オバロ外伝 魔導国の冒険者達   作:天塚夜那

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ようやくの二作目投稿です
一作目への感想、お気に入り登録ありがとうございます!
夜那は画面見て声上げました(リアル)

本当はこの二作目4月中に書き上げる予定でした
それもこれも宙ぶらりんだった12巻が悪い!
(ネイアちゃん良いっすねぇ(´∀`*))
投稿を忘れかけたのもあの厚さの13巻が悪い!
(あの倍ぐらいでも良いですね)
と、言い訳(and賞賛)を言いつつ
なんとか書き上げた二作目です
どうぞ……


追記:忘れてたのはリアルです。ごめんなさいm(__)m


指令

 入室したマルクスは部屋の中央へ進み、そこに置かれた立派な黒檀の机の少し手前で止まる。

 マルクスの立つ反対側に座るのは彼らの主であるアインズ・ウール・ゴウン、その人である。

 

「御前、失礼致します」

 

 そう言いながら軍帽を取り、臣下の礼をしようとする。

 しかし、主人が片手を上げてそれを制した。

 

「挨拶は無用だ、本題に入ろう」

「はっ」

 

 マルクスはそう言って立ち上がり、軍帽は手に持ったまま不動の姿勢をとる。

 

「まず、今日お前を呼んだのは、お前に新しい仕事を任せようと思ったからだ」

 

 主人のその言葉を聞いたマルクスは、歓喜のあまり飛び上がりそうになった。

 元々彼の役職はナザリック内の平時の財政管理が主だ。と言っても実際はマジックアイテムから生成した物資や魔導国建国後からは税として入手した物資の一部をエクスチェンジボックスに入れ、消耗品―――アウラの魔獣の餌代など―――に変え、必要箇所に配布するのみだ。

 無論、至高の存在に与えられた仕事に不満など微塵も無く、建国後は都市で働く仲間の手助けなど、仕事が無い訳ではなかったが、多くの同僚(NPC)達が主人からの勅命を受け、様々な場所で働いている中なんの命令も与えられないと言うのは創造された者として不安に駆られる日々だった。

 

「はっ、光栄であります。アインズ様からの御勅命、全身全霊で取り組ませて頂きます」

 

 マルクスは熱意のこもった返事をした。

 

「うむ、それで新しい仕事と言うのは私が作っている国家が運営する冒険者組合の管理だ」

 

 そう言って主人は書類の束を取り出し、側に控えていたリュミエールに渡した。

 リュミエールから書類を受け取るとマルクスは素早く目を通していく。

 ある程度目を通した所でマルクスは聞いていなかった事を質問する。

 

「アインズ様、1つよろしいでしょか?」

 

 主人は促すように顎をしゃくる。

 

「管理というのは組合の財政的なものでしょうか? それとも冒険者の指導的なものでしょうか?」

 

 財政方面なら多少は可能だが、指導となると特化型魔法詠唱者(マジックキャスター)であるマルクスには少し不安がある。

 

「ふむ、お前に任せるのは組合に関わるほぼ全てだ。正確には組合の上位機関である審査機関の長として冒険者組合、魔術師組合、鍛冶屋組合など全てを統括してもらう。その関係でお前の上司は居ない。私の直轄の部下になる訳だな」

 

 最後の言葉を聞いた瞬間、マルクスの体がびくりと動き、次に包帯の上からでも分かるくらい表情が崩れた。

 

 彼はレベル自体は90以上と守護者並だが、役職的には守護者やプレイアデスなどの主人の側に使えたりする役職からは程遠く、「直轄」という言葉に喜びを禁じ得なかった。

 

「はっ。アインズ様の指令、拝命致します」

 

 そう言って書類を片手に持ち、空いた手で敬礼した。

 

「……ぉう、それでマルクス、私に聞いておきたいことなどは有るか?」

 

 マルクスは少し考えてから指を一本立てて口を開いた。

 

「まず1つございます。書類によると2年程前から組合への加入希望者が幾人か居るようですが、区画整理後に建築した寮はまだ使っていないと伺っております。その希望者達は今、何処へ?」

「彼らは今、カルネ村に滞在させて、ゴブリン達に訓練をつけさせている」

 

 カルネ村とは彼の記憶が確かなら転移して間もない頃に慈悲深い主人が救った人間の村だ。

 ゴブリンというのは主人がその村の村娘に与えたアイテムから召喚されたもので、その娘は今では村長をしているらしい。

 この話を教えてくれたルプスレギナ曰く、なかなか面白い所だと言う。

 

「なるほど、それでは次に組合の運営にあたって必要になる寮や訓練場、訓練用ダンジョンなどの建設は完了しているようですが、物資の搬入等は完了しているのでしょうか?」

「ダンジョンへのモンスターの配置は完了しているが、それ以外はまだだ」

 

 マルクスは再び考えると今度は頷いた。

 

「なるほど、了解しました。では、早速カルネ村に誰かを送って呼び戻そうと思います。その為に死の騎兵(デス・キャバリエ)を一体とソウルイーターの一頭だて馬車を二台ほどお借りしたく思います」

「ゲートを使った方が早いのではないか?」

 

 確かに、その方が早いのは確かだが、今回は時間をかけた方が良いだろう。

 

「いえ、その必要は有りません。呼び戻す間に物資の搬入を済ませようと思います。そこで二つ目なのですがよろしいでしょうか?」

「構わん、言え」

「はい、組合で必要になる様々な消耗品をこの都市の倉庫から頂きたく思います」

 

 マルクスが言うと、主人は直ぐ様頷いた。

 

「問題無い、好きに使え」

 

 マルクスは頭を下げ、感謝を述べた。

 

「ありがとうございます。後ほど必要になる物資のリストをお持ちします」

「よい。それよりリストは私ではなく物資担当のエルダーリッチに渡しておけ」

「了解致しました」

 

 そう言って、マルクスは敬礼した。

 

「それで、他にまだ有るか?」

「いえ、これで充分です。ありがとうございました。それでは御前、失礼致します」

 

 マルクスは今度は最敬礼し、頭を上げると軍帽を被り、書類を脇に挟んでリュミエールが開けてくれた扉から退出した。

 

 

――――――――――

 

 

 マルクスが退出すると、アインズはリュミエールに気付かれないようにそっと息を吐き出した。

 マルクスはナザリック最高の頭脳であるデミウルゴスなどより劣るものの知恵者として生み出されており、一般人であるアインズとしては時折、不安になってしまうのだ。

 突然笑い出した時など、何か不手際を笑われているのだと本気で思った。

 もっともこの仕事を任せるにあたり、設定を細かく見直しているのでそんな理由で笑ったのではないと分かるのだが。

 しかし、喜んでいたと知ると今度は罪悪感に襲われる。

 マルクスに任せた仕事は元はアインズが一人で進めていた事だ。

 だが、人が集まり設備が完成してくると、だんだん不安になってきた。

 そこで頼れる配下に丸投げする形になった訳だ。

 

(仕方ないんだ。やる事が多いんだ。それに……規模が大きくなるとミスした時の傷も大きくなってしまう)

 

 多少の失敗は間違った認識を変えるには良いかもしれない。

 しかし、あまりにも大きな失敗は配下を失望させる。

 だが、今回は相手を選ぶ必要が有った。

 そもそも、階層守護者達は皆重要な案件を抱えているし、かと言って平然と人間を下等生物(虫ケラ)呼ばわりする者でもダメだ。

 そこでNPC達の設定を見ている中でマルクスを見つけた。

 マルクスはナザリックでは珍しい穏健派に属しており、無闇に人間を下に見ない。

 さらに「少佐」という階級についているらしい。

 軍隊の知識が無いアインズにはそれがどのくらいの地位に当たるのかはわからないが、充分な指揮能力を持つのは事実だ。

 そして、マルクスと会った後に息――――ため息を漏らしてしまうのはもう一つ理由がある。

 

(なんで、あんなかっこいいんだ?)

 

 そしてアインズは自分の創った黒歴史(パンドラズ・アクター)を思い出す。

 

(やはり、大袈裟な身振りが無いからか? 設定に謙虚な性格とかも有ったがそれが関係しているのか?)

 

 アインズが思考の海に囚われようとしているとノックが鳴った。

 リュミエールが来訪者を確認する。

 

「アインズ様、セバス様がいらっしゃいました」

 

 アインズは考え事をとりあえず後日の課題にして、いつもの王に相応しい返事をする。

 

 

――――――――――

 

 

 マルクスは冒険者組合の廊下を組合員の案内で歩く。

 もっとも、その後ろには彼のシモベである煌びやかな軽装鎧に身を包み、無骨な弓を装備した鷲頭の人のようなモンスターが四体、宙に浮かびながら追従している。

 ホルスの猟兵というこのモンスターはレベル70後半で彼のシモベの中では最も探知系に優れたモンスターである。

 実際は他に別のシモベを二体引き連れているが、そちらは隠密している為姿は見えない。

 主人の部屋を訪れた翌日マルクスは冒険者組合長であるプルトン・アインザックに会いに行った。

 目的は冒険者に課す義務やどの様な利益、権利を認めるかについてだ。

 

(正直、わざわざ会いに行く意味は無かったですね)

 

 直接会えば隠した本音を暴けるかと思い、意見のすり合わせという名目で何度も会って話しをした。

 しかし、結果は主人から受け取った書類に書かれていた事と寸分違わない言葉ばかりだった。

 

(話した限り嘘を言っている感じでも無かったですし、デミウルゴス様などであれば何か感じ取る物が有るのでしょうか?)

 

 マルクスはナザリックの最高の頭脳として創られた守護者の姿を思い浮かべる。

 

(あるいは、嘘がつけなくなる程アインズ様が巧みだったという可能性も……いえ、それしかありませんね。流石はアインズ様!)

 

 マルクスがこの場に居ない主人への尊敬を新たにしているといつのまにか組合の出入り口の目の前まで来ていた。

 案内をした組合員に労をねぎらうと共に別れの挨拶をして組合をあとにする。

普通ならこんな事をする必要は全く無いが、今は主人の偉大さを改めて感じた為に気分が良い。

 

「さて、一旦あの家に戻って今後の行動を考えますか」

 

 本来、マルクスはナザリックの大図書館を待機場所として与えられている為、家などは必要無い。

 家というのはこちらでの仕事を与えられてから、使うようにと言われた家屋で元はこの都市の衛士長の家だったらしい。

 管理者として不測の事態に対応する為には近場に待機場所が必要だったからこその配慮だろう。

 

(しかし、訓練内容、待遇等は実質手探りでの運営になる訳ですから先駆けとなる者が必要ですね。前例(モルモット)無しでは危険が多いですし)

 

 家の有る城壁方面に歩を進めていると、向こうから二頭立ての荷馬車が3台やって来た。

 この都市では珍しい普通の馬が引いていて、後ろの馬車にはデスナイトが一体ずつ沢山の木箱と一緒に荷台に乗っている。

 先頭の馬車に乗っていた御者の男がマルクスを見つけて手を振りながら、馬車の速度を落としていった。

 以前はスラムに一人で住んでいて、マルクスが新しい職を世話した人物だ。

 

「こんちは、旦那」

 

 あまりに馴れ馴れしい話し方だが、下手に直そうとすると意味不明な口調になるので諦めた。

 それに人格的には何ら問題無いし、仕事も頑張っているらしいので大目に見ている。

 

「ええ、こんにちは。今回は帝国での仕事だったんですか?」

「そうです、そうです。流石旦那、よく分かりやしたね」

「積んである作物の中に帝国でよく作られてる作物が見えましたからね」

「ほーなるほど」

 

 そう言いながら、男は後ろの荷台を振り返る。

 すると突然、男は「あっ」と声を上げて、再びマルクスの方に顔を向けた。

 

「旦那、旦那。今城門のとこにこの国に住みたいって奴が来てやすぜ」

「ほう、それは素晴らしい。どんな方ですか?」

 

 正直興味はないが冒険者になろうという者なら会っておきたい。

 

「なんでも冒険者に成りてぇって奴らでしたぜ」

 

 その言葉を聞いた瞬間、マルクスは一瞬動きを止めると、次に包帯の下で微笑を浮かべた。

 

(素晴らしいタイミングだ。)

 

「そうですか。それは好都合、一度会いに行くとしましょう」

「そうですかい? んじゃ俺は行きやすね」

「ええ。では、また今度お会いしましょう」

 

 マルクスは城壁へ歩を進める。

 カナリアへの期待を抱きながら。




アドバイスを頂いたので二作目は一作目と比べてかなり字数を増やしました。
いかがでしたか?
まだ少ない、今度は多すぎ等有りましたらコメントにてお願いします。
そして、アインズ様視点を取り入れてみました。
正直超難しい。
丸山先生の頭はどうなってるんだと思いました。(いい意味でね)
まだまだ日本語が不自然なとかも有りますので批判、感想等々お待ちしてます!

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