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ギャラリーエークワッドのアイディアコンペに入賞しました

 先日、竹中工務店が主催するギャラリーエークワッドのアイディアコンペ「32×32×32 ポッチのCube -ブロックで作る空間-」に応募しました。これは、レゴブロックを使った作品を集めるコンペでした。応募のほとんどは、アート作品だろうと思いましたが、パズル作家の私としては、純粋なパズルで挑戦してみようと考えました。形や色の構成より、立体迷路としての機能性を重視したわけです。単純に、迷路として面白いか。3階建のブロックの迷路の中を、木製の玉を転がせてゴールを目指すというものにしました。便宜上、上から下に進んで、下から上には戻れません。2階、1階は手では届かないので、箸を使って玉を転がします。迷路としては簡単かも知れませんが、2階、1階で、思うように勧めない様は、結構面白いです。多数の応募があった中、優勝は無理だろうとは思っていましたが、佳作とはいえ、入賞できたことは大変光栄に思います。
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 ギャラリーエークワッドでは、2016年1月28日まで、コンペの入賞作品の展示をしております。お近くのお越しの際には、ぜひ立ち寄ってみてください。
アクセス 東京都江東区新砂1-1-1 竹中工務店東京本店1階
東京メトロ東西線 東陽町 3番出口 徒歩3分
詳しくは ギャラリーエークワッドのHPで 
http://www.a-quad.jp/index.html

中高年の脳トレパズル 講座ご案内

画像 中高年のための脳トレパズル講座を開くことになりました。日頃カタくなった頭をヤワラカくするには、パズルが最適です。頭の柔軟体操で、脳も心も健康になりましょう。場所は、読売・日本テレビ文化センターのよみうりカルチャー大森(JR大森駅の駅ビル内、アトレ大森6階)です。10月から3か月(全6回)、第1・第3火曜日の午後1時から2時半です。9月29日(火)に、事前体験会(要予約)があります。まず、体験会でパズルの世界の一部を知ってください。興味を持たれた方は、ぜひ本講座に参加してみてください。パズルの解き方、作り方を分かりやすくお伝えできればと思っております。パズルの楽しさを味わっていただき、オリジナルパズルの制作も行います。なお、講座案内のチラシは、8月31日(月)付の読売新聞、品川区、大田区、川崎市などの地区に折り込まれます。詳しい内容は、こちらをご覧ください。ちなみに、チラシに掲載される漢字クロスワードを解いて、センター窓口に持って行くと、粗品がもらえるそうです。
http://www.ync.ne.jp/omori/kouza/201510-08150011.htm

ドラマの中のクロスワード・パズル

 テレビ東京で放送中の「エレメンタリー ホームズ&ワトソン in NY」を毎回欠かさず見ています。シャーロック・ホームズを主人公にしたテレビドラマで、薬物依存症のホームズが、それを克服するためのワーカーであるワトソン元医師と、難事件を解決していくというストーリーです。舞台をニューヨークにしたところやワトソンを女性にしたところなど、斬新なアイディアが満載で、特に見た目にはかっこいいとはいえない、嫌味なほどの洞察力を発揮するホームズのキャラクターが秀逸です。先日放送された#08「長すぎた導火線」の回では、クロスワード・パズルが犯人逮捕の重要な役割を担っていました。「ヒントは痛みの敵、答えはノボカイン(局所麻酔剤)」と、答えが分からなければ捕まらなかったかもしれないし、その答えが薬物依存症のホームズを皮肉っているのも面白いところです。以前、ご紹介したテレビドラマ「NUMB3RS」でも、クロスワード・パズルは登場しますが、重要なものとしてではありません。

画像 クロスワード・パズルが登場する映画を2つほど、紹介しておきましょう。まずは日本映画の「CROSS」、大森美香監督の初期の作品です。近未来の渋谷を舞台に、引きこもりで読書依存症の青年が、クロスワード・パズルによって民衆を管理しようとする国家機関を相手に戦いを挑むというストーリー。知性を持つ人間だけの世界に変えようという物差しに、クロスワード・パズルが使われるわけですが、まあこれはクイズでもいいわけで、世界観は少し疑問ですが…。

画像 もう一つはアメリカ映画の「PAYCHECK」、アクション映画の巨匠ジョン・ウー監督の作品。主演はベン・アフレック。消された記憶を取り戻すために奔走するコンピューター・エンジニアの活躍を描いています。クロスワード・パズルがどんな役割を持つかは、まだ見ていない人のために伏せておきましょう。時間と記憶が交差するので、分かりにくいところもありますが、「メメント」や「Re:プレイ」ほどではありません。さすがジョン・ウー監督だけに、手汗握るアクション映画に仕上がっています。ご興味のある方は、ぜひ鑑賞してみてください。

「NUMB3RS 天才数学者の事件ファイル」その1

画像 今回ご紹介するのは、お気に入りのDVD、アメリカTVシリーズ「NUMB3RS 天才数学者の事件ファイル」です。
 FBI捜査官の兄、ドン・エプスと天才数学者の弟、チャールズ・エプスのコンビが、数学を使って事件を解決していくという話です。アルゴリズムや関数、確率論など、数学の知識がふんだんに登場するもので、数学好きには堪らない作品になっています。数学だけでなく、ゲームやパズルも多数登場します。特に、興味が引けるように、いろいろな例え話を上げて、数学が苦手な人でも分かるように工夫されています。制作総指揮が、あのリドリー・スコット、トニー・スコットの兄弟だけあって、ストーリーもアクションも実に面白く、はまること間違いありません。

 そこで、気になったシーンを1つ上げてみます。第3シリーズ、第24話「選ばれた二人」で、チャーリーが犯人と対峙して、問題を提示されます。「チェスの発明者が、王に献上した際、褒美として、次のものを願い出る。チェスボードの最初のマスに小麦を1粒、次のマスに2粒、その次のマスに4粒と、倍々に増やしていくと、全部でいくつになるか」。チャーリーは、これは有名な「小麦とチェスの問題」といい、答えは2の64乗引く1と即答して、その計算を出します。答えは、1844京6744兆737億955万1615。

 これと似た問題で、日本では曽呂利新左衛門の逸話が残っています。豊臣秀吉の側近として仕えた曽呂利新左衛門は、知恵者として有名でした。あるとき、秀吉に褒美は何がいいかと尋ねられ、1日目に米1粒、2日目に米2粒、3日目に米4粒、以後倍々に増やしていって、100日分頂戴したいと答えました。欲がないなあと簡単に引き受けた秀吉でしたが、それが膨大な数になることに気付いて、他のものに変えさせたという話です。この場合、2の100乗引く1となり、とても計算できるものではありません。この逸話には諸説あって、畳1畳目に1粒、2畳目に2粒、3畳目に4粒、畳100畳分というものと、碁盤のマス目になぞられたものがあります。碁盤の目は19×19ですが、マス目は18×18(=321)で、求める答えは、2の321乗引く1となります。

画像 この計算式で思い出すのが、ハノイの塔です。ハノイの塔は、フランスの数学者、エドゥアール・リュカの創作です。「インドのガンジス河の畔のベナレスの寺院に、3本の支柱と64枚の円盤で作られた塔がある。僧侶たちは、ルール(円盤はすべて違う大きさ、小さい円盤の上に大きい円盤を重ねてはいけない)に従って、円盤を移動させる。円盤の移動が終わるとき、世界は崩壊するという」。

 これの答えも、2の64乗引く1になります。ちなみに、1手1秒とすると、64枚の円盤を移動させるには、約5845億年かかるそうです。私がパズル・デザインを担当したNHKアニメ「ファイ・ブレイン 神のパズル」の中でも、ハノイの塔が登場します。第1シリーズ#22で、ジンがハノイの塔をやっているシーンがあります。ジンは「もうすぐ終わる、後、1844京6744兆737億948万6079手で終わる」といっています。これは64枚の内の16枚の移動が終わり、17枚目を中央の支柱に移動させたところです。

画像 これは九連環、またはチャイニーズ・リングと呼ばれる、中国生まれの知恵の輪として有名です。諸葛孔明も遊んだとかいわれますが、真偽のほどは分かりません。ハノイの塔同様に、環が増えると、累乗的に手数が増えるというものです。九連環の9連の場合、最少手数は341手です。解き方もよく似ていて、同じことの繰り返しを1つずつ増やしていくような感じ、とでもいえばいいでしょうか。どちらのパズルも、数が多いと、迷ったとき、次の手が進む手なのか戻る手なのか分からなくなってしまうという共通点があります。

 「NUMB3RS 天才数学者の事件ファイル」については、また書きたいと思います。

マスターマインド その1

画像 推理ゲームの古典、マスターマインド(Master Mind)をご紹介します。このゲームは、1973年に、イギリスのインヴィクタ社から発売されました。翌年1月、ブライトン・インターナショナル・トイ・フェアで、年間ゲーム賞を受賞し、世界的なブームに発展しました。アメリカでは、1975年に発売され、1年間に100万個売り上げたといわれています。

 マスターマインドは「頭のいい人」という意味で、当てものゲームとして知られていた「Hit & Blow」を、色を使うことで、より簡潔に、スマートにしたゲームといえます。日本では、カワダや野村トーイなどから発売されました。写真は、カワダ版の初期のタイプです。
 
画像 セットには、ゲームボード、カラーピン(赤、青、黄、緑、橙、桃)6種、判定ピン(白、黒)2種が入っています。これは、このタイプのもので、後のタイプでは、カラーピンや判定ピンの種類が異なるものもあります。2人のプレーヤーは、出題者(Codemaker)と解答者(Codebreaker)に分かれます。出題者は、解答者に見えないように、カラーピンをセットします。ゲームボードの一方の端にシールドのあるスペースがあり、4つの穴に自分が選んだ4色のピンを配置します。

 解答者は、第一手として、好きな色のカラーピン4つ、自分の側の近いスペースに並べます。まったくの偶然で、第一手で当たることがないわけではありません。組み合わせは360通りありますから、確率では0.28%ということになります。解答者の配置に対して、出題者は判定を行います。位置と色が当たっていれば、黒ピンを立てます。位置は違うが色が当たっていれば白ピンを立てます。この判定ピンの情報から、問題の配置を推理するわけです。

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 試しに例題を出してみましょう。第一手、青、橙、赤、黄のうち、2色は使われていて、2色は使われていない。しかも位置も異なっていることを示しています。第二手、桃、赤、緑、青のうち、1色は位置が合っていることを示し、2色は位置は異なるが使われていることを示しています。第三手、緑、青、橙、桃のうち、1色は位置が合っていることを示し、1色は位置は異なるが使われていることを示しています。

 初心者は、6種類、4色のルールで行われますが、スタンダードでは、色の重複が認められています。こうなると、少し複雑になります。組み合わせも、1296通りになります。上級ルールでは、ブランクを認めています。つまり無色という1色が加わって7色になったと考えるといいでしょう。この組み合わせは、2251通りとなります。

 ローカルルールでは、判定ピンに金色を加えるというものがあります。金の判定ピンは、黒ピンなのか、白ピンなのか、はたまたフェイクなのか分からないというものです。ただし、1回のゲームでは、金は3本まで。もうこうなると、どう解いていいか分からなくなりそうですが、マニアにはとんだ猛者がいたようです。


公開講座のご案内

画像 今度、公開講座を開催することになりました。親子で参加できるワークショップです。子どもたちの自由研究の題材になればというのが目的です。場所は、読売・日本テレビ文化センターのよみうりカルチャー大森(JR大森駅の駅ビル内、アトレ大森6階)。日時は、8月9日(日)午前10時半から12時までの1時間半。タイトルは「図形が好きになるパズル タングラムを作って遊ぼう」。まず、タングラムを自分で作って、こちらで用意した問題集を解きます。時折、算数の勉強に役立つ、面積の問題などの解説も混ぜます。図形になれたところで、オリジナルのタングラム作りに挑戦します。形はタングラムにこだわらず、もっと自由にシルエットパズルを作ります。たとえば、犬から猫へ、車からロケットへというように、あるシルエットを決め、それをいくつかに切って、違ったシルエットにするというわけです。

 私がNHKアニメ「ファイ・ブレイン 神のパズル」に関わっていたとき、姉妹番組で、「パズルの王子様」という番組がありました。毎回、王子たちがパズルを解いて、最後に勝ち抜いた一人を決めるというものです。決勝戦では、ドーナツをモチーフにしたはめ込みパズルと、オリジナルのタングラムを出題しました。図のようなハートの模型があり、いくつかのパーツに分かれています。これを組み替えてΦの形にするというものです。切り方を、かなり工夫して、特別難しい問題にしたことを覚えています。やってしまいそうな心理を利用していて、手前味噌ではありますが、傑作の1つだと思っています。収録のときも、結局ヒントを出して(オンエアではヒントを出したところは映していない)、うまく答えを導き出させました。こうした個性あふれる、オリジナルのシルエットパズルを子どもたちに作ってもらおうと思っています。
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 パズルを通して、遊びながら図形に触れ、より身近に算数に親しんでもらいたいと願っています。小学生のお子さんのいる方、夏休みの思い出作りにも、ぜひ参加してみてはいかがでしょうか。 
 講座の詳しい内容については、こちらをご覧ください。
http://www.ync.ne.jp/omori/kouza/201507-18160056.htm

影響を受けた本

 私がパズル作家になる土台みたいなものがあるとしたら、きっと学生時代に読んでいた、ホットドッグプレス(講談社)の中の田中潤司氏のコーナー「迷宮への招待」ではなかったかと思います。ボードゲームやパズルなどをいち早く紹介していて、月2回の発売日が待ち遠しかったのを覚えています。当時、アバロンヒルのシミュレーションゲームが流行りだしていて、よく特集していました。マスターマインドについても、何回か登場し、日本未発売だったマスターマインド44(ファミリーマスターマインド)を、どうしても遊びたくて、小さなマスターマインド4個で自作したものです。なお、マスターマインドについては、後日詳しく紹介したいと思います。

画像 この「室内ゲームの本」も当時、影響を受けた本の1つです。カラーページが多く、国内で売られていたボードゲーム、パズルのカタログのような本でした。この中で、「アダルトゲーム・コレクション」と名付けられたコーナーがあり、ゲームやパズルに魅せられた著名人が登場しています。ゲームマニアとして有名な、すぎやまこういち氏のコレクション、世界各国の珍しいボードゲーム、かなりの年代物と思われるものなど、目を引くものばかりです。続いて、松本康司氏のチェス・コレクション、土橋創作氏の自作パズル・コレクション、鬼瓦宇太郎氏のトランプ・コレクション、芦ケ原伸之氏のパズル・コレクションと、量、質ともに充実したコレクションばかりでした。パズル作家になるまでには、まだ何年も先の話ですが、この本に魅了されたことは間違いありません。まあ、学生だったこともあり、あれもこれも買うというようなことはできなかったので、この本ばかり眺めていたように思います。

画像 もう1冊重要な本を挙げておきましょう。筑摩書房から出版された、松田道弘氏の「ボードゲーム」という本です。これは、松田道弘あそびの本シリーズの2で、ボードゲームの紹介、解説、戦略と、ただのカタログ本ではなく、研究書といってもいいほどの内容になっています。特に8つのゲームについて、詳しく書かれています。

Ⅰ GAME OF DEDUCTION
  マスターマインド(Master Mind)
  名探偵ゲーム(Clue(do))
Ⅱ BUSINESS GAME
  モノポリ(Monopoly)
  アクワイア(Acquire)
Ⅲ WAR GAME
  ラタック(L'attaque)
  タクテックスⅡ(Tactics Ⅱ)
Ⅳ ORIGINAL GAME
  シグマ・ファイル(Sigma File)
  ディプロマシー(Diplomacy)

 どれもボードゲームの名作と呼ばれるものばかりです。その中でも、マスターマインドは、ボードゲームというより、パズルだといえるでしょう。近年、テレビで放映された「ヌメロン」は、これをモチーフにし、よりゲームらしさをアレンジしたゲームです。名探偵ゲームも、どちらかというと、パズル性の強いボードゲームです。かつて、これを題材にしたパズルを作ったことがあります。また、松田道弘あそびの本シリーズ3「ふたりで遊ぶ本」では、当てものパズルの「ブラックボックス」や戦略がパズル的な「ヘックス」などを紹介しています。ブラックボックスについても、やはり後日紹介したいと思っています。興味のある方は、ぜひ一読をお薦めいたします。

ことば消失パズル

 パズルの中に図形消失パズルというものがあります。1896年、アメリカのパズル作家、サム・ロイドが「地球追い出しパズル」というパズルを発表しました。これは、1000万個の大ヒットとなったそうです。よくある星座早見表のように、大きさの異なる2枚の円盤が重なっていて、そこに兵士が13人描かれています。内側の小さい円盤を少し回すと、兵士が12人に減ってしまうというものです。原理はいたって簡単で、例えば10本の平行線が書かれた紙があったとします。これを対角線上に切って、平行線2本の間隔分だけずらすと、9本になるというものです。したがって、1本あたりは、前より長くなっていますが、線の長さの合計は変わらないのです。
 
 1976年には、坂根厳夫氏が朝日新聞で連載していたコラムの中で、「消える妖精」を紹介しました。また、同年、高木茂男氏が科学朝日で連載していた「パズル遊びの楽しみ」の中で、「鳥獣戯画」を題材にした消失パズルを発表しています。その他、図形やイラストだけでなく、いろいろな消失パズルがありました。

 私もこれに刺激を受けて、ことばによる消失パズルを作ってみました。ボードは3つの部分に分かれていて、上部は何も書かれていない小さい部分と4列の文字群のある部分、下部は4列の文字群が書かれています。初めは、4文字のことばが5つあります。そこで、上部の2つの部分を入れ替えます。小さい部分が左側から右側に移るわけです。これは、収まりをよくするためですが、つまりは上部の4列の文字群が左にずれるということです。すると、 5文字のことばが4つになります。移動前も移動後も、総文字数は変わっていません。今は、これをクロスワードやスケルトンに応用できないかと考えているところです。ただ、元から多くのことばが入っていると、1つや2つ減ったところで、気付いてもらえないという欠点があるのですが…。それでも、劇的に変化するクロスワードができないか、日夜頭を悩ませています。
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クロスワード事始め

 パズル作家になったは、ちょうど30年前の1985年でした。出版社に勤めていた時の知り合いから、彼の先輩に当たるクロスワード雑誌の編集者を紹介されたのです。元々、パズルが好きで、学生の頃から、パズルの本もトイも、買って来ては解く、買って来ては解くといった典型的なマニアでした。そのうち、解くだけでは物足りず、作る方にも手を出し始めていました。とはいえ、今から思えばとても人様の前に出せるようなものではありません。よくあるマニアの一人よがりな代物です。それでも、パズルが作れるということで、雑誌デビューという運びになったわけです。

 初めて作品が掲載されたのは、世界文化社のパズラー増刊「クロスワードファン第7集」です。このとき、いきなり8本も載ったのです。もっとも、いくつかのペンネームを使ったので、本名としては4本です。その中でも、事実上の第1作は、「ディスカバー駅名エキゾチッククロス」というクロスワードです。これは国鉄(当時はまだJRになる前)の駅名だけで作ったクロスワードで、国鉄駅名辞典なるものを、隅から隅までひっくり返して作り上げました。今から考えると、まあよく作れたものだと思います。いかに2文字の駅が多かったか、今では廃線になったところがかなりありますし、もう一度作るのは難しいかなと思います。

 第2作目に当たるのが、「パズル命!超難解展開図クロス」という作品で、この2本が持ち込み原稿で、残りの6本が依頼原稿でした。この展開図クロスは、立方体の表面を利用したクロスワードで、こんな発想は、マニアならではではないかと思います。

画像 私の学生時代は、ルービック・キューブの全盛期で、安価なバッタものを大量に買って来ては、改造するのが好きでした。1つをバラバラにして、他に接着剤でつけてしまう。見た目は3×3×4や3×3×5、十字形にしたり、シールを写真やイラストに変えたり、模造キューブだけでも10個以上作りました。その中で、キューブの表面にクロスワードを貼ったものがあります。6面の各面に1個ずつ、6つのクロスワードを貼ったのですが、これを眺めているうちに、すべての面がつながっていればもっと面白いのにと、これが展開図クロスへのきっかけでした。

 立方体の表面をつなげてみると、文字の進む方向には、3方向あり、1つの面では、そのうちの2方向でタテ・ヨコを構成しています。ある面でタテだった方向は、他の面に回るとヨコになったりします。しかも、どの方向もループするわけですから、平面上でクロスワードを作っていると、どこに文字がつながって行くか間違ってばかりいました。黒マスがタテ、ヨコに並ばないようにするのも一苦労でした。気付かずに黒マスが並ぶことがままあったのです。展開図の中に文字を入れながら、組み立てては崩し組み立てては崩しを繰り返していました。

 展開図クロスはたくさん作りました。立方体にとどまらず、十字形、L字形、ソーマキューブ形(ここまでは1面は正方形)、正八面体、正二十面体(これらは1面は正三角形)などなど。私にとって、展開図クロスはライフワークのような存在です。ここで、1面が5×5の立方体の展開図クロスを挙げておきましょう。黒マスの配置がシンメトリーで、しかも斜めにもつながっていない、すべてのことばが4文字というものです。これの良さは、立方体に組んでみてこそ分かると思います。ぜひ、組み立ててみてください。
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タングラム その2

画像 タングラムが日本に入ってくる以前に、これによく似たものが江戸時代にありました。1742年(寛保2年)に「清少納言 知恵の板」という本が発刊されています。同じ正方形で、7つのピースで構成されていますが、切り方が違います。こちらは、三角形が3つ、四角形が4つ。タングラム同様に、いろいろな形を作って遊ぶ問題集になっています。喜多川歌麿の美人画「角玉屋内 誰袖 きくの しめの」では、二人の女性が知恵の板らしきもので遊んでいる姿が描かれています。ピースが7つ以上あるので、2組混ぜたのか、まったく違うものか分かりません。清少納言の名が付いたのは、清少納言が遊んでいたというわけではなく、江戸の人にとって、才女としてネームバリューがあったのだろうといわれています。よくあることなのですが、中国なら諸葛孔明、現代ならアインシュタインと、天才の代名詞のように名付けられるのです。

画像 タングラム関連グッズの中で、一風変わったものをご紹介しておきます。「TangraMagic」というアメリカの商品で、タングラムではおなじみのパラドックスをテーマにしています。黒い枠の中に、赤いピースがタングラム部分、他に紫色の同形のL字ピースが2つ、黒い小さな正方形が1つ。タングラムを長方形にして枠に入れ、紫のピースを組み合わせて枠に入れると、黒いピースが入るところがなくなるという仕組みです。これも、パズルではよく知られているパラドックスですが、ちょっと見ただけでは不思議に感じてしまいます。ただ、材質がウレタンというのも怪しい点ではありますけどねえ…。
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 中には、タングラムのパラドックスが15問入っています。同じように見える形なのに、一方は1つピースが余ってしまうという問題です。イギリスのパズル作家、H・E・デュードニーが作ったパラドックス問題がよく知られています。できるだけ正確にイラストにしてみました。同じように見えますが、よく見ると違いがあります。これは相似を利用していて、やや大きさが異なります。並べて見ると、影絵の腹の辺りが違うことに気が付きませんか。パズルの礼儀として答えは載せませんが、ぜひ挑戦してみてください。
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大英博物館展に行ってきました

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 東京都美術館で行われている、「100のモノが語る世界の歴史 大英博物館展」に行ってきました。古代エジプトの棺やラムセス2世像、柿右衛門の象など、興味深いものばかりでしたが、特に気になったのは、中国1~200年頃の「六博ゲームをする人物像」と、イギリス1150~1200年頃の「ルイス島のチェス駒」の2つです。ボードゲーム好きの私としては、とても気になって仕方ありませんでした。

 六博については、今では、正確なルールは分からないようで、サイコロを使う中国将棋のような、バックギャモンにも似たゲームだったようで、一説には占いだともいわれています。ゲームというより賭博が正しいようです。

画像 ルイス島のチェス駒は、現存する世界最古のチェス駒といわれ、イギリスのルイス島で発見されました。駒は、セイウチの牙、クジラの歯でできていて、おそらくノルウェーで作られたものだそうです。実は、何年か前にあった大英博物館展のときに、ネット通販によるグッズ販売があって、このチェス駒を模した、プラスチック製のチェスセットを購入したことがありました。写真はそのときのもの。今回もチェスセットはありましたが、色や大きさが少し違います。チェスについては、NHKアニメ「ファイ・ブレイン 神のパズル」でも、凝りに凝った棋譜を作ったほどですから、次の機会にぜひ熱く語りたいと思います。

画像 グッズ売り場で見つけた本があったので、こちらをご紹介します。「GAMES」(Irving Finkel/The British Museum)という洋書で、有名な古代のボードゲームを5種類解説しています。

1.Doudecim Scripta バックギャモンの原型のようなゲーム
2.Royal Game of Ur ウルの王朝ゲーム。装飾されたボードを再現
3.Ancient Egyptian Senet セネットと呼ばれる、エジプトのゲーム
4.Pachiti パチシ。日本ではロケットゲームという名で知られた
5.Snakes and Ladders 蛇と梯子。定番のすごろく

 オールカラーで、コマとサイコロが付属しています。特に、ウルの王朝ゲームは、切り抜いて、木製の箱に貼り付ければ、本物ぽく見えるかなあって感じ。ロンドンでは、これのレプリカが売っていると聞いたことがあり、欲しいとは思っているのですが、まだチャンスがありません。いつか行ってみたいと思っています。

タングラム その1

画像  あるきっかけから、某センターでパズル講座のようなものを始めることになりました。「大人の脳トレ」といった意味合いで、パズルを紹介して、受講生に楽しんでもらおうというものです。

 第1回では、タングラム、クロスワード、ナンプレの3つをやりました。タングラムは、紙を切っただけで遊べるので、とても盛り上がりました。受講生の方々には、面白いと評判も上々でした。タングラムを取り上げた一番の理由は、平面のパズルの扱い易さです。大勢の方々に遊んでもらおうとなると、用具を揃えるだけでも大変です。その点、平面のパズルなら、紙を切るだけの手間でできます。平面のパズルの中で、何がいいかとなったら、まず最初に思い浮かんだのがタングラムでした。インターネット上には、たくさんの問題があり、受講生のみなさんが家に帰った後でも、新しい問題で遊べるのというのもいい点です。

画像 タングラムとの出会いは、30年くらい前に買った「タングラム 知恵の板」(ヨースト・エルファーズ・著/河出書房新社)という本でした。久しぶりに、この本を開いてみるたら、なんと初版本でした。プラスチック製のタングラム板が付属していて、夢中になって遊んだ記憶があります。

 この本によると、中国では「七巧板」と呼ばれ、19世紀の中国の書物の中で、「七巧」ということばは、周時代(紀元前1100年~256年)に由来していると書かれています。それは、1つのしきたりを示すことばで、七月七日に、七つの目処を持った一本の針に、一本の糸を通すといいもので、こうすれば幸運がやってくるというのです。正方形という形と、七つに分解するという点に、いかにも中国らしさが感じられます。

 19世紀、この「七巧板」がヨーロッパに渡った頃は、「中国のパズル」とか「悩みの種(Casse-tete)」とか呼ばれていたそうです。このパズルに夢中になった、アメリカのパズル作家、サム・ロイドが自身の著書「タンの8番目の本」の中で紹介しました。大昔の中国に、タンという名の青年がいて、正方形の陶器の皿を落として割ってしまった。これらは7つの欠片となり、それを元に戻そうとしてところ、いろいろな形ができるのを知り、これで遊んだのが始まりだと記しています。タンの数式、図式からタングラムと名付けられました。もっとも、これは、サム・ロイドの創作だそうです。

 今回はここまで。タングラムについては、また続編を書きます。

ブログ始めました

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 みなさん、こんにちは。私はパズル作家をしております、郷内邦義(ごうないくによし)と申します。
遅ればせながら、ブログを始めました。以前、ホームページを持っていたのですが、元来の怠け癖のため、つい疎かになってしまい、いつの間にかやめてしまいました。今度は三日坊主に終わらないよう、無理せずに続けたいと思います。ぜひ、お見知りおきください。

 さて、基本的に、私自身の身の周りのこと、気が付いたことを、日記のように書いていこうと思っていますが、パズルについての情報や豆知識、こぼれ話なども書くつもりです。また、私がパズル・デザインを担当したNHKアニメ「ファイ・ブレイン 神のパズル」第3シリーズが終わって早1年余り、舞台裏やパズルの謎や秘密などを、制約があるのでどこまで話せるかわかりませんが、少しずつでも書けたらいいなと考えています。
 今後ともよろしくお願いいたします。