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【今は昔】転生!かぐや姫【竹取の翁ありけり】 作者:七師

第2章「かぐや姫」

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捌拾陸.カラオケはどうですか?

 天照(…姫ちゃんのバカー)


 そういうと天照は空へと消えていった。


 (なんなんだ、あいつは)


 天照の言動はいつも意味不明だけれど、今日のはさらに意味不明だった。いきなり雪の前に姿を現して、未来から俺を連れてきたことを暴露して、雪と喧嘩して、なんだかよくわからない捨て台詞を吐いて帰っていった、そのどれもが何をしたかったのかよくわからない。


 (あいつは雪と喧嘩しにきただけなのか?)


 ほっとため息をつきながら振り返ると、雪は顔を真っ青にして身体をブルブルと震わせて座り込んでいた。


 俺「雪っ。どうしたの?」


 俺は雪の側に座って雪の手を取ると、雪は力なく俺の手を握ってきた。


 雪「わっ、私、大変なことを……」

 俺「大変なこと?」

 雪「天照大御神様に啖呵を切り申し上げてしまいました。私が死ぬだけでお怒りが解けなければ、私のお父さまお母さまだけでなく、竹姫さまにまで迷惑がかかってしまいます」

 俺「んー、多分大丈夫だと思うよ」

 雪「大丈夫なわけがありませんっ。神さまを怒らせ申し上げてしまったら、天変地異が起きてもおかしくないんですよ。大火事や大地震が起きて、帝にまでご迷惑をおかけ申し上げてしまうかも…」


 雪は話しながら真っ青な顔をさらに青くしていって、身体の震えもどんどん大きくなっていった。歯の根が噛み合わずにカタカタと言っているのが俺にまで聞こえてくるようだ。


 俺「雪」


 俺は震える雪を見かねて雪を俺の胸に抱きかかえた。


 俺「大丈夫。雪は私が絶対守るからね」

 雪「……」

 俺「たとえ天照が相手でも、雪には指一本振れさせないよ」

 雪「……」

 俺「それに、天照は多分、あんなくらいのことじゃ根に持ったりはしないと思うよ」


 天照に限らず月☆読もそうだ。天照には巨大隕石を頭から降らせたこともあるし、月☆読は巨大雷で真っ黒焦げにしたこともあるけど、何か根に持たれたふうなことはない。


 俺「天照はいつも暇で暇で仕方がないって雰囲気だから、雪と喧嘩したのもストレス発散したくらいにしか思ってないんじゃないかな」

 雪「……ストレス発散?」


 我ながらいい表現を思いついた。ストレス発散。まさに天照の言動はそんな感じだ。その言葉でほとんどの天照の行動は説明できそうな気がする。もっとも、今日はやけにあっさり帰っていったから、ストレスが完全に解消されたかどうかちょっと不明だけど。


 俺「そう、ストレス発散。なんかよくわからないけど、天照の仕事はいろいろ精神的に疲れるんだと思うよ」

 雪「…竹姫さまは天照さまのことをよくご存知でいらっしゃいますね」

 俺「そうかな」

 雪「ええ。…でも、許されるのは竹姫さまだけで、私が許されるかどうかは…」


 雪の震えはさっきよりは収まったけれど、まだやはり震えは止まらないようだ。


 俺「雪。今晩は私と一緒に寝なさい」

雪の謙譲語がなにやらひどいことになっていますが、古語の敬語は直訳するともっとひどいことになることも少なくないですから、こんなのは序の口ということで。

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