捌拾参.アイドル光臨
『だったら、あたしが練習台になってあげよっか?』
この声は…
俺『天照っ!』
振り返ると、相変わらずの出で立ちに淡く光り輝いて宙に浮いて、……、変なポーズをとっている。
俺『何やってんだ?』
天照『悩殺してんのよ。の☆う☆さ☆つっ』
俺『いや、だらけてるようにしか見えない』
天照『ムキーッ』
天照は下半身はうつ伏せに上半身は仰向けになるように腰のあたりで身体を捻って宙に浮いていたのだが…、ただ寝相が悪い子にしか見えなかった。おかしいな。グラビアとかで見たことあるポーズだと思ったんだが、あれは写真の撮り方がよかっただけだったんだろうか。
雪「あの…、その方は?」
俺「あ、ごめんね。この人は…」
しまった。雪がいたんだった。雪は現代語わかんないよね。
天照(天照ちゃんだよっ)
天照は念話で話しかけてきた。月☆読と違って口は動かしてるけど、現代語の口の形だった。古語は話せないのだろうか。
雪「天照…、天照大御神さまっ!!?」
雪は驚いて後退って床に平伏した。天照はその様子を見て、ほんの僅かに顔を歪めた。それはほんの僅かで、多分天照の顔を見慣れていないと気づかない程度だったが、俺には確かに歪めたように見えた。しかし、それがどういう意味を持つのかは、俺にはよくわからなかった。
俺「怖がらせてんじゃないよっ」
天照(いてっ)
とりあえず、そう言って俺は天照の後頭部をはたいてみた。これが正解かどうかはわからないけれど、天照ならノリでやったと言えばたいして怒りはしないと思う。
雪「たっ、竹姫さまっ!!」
雪が悲鳴を上げるように叫んで、驚愕の表情で俺の方を見てきているが、とりあえず天照の相手が先だ。
天照(怖がらせてないよっ! フレンドリーに挨拶しただけじゃんっ)
俺「とりあえずピカピカ光るのとフワフワ浮かぶのを止めろ。話はそれからだ」
天照とやりとりする時は現代語で男言葉になっていたが、古語になってもそのノリのまま男言葉になってしまっている。
天照(光るのを止めるのは無理。これは自動だから。むしろ部屋の明かりつけてよ)
天照はそう言うと床に降りて、俺は部屋の明かりを灯した。
俺『居室、明かり、ON』