東京五輪・パラリンピック組織委員会は18日、新型コロナウイルスの感染拡大で大会中止に追い込まれた場合、観戦チケットの代金が購入・利用規約上、返金されないとの見方が広がっている事態について「事実と異なる」と打ち消した。スポーツや音楽イベント等は疫病が理由であっても原則払い戻しされている。高額な券種が少なくない五輪チケットはどうなるのか。
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せっかく当選したプラチナ券が紙切れになるかもしれない。そんな不安が国民から噴き出している。新型コロナの影響で東京五輪が中止になったら、払い戻し不可なのか。観戦チケット購入に関する規約の第46条に、不可抗力で組織委が免責される事項があり、解釈が当てはまりそうな「公衆衛生に関わる緊急事態」と記されているためだ。これを基に「中止=返金なし」という懸念が、既に購入したファンの間で広がった。
この疑念は同日夜、組織委が振り払った。「規約には『払い戻しは不可』との記載はなく事実と異なる」と公式に否定。払い戻しを約束したわけではないが、仮に大会が中止となった場合の“最悪の事態”は現時点で消した。共同通信の世論調査で約7割が延期か中止を望む中、五輪への不安の膨らみを物語っていた。
無理もない。抽選販売が終わった入場券は約508万枚。高額なものは開会式の30万円を筆頭に閉会式の22万円、陸上男子100メートル決勝日の13万円と続き、総額100万円超を支払った人もいる。これが、既に払い戻し手続きが進むプロ野球やサッカー日本代表、音楽ライブ等と同様なら問題ない。昨秋のラグビーW杯では不可抗力の台風19号による中止でも払い戻しがあった。しかし、今年3月1日に一般不参加で行われた東京マラソンは参加費の返金なしで賛否。割れる対応が五輪に飛び火した形だ。
予算の第4版で900億円の入場料収入を見込む組織委は、払い戻しを排除しなかった一方、従来の姿勢を強調した。17日の国際オリンピック委員会(IOC)臨時理事会後、予定通りの開催が再確認されたことを受け「中止は全く検討していない。中止を前提として議論することは適切ではない」とコメント。武藤事務総長も「仮定の話には答えない。(延期や中止が)現実に起こった時、規約を踏まえて適切な判断をすることになる」と言った。
つまり“その時”が来るまで払い戻しの有無は分からない。4月以降の春季販売や公式リセールも大枠は予定通り。チケット騒動は夏に再燃するのか。開催可否とセットとなって左右されそうだ。【木下淳】