捌拾肆.拉致しちゃった、てへっ、オッケー
天照(そっかそっか。この子が雪ちゃんか)
俺「俺、お前に雪のこと話したことないはずだけど?」
天照(ふふー。この天照ちゃんにわからないことがあるわけないでしょ)
そう言うと、目にも止まらない早業で雪の正面に陣取り、両手を揃えて真っ直ぐに前に伸ばした。
もみもみ
天照(ふむ。Bか)
雪「えっ…、きゃっ、なっ、何をするんですかっ」
天照(小ぶりだが、しかし弾力がある)
雪が驚いて身体を捻ったところを、今度は背後から抱きすくめた。と、何かを察した天照はとっさに後ろへ大きく飛び退いた。
その瞬間、いままで天照がいたところを衛府太刀が真っ直ぐに上から下へと切り下げられる。俺がいつも常備している太刀を復元して天照に切りつけたのだ。
俺「天照っ、いい加減にしろっ、…んんっ」
俺が天照の後を追って向きを変えて太刀を突きつけようとしたとき、天照はすでにそこにはいなかった。どこに行ったのかと視線を泳がせた瞬間、天照が俺の足元から垂直に飛び出してきて、俺の胴に抱きついてきて胸に顔を埋めてきた。
天照(ぐへへへへへ。でもやっぱりおっきくて柔らかいのが好きなのだぁ)
俺「こ…の…、ド変態がっ!!」
俺は天照の腰の辺りを捕まえると、そのまま天照を逆さに持ち上げて、庭の方へとぶん投げた。天照は一直線に庭の方へと飛んでいって、木にぶつかりそうなところで空中に浮いたまま急停止した。
木箱から素早く八咫烏の羽を取り出すと、俺は天照を追いかけて庭へ飛び出そうとした。その時、
雪「竹姫さまっ」
雪が俺の小袖の裾を掴んだ。
(しまった。雪のことを忘れてた)
俺の顔から血の気が引いた。もっとゆっくり雪には事情を説明していくつもりだったけど、この状況をどうやって説明しようか。
雪「竹姫さまは一体どういう方でいらっしゃるのですか?」
俺「あうあう…」
天照(んーとね、あたしがね、うふふ、連れてきちゃったんだよ、てへっ、オッケー)
俺「○ーラかよっ!!」
思わず突っ込んでしまった。雪はさらに混乱に拍車がかかっているようだが、なんとか落ち着いて口を開いた。
雪「連れてきたって、どこからですか?」
天照(んーとね)
俺「それはもういいっ!」
天照(ノリが悪いなぁ、もう。姫ちゃんはね1000年先の未来からあたしのために来てくれたんだよ)
俺「拉致されてきたの間違いだろ」
天照(そうともゆー)
雪「1000年…先の…未来……?」