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【社説】

新型コロナ対策 地方の底力を信じたい

 新型コロナウイルス感染症の対策について政府は専門家会議の見解を受け方針を見直し、地域の実情を踏まえた対応に転じた。柔軟な対策の実施へ、地方自治体や民間の力を生かしたい。

 感染が拡大している地域は引き続き対策が必要としつつ、感染が確認されていない地域は休校や文化施設の利用自粛を解除してもいい-。専門家会議が示した見解は、いわば地域ごとの対応を求めている。政府も見解に沿った方針に改めたが、当然だろう。そもそも感染状況は地域で違いがあるからだ。

 安倍晋三首相は専門家の意見を聞かずに独断で、イベント自粛や全国一斉の休校を要請した。そのやり方に自治体の首長からは疑問や反発の声が上がった。

 政府の対応で仕事がなくなり生活に困る人が出かねない。子どもたちにとっては学校生活がなくなっただけではなく、人生の節目の大切な行事である卒業式の実施にも大きな影響が出た。

 政府はまず、イベント自粛や一斉休校による感染拡大防止の効果がどれくらいあったのか、根拠を示し丁寧に説明すべきだ。

 一方でこの間、各地域では注目したい独自の動きがあった。

 感染者の増加を受け北海道の鈴木直道知事が二月二十八日に「緊急事態宣言」を出し外出の自粛を求めた。

 知事の危機感は道民に伝わったようだ。感染者は減少傾向となり、宣言は終了した。地方の取り組み次第では対策が効果を上げると分かったケースではないか。

 浜松市や富山市など政府の判断を待たずに学校を再開させる自治体も出始めた。

 大阪府は患者増加に備え、重症度に応じて医療機関や宿泊施設に振り分ける対応を決めた。埼玉県は感染の有無を調べる検査の優先順位を明確化する方針を表明した。いずれも医療現場の混乱を避けるための独自の判断だ。

 民間にも動きがある。一部のテーマパークでは換気のよい屋外施設に限定したり、入り口で来場者の体温を測るなどの対応を取りながら営業を再開している。

 地域の状況を冷静に見つつ、感染防止対策と日常生活の両立を実現する。そのために自治体や民間ができることは少なくない。こうした取り組みを尊重したい。

 政府は地方の努力を支える情報の提供や水際対策、経済支援、医療支援などに徹し、一律で一方的な規制には慎重であるべきだ。 

 

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