調査リポート
» 2019年07月05日 18時00分 公開

今日のリサーチ:グーグルが調査、スマホ時代の消費行動は「ジャーニー型」から「パルス型」へ (1/2)

スマートフォンの普及で消費におけるオンラインとオフラインの垣根が低くなりつつあります。そうした中、グーグルが日本国内で実施した調査によると、一般消費財購入において注目すべき傾向があるようです。

[ITmedia マーケティング]

 Google日本法人のグーグルは2019年6月28日、記者向けの説明会を開催しました。ここではデジタル化に伴う生活者の消費行動に関してグーグルが独自に実施した調査の結果について、グーグル リサーチ部門統括の小林 伸一郎氏(コンシューマーマーケットインサイトチーム)が解説しました。

消費財において広がるECとリアル店舗の併用

グーグルの小林 伸一郎氏 グーグルの小林 伸一郎氏

 一般消費財をインターネットで買う行動は年々増えています。大手調査会社のインテージが全国の男女5万2500人(15~79歳)から継続的に収集している日々の買い物データ「SCI(全国消費者パネル調査)」のデータを確認したところ、消費財におけるインターネット購入は年々増加しています。

 この動きの背景には、単身者の増加や女性の社会進出が進んだことで、時間に関係なく移動も伴わない利便性の高いECが好まれるようになっているという社会の変化があると考えられます。そしてもちろん、スマートフォンが普及したことでECの利用のハードルが低くなったということがあるでしょう。しかもこの動きは若者に限った話ではなく、SCIのデータを見ると、むしろ年齢が高いほどECに対して積極的に利用する傾向さえ見られるようです。

 また、注目すべきはECと店舗を併用する人の割合が44.5%を占めているという点です。最多はまだ「店舗のみ」(55.3%)であるものの、ECのみという人は皆無であり、多くの人はどちらかを選択しているということではなく、両方を併用しています。

集中から分散へ

 小林氏は、買い物行動におけるオンラインとオフラインのハイブリッド化は今後のマーケティングコミュニケーションを考える上で非常に重要であると指摘します。

 これまで商品の購入プロセスは一般的に、商品を知り興味・関心が高まったところで購入に至ると考えられてきました。最後に売り場で選んでもらうため、そして店舗の棚に置いてもらうためには商品が認知されていることが大前提であり、だからこそ企業は認知獲得のためテレビCMなどを通じたブランディング施策に多額の投資をしてきたわけです。

 ところが、ECにおいては幾つかのカテゴリーで、大規模な広告予算を獲得しているブランドの売り上げ比率が金額ベースで下がっている傾向が認められています。購入候補が少数のブランドに集中していた店舗と異なり、ECでは選択の幅が広がります。

 もしブランド認知に始まらない消費行動があるとすれば、それは何によって購買意欲を刺激されているのか。この疑問を掘り下げるため、グーグルは1万人規模の定量調査と自宅訪問や買い物への立ち会いも含む観察型の定性調査を行ったのです。

 調査の結果見えたのは以下の3つのトレンドです。

  • 知らなかった商品を買うことにちゅうちょがない
  • 店舗やECサイトに行く時点では何を買うかまだ決めていない
  • 暇つぶしでスマホを眺めているときに偶然知った商品を買うことにちゅうちょがない

 AIDMAに代表される従来のジャーニー型消費行動と異なり、明確な理由もなくなぜか瞬間的に買いたくなってそのまま購入に至るという消費行動をグーグルでは「パルス型消費行動」と位置付けています。

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