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【今は昔】転生!かぐや姫【竹取の翁ありけり】 作者:七師

第2章「かぐや姫」

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喜.70歳から出世する人、しない人

 (な、な、な、何かごまかさないと)


 俺「わっ、私は、今のようにお爺さまやお婆さまといつまでも一緒に暮らしたいです」

 婆「竹姫…」

 俺「私がお爺さまやお婆さまの元に来て、まだ2ヶ月半しか経ってございません。それなのにもう他の方の元に行くというのはあまりに薄情ではありませんか」


 これは…、口からでまかせというわけではなく、実際そう思っていることでもある。爺、婆とは、死んでしまう可能性があるせいで雪ほどはしっかり話ができているわけではないが、得体の知れない俺をここまで育ててくれた人たちなのだ。雪と同じかそれ以上に俺のことを思っていてくれているに違いないのだ。


 すると、俺の言葉を聞いた爺と婆は感極まったのかほろほろと涙をこぼし始めた。


 爺「竹姫や。私もあなたを嫁に出すことは悲しいと思っています。しかし、私ももう歳です。今はまだこうして元気でいられますが、いつお迎えがくるかわかりません。そうなったとき、あなた一人でこの世の中を生きていくことは不可能です」

 俺「それはわかります。しかし、私はお爺さまやお婆さまのように私のことを受け入れてくれる方が他にいらっしゃるとは思えないのです」

 爺「わかりました。何も今日明日にでも嫁ぎ先を決めるという話でもありません。竹姫が納得できる相手が現れるまでゆっくりと選べばいいと思います。あなたは大変美しいので選ぶ相手には事欠かないでしょうし」

 俺「ありがとうございます」


 とりあえず、時間稼ぎはできた。この流れだと最終的には結婚しなければならないことになるが、それまでに現代に帰ることができればいいだけだ。


 俺「ところでお爺さま。他の2つの報告とは何でございますか?」


 俺はこれ以上この話を引き伸ばさないように話を転換することにした。


 爺「それは、今度の除目じもくの話です」


 除目というのは官吏の任命式のことで、定例の除目は1月と8月に行われることになっている。また、小規模なものは随時行われている。新規に官吏に登用される人だけでなく、昇進によって新たな職に付く人も対象となるので、すべての官吏が様々な思いで注目している行事なのだ。


 爺「来月には司召つかさめしの除目がありますが、そこで私は四位に昇進することになりました」

 俺「えっ?」


 (爺ってたしか、俺がこっちに転生してから五位に昇進したばかりじゃなかったっけ?)


 爺「しかし、私の位からいきなり四位に上がるのは前例がないということで、竹姫が生理の間に臨時の除目が行われて、正五位上へと昇進しました」


 (なっ、なんだってー)


 爺…、昇進、早すぎ。


 俺「一体…、何をなさったんですか?」

 爺「私ももう70になろうとしていますが、人生はわからないことだらけです」


 爺にも見当がつかないらしく首を横に振っている。


 爺「しかし、拝命した以上は歳のことを言い訳にはしないで、全力でお役目に取り組もうと思っています」


 とはいえ、爺に見当がつかないなら尚更俺には思い当たる節がある。多分、俺のバカみたいに高いステータスのせいだろう。例えば、俺の持っている幸運値が高いせいで、俺の幸運に周りの人が巻き込まれているんだ。あと、もしかしたら天照がついでということで小細工をしたのかもしれない。


 しかし、この調子だと殿上人てんじょうびとになるのも時間の問題だな。


 爺「それから、まだ内々の話ですが、今度の除目では雪のお父さまも昇進されることになりました」

 俺「それはよかったです。きっと雪も喜びますね」

 爺「ええ。従五位下になられるそうです」


 ブーッ


 俺「ゲホゲホ」


 しまった。同じリアクションを2回も取ってしまった…

1月の除目は県召あがためしの除目といって、国司などの地方官の任命が行われました。といっても、平安時代の中頃には国司は京に留まったまま、目代もくだいという代理を派遣するのが一般的になったようですが。この除目は3日にわたって行われ、ものすごく細かく作法が決められているそうです。


8月の除目は司召つかさめしの除目といって、在京官庁の官吏の任命が行われました。8月に行われるようになったのは平安中期からということで、それまでは春に行われていたそうです。


前に1度書きましたが、一位~三位を貴、四位と五位を通貴と呼び、ここまでが貴族です。他にも殿上人や公卿という言い方がありますが、これらもほぼ三位以上の貴族を指す言葉と考えてよいです。

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