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【今は昔】転生!かぐや姫【竹取の翁ありけり】 作者:七師

第2章「かぐや姫」

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漆拾陸.ああ僕はどうして大人になるんだろう

 爺「一つ目は竹姫に初潮が来たことです。竹姫、おめでとう」

 婆「おめでとう」

 俺「ありがとうございます」


 そういえば雪もおめでとうと言っていた。あの時はそれと気づいていなかったから錯乱してしまったけれど、生理が来るってことはそんなにおめでたいことなんだろうか?


 爺「普通は初潮の後、数年は待って心も身体も成長してから裳着もぎをするのですが、竹姫の場合は成長が人よりもずっと早いですから、裳着はすぐにするべきだと思っています」


 (裳着…って何?)


 俺「お爺さま、裳着とは一体何のことでございますか?」

 爺「そうか、竹姫はまだ裳着のことは知りませんでしたか」


 爺は笑顔で俺を見て話していた。俺は同じようににこにこと笑顔を返しながら、魅力の出し過ぎで爺の息の根を止めることのないように慎重に笑顔をコントロールしていた。爺も婆も雪と同じように俺のことを大切に思っていることは知っているが、なにぶん2人とも歳なのだ。


 爺「裳着というのは女性の元服のことです。その日初めて大人っぽい髪型にして、化粧をして、大人の服を着るんです。裳着をすると女性は一人前の大人になったとみなされるんですよ」


 (なるほど。成人式みたいなものか)


 俺「大人になると何ができるようになるんですか?」


 ちょっとバカっぽい質問だが、実はよくわかっていないので聞いてみた。現代ならお酒が飲めるとかタバコが吸えるとか、車の運転は未成年でもできるか…、あとは選挙?、でもどれも平安時代には関係がなさそうだ。


 爺「結婚できるんですよ」


 ブーッ


 俺「ゲホゲホ」


 (け、け、け、け、結婚っ!!!?)


 俺「結婚って、男の人とですか!?」

 婆「当たり前ですよ。どうしたんですか、そんなに驚いて?」

 爺「竹姫を嫁に出すのは私としても寂しい限りなのですが、神様の恩寵を受けたあなたのことです。きっと素晴らしく高貴な方と結婚することができるのでしょう。私は今からその時のことが楽しみです」


 爺は嬉しそうにそう言った。婆もうんうんと爺の言葉に頷いている。


 (冗談ではない)


 俺「いやっ。私は嫌ですっ」

 爺「…」

 婆「…」


 (しまった…)


 あまりの俺の剣幕に爺と婆は呆然と俺の方を見つめていた。

平安時代の貴族の結婚は通い婚と呼ばれて、妻は実家に暮らしていて夫が好きなときに妻のもとを訪れてあんなことやこんなことをするというのが一般的なイメージだと思います。


しかし、どうも詳しく見てみるとそういうイメージに当てはまらない例も少なくないようです。身分の高い女性は親と同居するのではなく独立した屋敷に住んでいることも多いみたいですし、そもそも貴族の中には子どもを自分の手で育てない人も珍しくないようですので、実家にという表現も現代の感性からはだいぶイメージが違うかもしれません。

それから、正室になると北の方という言葉の示す通り正室の屋敷に夫が同居するのは普通に行われていたので、いずれにせよ結婚したら夫婦は同居するというのはある程度は常識としてあったと考えていいのではないかと思います。最も、男性の方は自分の意志で側室の屋敷に住むこともできるので、正室だからといって必ずしも同居しているとは限らないようですが。

その辺のことを勘案して私が理解している平安時代の身分の高い貴族の結婚のイメージは、複数の妻がいる場合、身分が高く経済力のある女性は自分の屋敷を持って夫を住まわせるよう努力し、そうでなければ親と同居して時折訪れる夫を待ち続けるという感じで理解しています。


ところで、平安時代は一夫多妻といいますが、正式な妻は正室のみで、それ以外は愛人という扱いになります。現代との違いは、愛人であっても夫や周囲の意志によって場合によっては正室に近い待遇を受けられるというところだと思います。


ちなみに竹姫の場合は、自分の屋敷を持って、場合によっては正室、ないし、側室でありながら正室に近い待遇を受ける立場を狙える女性と考えています。

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