<うみの杜で働く>飼育員・大谷明範さん サメの美しさを伝える
仙台うみの杜水族館(仙台市宮城野区)は7月、2015年のオープンから5年を迎える。同年閉館したマリンピア松島水族館(松島町)の後継として、仙台港背後地に誕生した東北最大の水族館は、昨夏に来館者数500万人を突破した。三陸の海の魅力発信に知恵を絞り、希少動物の繁殖や健康管理に心を砕くスタッフの奮闘を追った。
(報道部・三浦夏子)
流線形の姿を目にした瞬間、その美しさに思わず息をのんだ。
仙台うみの杜水族館(仙台市宮城野区)の飼育員大谷明範さん(39)は、マリンピア松島水族館時代の2004年、初めてヨシキリザメ=?=を捕獲した。
人生初の漁船で船酔いしながら捕まえた個体は大きく、青かった。船を揺らす力強さ、独特の臭い。船酔いは一気に覚めた。
あれから16年、三陸の代表魚に心を奪われ続ける。
うみの杜はヨシキリザメを飼育、展示する国内唯一の水族館。過去には他施設にも例があったが、長期飼育は困難を極める。「世界で最も美しいサメ」と評される一方で、あらゆる人工的な刺激が苦手な「最も育てにくいサメ」でもある。
これまで20回捕獲したが、100日を越えて飼育できたのは5回。17年には当時、最長記録を更新していた個体が原因不明で急死した。水槽の底で動かなくなっているのを発見した。
現在飼育するサメは、18年に志津川湾の定置網にかかった。うみの杜での飼育日数は19日時点で602日に達し、国内の最長記録を更新し続けている。
飼育で特に気を配るのは餌の量だ。多いと成長が過剰に早くなり、短命につながる。何度も失敗を重ねた末、1回の最適な分量は体重の0.9~1.0%と探り当てた。
見せ方も工夫を凝らす。展示エリアの照明は、サメの青さが際立つように青い光を混ぜた。「自分が感じたサメの雄大さ、美しさをできる限り伝える」
若林区荒井出身。子どもの頃から海の生き物が大好きだった。年齢を重ねても三陸の海への好奇心は尽きず、石巻専修大(石巻市)では松島湾に生息するタツノオトシゴの一種、サンゴタツの研究に没頭した。
飼育員の仕事の傍ら、18年からは亘理町で地元の海の素晴らしさを伝える講座も開く。受講生は漁師の子ども。知識量で負けないよう必死だ。
東北はクマノミのようなカラフルな魚が少ないが、よく見れば愛らしい魚が多い。「来館者が足を止め、隠れた魅力に触れるきっかけづくりが自分の役割。ここから東北の海の研究者が誕生すれば恩返しになる」と使命感に燃える。
[ヨシキリザメ]メジロザメ科で熱帯や温帯の海域、日本では太平洋に生息する。体は細長く、背中の鮮やかな青色が特徴。一般的に成長すると体長は2~3メートルになる。気仙沼市ではヒレを特産品のフカヒレに加工する。うみの杜水族館は開館当初から三陸の海の代表魚として長期飼育に挑戦している。