2020/03/17
auから全国の卒業生へ 『音のVR』で卒業合唱をバーチャル体験
2020年春、新型コロナウィルスの感染症対策により、政府は全国の小中高等学校に休校を要請。それに伴い、多くの学校で卒業式の式典中止や縮小が余儀なくされている。卒業生と担任教師だけが登校し、各教室で証書の授与だけが行われるといったケースも少なくない。
卒業式といえば、合唱を思い浮かべる人も多いのではないだろうか。恩師や両親、仲間に感謝を伝えたり、在校生から卒業生へ贈ったり。そんな思い出に残る合唱を、今年、多くの学校で歌うことができない。
そんな全国の卒業生に、卒業式の合唱を体感してもらいたいと、KDDIは日本を代表するプロの合唱団「東京混声合唱団」と協力し、まるで卒業式の合唱の場にいるような体験を楽しめる卒業式向け合唱コンテンツを、「音のVR」アプリで公開した。
新音楽視聴体験「音のVR」アプリのダウンロードはこちら ※2020年3月17日現在、iOSのみでの配信となります。
収録曲は「旅立ちの日に」「大地讃頌」「3月9日」「群青」「心の瞳」の5曲。いずれも卒業式で歌い継がれてきた人気の定番曲だ。
KDDIではこの企画の制作に伴って、全国10代から50代の男女に「卒業式の合唱曲といえば」というアンケートを実施した。こちらがその上位ランキング。今回配信する「旅立ちの日に」が1位、「大地讃頌」「3月9日」なども上位にランクインしている。
調査方法:インターネットによるアンケート調査
調査対象:全国の中学や高校の卒業式で合唱を経験した10代~50代の男女
調査人数:各世代の男女100名ずつ、計1,000名
調査日時:2020年2月29日から3月1日
では、「音のVR」とは、いったいどんな技術なのか?
その場にいるかのような“合唱”が体感できる「音のVR」
「音のVR」とは、360°動画の見たい・聴きたい部分に自由自在にフォーカスし、好きなパートに近づいたり遠ざかったりする今までにない視聴体験ができる、KDDI総合研究所独自の技術だ。全体のハーモニーの中で、あるパートに近づいたときの聴こえ方にすることができるので、あたかも卒業式の合唱に参加しているような疑似体験ができる。
こちらは今回、東京混声合唱団が音のVRのために合唱曲を収録した時の模様だ。
合唱団の前に配置された上部の球体が360°マイクで、下部が360°カメラ。これらを連ねた収録機器を、ぐるりと取り囲むように各パートの方々が並んで歌う。
これを「音のVR」アプリで再生する と、歌声を360°から浴びるので、合唱曲のまんなかにいるような感覚になる。自分も合唱団の一員になったかのような臨場感だ。
こちらは、収録した「音のVR」を体感している様子。スマホに映し出されているのは360°カメラによるVR映像だ。
実際に体験してみるとこんな感じ。曲は「旅立ちの日に」だ。
画面をタッチして周囲360°スクロールすることができ、見えている映像によって音の聞こえ方が変わる。ヘッドホンやイヤホンを使えば、ときに横から、ときに背後に合唱団がいるかのように、まさに臨場感あふれる美しいハーモニーを聴くことができる。
さらに「音のVR」は、画面をピンチアウト(ズーム)すると、そこに映っているパートの音ごとズームすることができる。ソプラノ・アルト・テノール・バスと、好きなパートの歌声を重点的に選んで体験することもできる。
東京混声合唱団のメンバーも新しい音楽視聴体験に驚いた
歌を収録したばかりの東京混声合唱団のみなさんに、「音のVR」を実際に体験してもらった。体験するのはみなさん初めてだ。
「指揮者の位置に合わせると、いちばん音がまとまって聞こえました。お客様は普段、客席から舞台に向かって聴きますが、指揮者のポジションからも聴けるのは画期的ですね!」(アルト担当)
「まるで合唱団のなかにいるかのよう。とにかく臨場感がすごいです。映像でも、音声でも、こんな音楽の体験は初めて!」(ソプラノ担当)
「普段はハーモニーをもっとも意識して歌っていて、全体の美しさを追求しています。一方、東京混声合唱団の理想は、“個”としても成り立つ声が、重なり合って全体で楽しく美しい音にすること。全体のほうにだけ向かいがちな意識を『音のVR』は、“個”に戻してくれましたね。それは理想の実現に非常に役立つ点ですが、ひとりの歌い手としては非常に怖いなあ……(笑)」(テノール担当)
「この技術によって、観客も受け身ではなく、より能動的に音楽に関わることができるようになりそうですね。聴き流す音楽ではなく、自分はここが聴きたいと意識しながら楽曲に向き合うようになると思います」(バス担当)
「各パートの声をボリュームアップして聴けて、でも全体のハーモニーも完全に消えるのではなく聴こえてくるのが素晴らしい。まるでその場にいるみたい。これ絶対、合唱の練習に使えますよね!」(アルト担当)
なかでも多かったのは「学生時代にこの技術があったらよかったのに!」という声。収録した楽曲は、「音のVR」アプリをインストールしたスマホやタブレットがあれば、どこでも簡単に視聴することができる。学校の合唱部の練習でも手軽に活用できそうだ。
合唱コンクールなど学校合唱の練習に役に立つ
こちらは神奈川県川崎市にある桐光学園。
同校の合唱部は、昨年のNHK全国学校音楽コンクールの全国コンクールで優良賞に輝いている。
桐光学園でも卒業式は縮小開催。原則、卒業生と担任だけが出席し、式自体も教室で行われた。合唱部の活動も休止状態。実は合唱部にとって3月は非常に重要な時期で、春休みを活用した学外の公演がいくつも予定されていたという。
桐光学園の音楽教諭で、中高合わせて、おおよそ70名の部員たちを指導する合唱部顧問の上田武夫先生に、「音のVR」を体験してもらい、感想を聞いてみた。
「当校もそうですが、全国的に卒業式が縮小されたり中止されたりする状況で、合唱できないのは残念ですね。せっかく練習しても歌えないという、この気持ちをどこに持っていったらいいのか。
そんななかで、この『音のVR』は非常にユニークな音楽体験だと思います。まるで、合唱団のなかに自分がいて歌声を聞いているような臨場感には驚きました。
それぞれのパートの独立した音の聞こえ方が素晴らしいと思います。これは、十分に合唱練習でも使えるレベルの技術ですね。特に学校合唱のニーズが高いのではないでしょうか。まさに「大地讃頌」などは、私たちの学校でも合唱コンクールの終わりに全員で歌う曲なので、その練習にも使えそうですね」
先生は「聴くだけでなく、むしろ収録してみたい」と話す。
「歌っているつもりでも、口の開け方やブレスなどは他人から指摘されないとわかりません。生徒たちだけで行っているような練習時に『音のVR』で収録し、客観的に見直すことができれば、練習においても非常に有用だと思います。ハーモニーのなかから、自分のパートの声だけを拾い出すというのはほかにはない技術ですからね」
突如始まった休校措置のさなかでも、部員たちに自宅での練習を継続するよう指示を出している。
「毎回の部活時に行っているストレッチとブレス練習は欠かさないよう伝えています。それと4月公演で予定している曲の音取りはしておこうと連絡しています」
音取りとは、合唱曲においてそれぞれのパートのメロディーをきちんと把握すること。その際にも、取り組んでいる曲が「音のVR」で収録されているなら、非常に有効な練習手段だと上田先生は言う。
卒業式のできないみなさんに合唱の疑似体験を
2020年春、不測の事態により、卒業式での思い出づくりの機会を失った多くの学生たちのために、KDDIは「音のVR」という独自の技術を活用して、卒業式で歌われる合唱曲をバーチャルな体験として提供した。
今回のKDDIとのコラボレーションに関して、東京混声合唱団 事務局長の村上満志さんは言う。
「東京混声合唱団は、青少年に対する音楽普及を事業の一つとしています。私たちも公演の中止により歌えない日が続いていますが、こんな時だからこそ、プロ合唱団として青少年のみなさんに合唱の魅力を伝えたいという想いがあり、今回KDDIと一緒に取り組みをいたしました。音のVRでは全体の音を聞きながら、個々の音にズームして合唱の疑似体験ができます。この合唱コンテンツを通じて、卒業生にエールを届けることができれば嬉しいです。」
5Gの時代を迎え、テクノロジーはますます進歩していくなかで、これからはそれをいかに活用していくかが問われるだろう。“技術ファースト”ではなく、使う側のみなさんに寄り添うかたちで、社会課題の解決や、ワクワクを提案し続けるために、KDDIはこれからもパートナーとともに新しい体験価値を提供していく。
新音楽視聴体験「音のVR」アプリのダウンロードはこちら ※2020年3月17日現在、iOSのみでの配信となります。
文:TIME & SPACE編集部
写真:落合由夏
※掲載されたKDDIの商品・サービスに関する情報は、掲載日現在のものです。商品・サービスの料金、サービスの内容・仕様などの情報は予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。