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【社説】

コロナ禍で苦境 先見えぬ中小の不安

 新型コロナウイルス感染症の影響で中小企業の苦境が鮮明になっている。政府は資金繰り支援を打ち出したが、先が見えない状況に経営者の不安は消えず、切れ目のない対策が必要となろう。

 東京商工リサーチが今月上旬に実施した新型コロナに関する調査では、中小企業(資本金一億円未満)の52・7%が「既に影響が出ている」と回答した。二月上~中旬の前回調査と比べて32・1ポイントも上昇。業種別では、インバウンド(訪日外国人)消費の減少を受けた宿泊、旅行業などが大きな打撃を受けている。

 一方、大企業(資本金一億円以上)で「既に影響が出ている」のは64・2%だった。海外で幅広く事業を展開する大企業の影響が先行し、今後はイベント中止などで中小企業へも影響が拡大するとみられる。実際、名古屋商工会議所には「昨日の夜の来店客はゼロだった」(飲食店)「ほぼ全ての商品が中国製で物が入ってこない」(文房具店)といった深刻な相談が続々と寄せられている。

 東京商工リサーチによると、全国の二月の企業倒産件数(負債額一千万円以上)は、前年同月比10・7%増の六百五十一件で、六カ月連続で前年を上回った。三月十七日時点で、新型コロナに関連した倒産は北海道の飲食店や福島県の旅館など六件だが、同社担当者の「東日本大震災の後は、日を追うごとに被害が確定できた。今回は先が見えないことに対する恐怖があり、業種、地域を問わず影響が出てくる」との予想は、的外れなものとはいえない。

 政府は十日に発表した緊急対策第二弾で、新型コロナで業況が悪化した中小・小規模事業者向けの新たな貸付制度を設けた。20%以上、売上高が減少した中小企業の場合、三年間は利子補給を受けることができる。余裕資金が乏しい中小企業にとり、日々の資金繰りは命綱で「緊急避難策として一定の評価はできる」(愛知中小企業家同友会)との声も上がる。

 ただ、融資は返済しなくてはならない。中小企業団体担当者は「返済の必要がない助成金を求める声は多い」と明かす。景気が悪くなり、取引先の大企業から値引き要請を受けると、中小企業は断りづらい。負の連鎖が起きやすい弱い立場だ。中小企業の破綻が相次げば、融資する地域金融機関も無傷ではいられず、金融システム不安につながりかねない。官民一体で、谷が深い景気後退を避ける施策が何より必要だ。

 

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