オバロ外伝 魔導国の冒険者達   作:天塚夜那

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少し時間があるからと色々手をつけてたらまた遅れてしまった囧rz

しかもいつのまにかお気に入り登録が130件も
ありがとうございます、アンドごめんなさいm(__)m


あとちょっとしたお知らせがあるので最後まで見て行ってやって下さい。


静寂

 帝国一等地のとある屋敷にてウィルは外を眺めながら物思いに耽っていた。

 ウィルの視線の先にはこの屋敷の門が有り、更にその先には大通りが見える。

 

「マルクスさん達まだ帰ってこないな」

 

 ウィルは後ろにいるであろう人物に声をかけるが、返ってくるのは「うん」とか「そうだね」といった気の無い返事ばかりだ。

 振り返って見るとソファーに座ったトクルが必死に何かを磨いている。

 時折手の隙間から漏れ出る光は魔力によるもの。

 トクルが磨いているのは任務の間マルクスから借り受けたルーン武器だ。

 トクルが持っているのは所謂ダガーナイフで、その冷たい刀身からは想像出来ないが斬りつけた相手に燃焼ダメージを与える事が出来るという物らしい。

 しかし、トクルの手元から自分の手へと視線を移すとそこにも魔法の輝きを宿した槍が有る。

 回帰の投擲槍(リターン・オブ・ジャベリン)

 柄に三つ、穂先に四つのルーン文字が記されている。

 柄の文字はそれぞれ異なるが、穂先の物は全て同じだ。

 この穂先に彫られた文字の意味は全て『回帰』を意味する物らしい。

 その効果は能力発動時に離れた所にあるこの武器を所有者の元へ戻すというもの。

 と言っても、この能力は文字一つにつき一度、計四回しか使えず、五分おきに一回分ずつ回数が補充される。

 

「御心配には及びません。先程護衛の一人が報告に来ました、なんでも教員になりたいという者を見つけたので、その者の家に寄ってから戻るとの事です」

 

 トクルの代わりに応えたのは頭部が黒い犬のような形をした半獣だった。

 アヌビスの警備兵と言うこの半獣は身を包む物の中では鎖着(チェインシャツ)以外鎧と呼べる物は見えない。しかし、マルクスの配下の中でも最硬のシモベらしい。

 と言っても背負っている巨大な円盾と羽飾りの付いた黄金の槍を携えた姿はまさしく王の守護者という言葉が相応しい威風をたたえているのだが。

 

(こうして見ると、むしろ大人しそうに見えるのは敵意を向けられていないから?それとも魔導国で耐性でもついたかな?)

 

 ウィルが返事をせずに見つめていると警備兵は僅かに首を傾げた。

 顔も僅かに動いているが、それが何も意味するのかは分からない。

 

「何か?」

「あ。いっいえ、何でもないです。でっでも、凄いですねマルクスさんはこんなに早く教員を見つけるなんて、ほんと流石と言うかなんと言うか……」

 

 また警備兵の顔の形が変わる。

 今度はウィルにも何を表すか分かった『喜び』だ。

 

「そうですね。至高の御方に仕える者として、かの方はでき得る限りのことをしていらっしゃる、配下として素晴らしい主人だと思います」

 

 そこまで言って警備兵は気を取り直すように頭を一度振る。

 再びウィルの方に顔を向けた時には元の落ち着きを取り戻していた。

 

「さて、報告が来た時間から考えるにそろそろ……」

 

 警備兵の言葉に応えるように門が開く音に次いで蹄の音が聞こえて来た。

 

「ちょうど帰って来たみたいですね」

「そのようですな」

 

 窓から視線を戻したウィルと警備兵は微笑を交わす。

 

「それでは私はマルクス様のお出迎えに向かいますが、御二方はいかがなさいますか?」

 

「あっご一緒させて貰います」

「左様ですか?」

 

 訝しげな言葉にウィルは未だに動かない友人を見遣る。

 「置いて行く」という言葉が頭を過ぎるが、マルクスにも悪いと思い直し、トクルの真横に立ち、耳元に顔を近付ける。

 ウィルがこの行動を激しく後悔したのは僅か三秒後の出来事だった。

 

 

――――――――――

 

 

「二人共、どうしたのですか?」

 

 マルクスの前には出迎えに来た、警備兵二体と、屋敷を出る前より幾らか―――物理的に―――距離が離れたウィル達が居る。

 

「何でもないですよ」

 

 ウィルは変わりない笑顔で応えるが、トクルはどこか浮かない表情だ。

 それにウィルから少しずつ距離を取ろうとしているのも謎だ。

 恐らくウィルの鼻に僅かに残っている出血した跡が原因だろうが、本人達が問題無いと言うなら取り敢えず放っておくべきだろう。

 

「そうですか……。あっそうそう、紹介がまだでしたね。帝国出身の貴方達なら知っているかもしれませんが。帝国四騎士の一人で今後は貴方達冒険者見習いの実技教員を務めてくださるレイナース・ロックブルズ殿です」

「初めまして。レイナースと言います」

 

 レイナースが頭を下げるとウィル達も慌ててより深く頭を下げる。

 頭を上げた時二人の少年は別々の表情を浮かべていた。

 一方は憧憬の眼差しなのに対し、もう一方はどこか訝しむ雰囲気だった。

 

「凄い。本物の帝国四騎士だ。凄いねウィル、まさか本物に会えるなんて」

「ああ、そうだな」

 

 素直な喜びを見せるトクルが隣に居る分、ウィルの訝しげな様子が目立つ。

 

「信じられないのも無理はないでしょうね。事実、私はこの中で圧倒的に弱い部類でしょうし」

「えっいえ、信じられないなんて、そんなことは……」

 

 ウィルは慌てて否定するが、レイナースは呪いの弊害で相手の表情を読み解くのが得意になったと語っていたし、マルクスとしても同じ様に感じたのでフォローはしない。

 しかし、互いに悪い印象を持たれても困るので適当な所で助け船を出す。

 

「さて、じきに日も沈みます。二人は夕食まで部屋で待っていて下さい。……レイナース殿」

「はっはい!」

 

 先程までより大きな声で返事をし、こちら振り返ったレイナースだが、目線が明らかにマルクスの顔より下に―――恐らく第三ボタン辺りに―――向けられて居る。

 マルクスとしては目を合わせて話し合いたいが、レイナースの屋敷に着いた後からずっとこんな状態なのでそろそろ何か対策を取るべきだろう。

 

「部下に部屋まで案内させますので、付いて行って下さい。荷物はどうします?転移魔法でエ・ランテルに送っておきましょうか」

「あっ馬車の荷台に余裕があればで結構なのですが自分の手で持っていたいです」

「ええ、構いませんよ。元々我々は荷物をそれ程持って来ておりませんでしたし」

 

 マルクスが合図をすると警備兵の一体が進み出て荷物を受け取り、レイナースと共に広間をあとにした。

 一人と一体の背中が遠ざかると、ウィル達が徐ろに口を開いた。

 

「ねぇあの人、多分」

「ああ、多分。そうだろうな」

 

 マルクスは少し意外な思いで二人を見た。

 

「貴方達も気付きましたか。どうも避けられているようなのです、特に嫌われる事をした覚えはないのですがね」

 

 マルクスは顎に手を当て、レイナースが消えた廊下の方を見る。

 自分の好奇心を無視してまでこちらへ引き入れたのだから出来る限り良い関係を築きたい。しかし、理由が分からない状態では対処のしようがない。

 

(やはり、人間とはよく分からないものです。とは言え、このままという訳にもいきませんし、どうしたものか)

 

 いくつか対処法を考えていたマルクスは、ウィル達が何とも言えない表情で目配せしているのに気付かなかった。

 

「今考えても仕方ありませんね。それでは先程言ったように、もう暫く部屋で待っていて下さい。私は魔導国に連絡する事が有りますのでまた後ほど」

 

 

――――――――――

 

 

「依頼内容は以上でございます。皆さま、何かご質問は」

 

「ねぇよ。仕事を受ける時に依頼内容は大体聞いてる」

 

「左様でございますか。それでは成功をお祈り致しております」

 

「はいはい。よっしゃ行くぞお前ら!」

 

「おう!!」

「あいつらの仇を取るぞ!」

「お偉いさんをぶっ飛ばしてやる」

「天誅を下しましょうぞ!」

「早く行こうぜ」

「焦んなって」

「俺達の本気見せてやる!」

「待ちきれねぇなぁ」




まさかのマルクスさんは鈍感キャラ、というのは置いといて

冒頭で書いたお知らせについて
この作品ですが次までを前編として一時この作品の投稿を休止してこの作品とは全く関係ないifルート作品を投稿する事にしました。

この作品の今後としてはifルート作品が終わり次第、幕間を少し挟んで後編へという流れで行くつもりです。
ifルート作品自体はこの作品みたいにそれほど話数を増やすつもりは無いです

ちなみに次の作品で書かなった理由は夜那ちゃんが優柔不断な人だからです

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