オバロ外伝 魔導国の冒険者達   作:天塚夜那

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さて、もうじきオバロ三期の放送が始まります( ✌︎'ω')✌︎
ちなみに夜那ちゃんはお仕事の関係でアニメ見る暇が無いので録画しております
この作品は休憩中に編集しただけなので変なとこが多いかもしれませんが許してやって下さい。

それじゃ、どうぞ……


蜘蛛の巣から垂れた糸

 バハルス帝国帝城の廊下を、レイナース・ロックブルズは今ではかなり慣れた男性用の正装を着て歩く。

 本来、騎士とはいえ女性用の正装をするのが当たり前なのだが、そちらはいざという時動きが制限されてしまう為男性用の物を着用するようにしている。

 それだけでは無い。服の下には鎖着(チェインシャツ)を着ているし、腰には予備武器のロングソードを履いている。どちらも戦闘時に着用するアダマンタイト製の全身鎧(フルプレート)や槍より劣るものの、帝国では極めて強力な魔化も施されている。

 帝国四騎士である自分なら、加えてこれだけの武装をしていれば、帝国で自分を即座に倒せる相手は数える程しかおらず、その者達相手でも逃げる事は出来る。

 

(帝国では……ね)

 

 つい先程、帝城の中庭で見た魔導国の兵士を思い出す。

 その者が着用していた全身鎧は無骨だが膨大な魔力を感じさせ、着ている者も圧倒的な力を感じさせる人型モンスターだった。

 もし、あのモンスターが眼の前に立ちはだかったなら、例え完全武装であってもレイナースの死は確実だろう。

 

(いえ、私は魔導国に利益をもたらそうとしているのだから、魔導国の兵士に殺される事は無い……筈よね)

 

 絶対に無いとは言い切れない。

 レイナースは自他共に認める『最も忠誠心の無い騎士』なのだ、魔導国にとって対した力も無いくせに忠誠心が無い者なんて、邪魔なだけかもしれない。

 それに自分は魔導国に利益をもたらそうと―――帝国の極秘情報を持ち出そうとしてきたが、未だに成功していない。

 いや、それどころか帝国が魔導国の属国になってからは、それはもう不可能になりつつある。

 こんな無能な人間なんて、さっさと処理してしまう方が簡単だと考える可能性もある。

 

(落ち着けなさい、レイナース・ロックブルズ。大丈夫、まだ間に合うわ)

 

 日に日に悲観的になっている。

 なんとかして状況を打開するべきなのだが、手がないというのも事実だ。

 もはや、情報の持ち出しは不可能。武力としても、帝国最強の騎士という称号は魔導国の圧倒的な力の前ではゴミ同然だろう。色を用いたとしても、ナザリック地下大墳墓で見たメイド達と比べて自分ははるかに劣る。

 

(この(のろ)いさえなければ、少しは整ってる顔立ちだと思うのだけれど)

 

 そう思いながらレイナースは膿が滲んできた顔の右半分にハンカチを入れ、強くこする。

 忌わしい(のろ)いを受けた皮膚を、少しでも削り落とそうとするかのように。

 

 

――――――――――

 

 

 マルクスは護衛の猟兵達を後ろに控えさせ、応接間でジルクニフと向かい合って居た。

 

「では、こちらが魔導王陛下からの書状になります。お確認下さい」

 

 そう言って、あらかじめ懐に入れておいた羊皮紙を取り出し、そこそこ立派な机の上に置く。

 ジルクニフは目の前に置かれた書状に僅かに視線を落とした後、意を決した表情で自身の方に引き寄せた。

 無論、その間も爽やかな笑顔を貼り付けたままだが、この程度ならマルクスでも見抜ける。

 

「それでは、拝見させていただきます」

 

 ジルクニフの目線が下まで降りたタイミングで声をかける。

 

「ご覧のように、こちらはあくまで魔導王陛下からの要請であって、魔導国としての公的な物ではありません。ですから、貴国がどのような対応をしようともなんら問題は有りません」

 

 無論、こんなのはただの建前でしかない。

 属国の支配を預かる者として宗主国の王からの要請をはね除ける事は不可能だ。

 勿論、あまりに無茶な要求ならその限りではないだろうが、この程度ならはね除けた時の印象の悪化の方を心配するべきだ。

 

「それで、エル=ニクス殿貴方の、いえ貴国の返答をお聞かせ願えますかな」

 

 貴国の、という言葉で、ジルクニフの視線が微かに震える。

 どの様な回答が適しているか必死に考えているようだが、最早道は一つしかない。

 

「魔導王陛下からの要請、喜んでお受けします。とお伝え下さい」

 

 その言葉でマルクスは包帯の下で破顔する。

 

「それは素晴らしい。陛下もお喜びになられるでしょう。……それで、いつまでに選考出来ますか?」

「そうですね、帝国は広い。帝国軍内の魔法詠唱者(マジック・キャスター)などの専門職の者達だけでも選考に二ヶ月は頂きたいと思います」

 

 ジルクニフの目にこちらの様子を伺うような光が灯る。

 どの程度なら許されるか調べているようだ。

 

「全ての専門職を精査する必要は有りません。後ほどより詳細な要請書をお渡ししますが、現状我々が必要としているのは神官などの信仰系魔法詠唱者です。これでどの程度になりますか?」

「でしたら、およそ一ヶ月と言ったところでしょう……」

 

 マルクスはジルクニフの話しを聞き流しながら、目の前に置かれたカップを持ち上げ、中の紅茶を(すす)る。

 

(やはりナザリックの物と比べて味も香りもイマイチですね。まぁ、私はコーヒー党ですが……さて、そろそろ不毛な会話は終わりとしましょう)

 

 わざと音が鳴るようにカップを皿に下ろすと、ジルクニフは直ぐに口を閉じた。

 

「それ程の時間のかかることではないでしょう。一週間で終わらせて下さい」

「しかし、私にもやらねばならない仕事がある訳で」

 

 マルクスが集めた情報によると、もはやジルクニフの仕事の中に重要度の高い物は殆ど無いらしい。

 

「そうですか、そうですか。しかし、私から言うべき言葉は一つです」

 

 そこでマルクスの雰囲気が様変わりした。

 

「やれ」

 

 そこに先程までの温和な雰囲気は無く、自らの圧倒的な力を理解した強者が居た。

 ジルクニフの後ろにいる近衛兵達の鎧が微かな音を立てる。

 

「畏まりました」

 

 ジルクニフは自然と頭を下げた。

 相手が圧倒的な力を持つからだけでは無い。

 まるで、死刑囚に判決を告げる裁判官の様な、そんな冷徹さを感じて。

 ジルクニフが頭を上げると、マルクスの様子は先程の冷徹な空気が嘘であるかの様な優しげなものになっていた。

 

「それは良かった。では、お願い致します」

 

 そう言ってマルクスは頭を下げるが、それはどこか形だけの礼であった。

 

「それと早速で申し訳ないのですが……」

 

 正直なところ、最早話す事などないのだが損にはならないので続ける。

 

「帝国四騎士の中にも信仰系の魔法詠唱者が居るとか?是非会わせて頂きたいのですが」

 

 そう言うとジルクニフはどこか納得した雰囲気になって答えた。

 

「そういう事でしたら別室に控えさせておりますので、直ぐに呼び出しましょう」

 

 ジルクニフは強張っていた笑顔を元の状態に戻しながらハンドベルを鳴らした。

 

 

――――――――――

 

 

 レイナース、バジウット、ニンブルは呼び出しに来たメイドに連れられて応接間に入った。

 そこには数人の近衛を従えたジルクニフが鷲頭で翼の生えた人型モンスターを従えた奇怪な服の人物と向かい合っていた。

 部屋に入ったと同時に全員の視線が向けられる。

 一方からの視線は大したことないが、もう一方からの視線には生物としての生存本能を刺激される様な恐怖を感じた。

 この人型モンスター達はまず間違いなく、かつてレイナースがナザリックで見た死の騎士(デスナイト)より強いだろう。

 しかし、それ以上にソファーに腰を下ろした奇怪な包帯だらけの人物により強い恐怖を感じた。

 友好的な雰囲気なのが返って恐ろしい。まるで、飛びかかる直前に獲物を油断させようとしている猛獣の様だ。

 

「貴方達がかの有名な帝国四騎士の方々ですか。お会いできて光栄です」

 

 声から判断すると男の様だ。

 包帯の下から話しているのにくぐもって聞こえないのは何か魔法の働きを受けているのか。

 

「しかし、見たところ三人しかいらっしゃらないようですが。4人目の方は体調不良か何かで?」

 

 不思議そうな様子だが本当に知らないのか、知ってて言っているのか。後者だとすればかなり悪質だ。

 バジウットが苦笑いで答える。

 

「いや、昔そちらの使者殿が帝城(ここ)に来た時に使者殿が起こした地震に巻き込まれちまいまして」

「おやっそうでしたか。これは申し訳ない」

 

 男は頭を下げたが包帯で表情が見えない。

 

「おっと自己紹介を忘れていましたね。私は……」

 

 互いに自己紹介が終わると、再びマルクスから口を開いた。

 

「さて、皆さんにお聞きしたいのですが、皆さんの中に信仰系魔法詠唱者の方はいらっしゃいますか?」

 

 その言葉を聞いた瞬間、レイナースは凄まじい速度で手を挙げた。

 他には手は挙がらなかった。

 

「貴方はロックブルズ殿でしたね」

「レイナースとお呼びください」

「そうですか。ではレイナース殿、貴方にお聞きします」

 

 包帯の下の視線がレイナース一人に向けられる。

 

「我々は今、冒険者の教育を行える者を集めております。貴方は魔導国に来て我々に力を貸して下さいますか?」

 

 その瞬間レイナースの頭の中をいくつかの事が駆け巡った。

 いざとなれば捨てるつもりだったとは言え自分が生まれ育った祖国への情。

 こんな自分を受け入れてくれた者達への感謝。

 しかし、迷いは一瞬だった。

 

「はい。私に出来る限りの事をさせていただきたいと思います」

 

 マルクスは僅かに驚いた様だが、すぐに好意的な雰囲気に変わった。

 

「素晴らしい。では、早速準備を始めましょう。貴方の荷物などをまとめなければいけませんしね」

「しかし、まだ会談の途中では?」

「いえ、もうほとんど話し終えましたので問題有りません」

 

 ほとんどという事は完全ではないのではと思ったが本人が大丈夫だと言っているしジルクニフも異存は無さそうだ。

 

「それでは失礼致しますわ」

 

 レイナースは泣き笑いの様な表情を見られないよう急いで部屋を飛び出した。

 

 

――――――――――

 

 

 レイナースが退出し、足音と鎖着(チェインシャツ)が擦れる音が遠ざかって行く。

 

「さて、私もそろそろお暇するとしましょう。ではジルクニフ殿また何かの折にお会いする事を願っております」

「こちらこそ、また会える事を願っています」

 

 マルクスが片手を差し出すとジルクニフも察したらしく、二人は笑顔で―――マルクスの表情は見えないが―――握手をする。

 手を離したマルクスが猟兵と共に部屋を出ようとした時突然、何かを思い出した様に振り返った。

 

「ああそうそう。一つ言い忘れたことがありました」

 

 その言葉にジルクニフは僅かに身構え、騎士達は訝しげな表情になった。

 

「近々、魔導国において魔導国建国記念日を祝して記念祭が行われます。その時周辺国の方々を招いた晩餐会を行う予定ですので、ジルクニフ殿には是非とも参加して頂きたいと、思っております」

「なんだそんな……是非とも参加させていただくよ」

 

 小さく呟いた後、笑顔の言葉が返って来た。

 

「それは良かった。晩餐会では様々な国の方が来られますがいつも通り、そういつも通りにご友人共々楽しんで頂きたい」

 

 そう言い残すと表情が大きく崩れたジルクニフに目もくれず、マルクスは応接間を後にした。




レイナースは推しキャラの1人なので無理矢理登場させました
というかこの為に主人公のクラスを呪い関係にしました

あと最近文書毎の改行をどの程度空けようか悩みまくっとります
どんなのが見やすい、読みやすい等有りましたら教えて下さい(´ω`)

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