペシャル」で見たときは感心しましたが、紅白の舞台に立つとなれば話は別。とてもザワザワした。というのも芸能史を調べればわかりますが、美空ひばりさんはある時期から親族のコンプライアンス問題で紅白に出ることができなくなったからだ。

 そんな過去があるのにAIなら出すってNHKは調子が良すぎませんか? もちろん遺族や関係者の許可を得たのだろう。しかし「本人」の許可は得ていないしNHKは過去を引き受けていない。そこが気になる。たとえば晩年のひばりさんにNHKが「過去にいろいろありましたが、最後にもう一度出てくれませんか」という交渉をしたなら当時の人々は夢を抱いたはず。ひばりさんも意地があるだろうから簡単にはオーケーしない。

 でもそんな感情の激突を超え紅白に登場したら視聴者は恩讐(おんしゅう)の彼方に心を動かされただろう。私の好きなプロレスはレスラー同士が憎しみあい、怒りながらも長い時間がたつことでまた同じリングに上がることがある。ファンはその光景を見て「ああ、見続けて良かった」と感動するのだ。しかし「AI美空ひばり」には肝心の泥臭いドラマが無い。“溜(た)め”が無い。生身のめんどくささはスルーしている。

 どうせやるなら「AI生方恵一」も登場してほしかった。84年の紅白で都はるみさんを「ミソラ」と言ってしまったアナウンサーだ。失敗より大騒動になったことに少年の私は驚いた。翌年にNHKを辞めた生方さんをひばりさんと共演させる。そんなAIの使い方だったら優しさやおかしみがあって最高だったのに。(お笑いタレント、コラムニスト)

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