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【今は昔】転生!かぐや姫【竹取の翁ありけり】 作者:七師

第2章「かぐや姫」

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伍拾玖.ん…、はあぁぁぁぁぁ

 俺「雪ー。雪ー」

 雪「はい、こちらに」

 俺「墨が見つかったからお風呂に入る」

 雪「では、お手伝いいたします」

 俺「うん。よろしくね」


 1ヶ月経って変わったのは何も風呂桶が設置されたことだけではない。俺の身体にも劇的な変化が起きていた。


 まず、身長が驚くほど伸びた。今の身長は大体雪の目の高さくらいだ。体型はすらっと細身でその割に出るところは出ている。この辺は天照が「サービスしといた」のが効いているんだろう。


 あと、髪が伸びた。絹のような肌触りを持つカラスの羽のような漆黒の髪が、直立した状態でまっすぐストレートに床に届くほどもある。長すぎでうざいので切りたいといったら、雪が必死の形相で「それを切るなんてとんでもない」と言ったのでそのままになっている。この時代、黒くて長い髪が美人の象徴なのだそうだ。


 で、お風呂の話だ。さすがにこんなに長い髪を1人で洗うのは不可能なので、必然的に誰かに手伝ってもらう必要がある。そこで雪の出番なのだ。


 雪は小袖1枚になって袖をタスキに縛って長い髪を頭の上に丸めて準備万端に待ち構えていた。と言っても、雪にとっても生まれて始めてのお風呂のお手伝いなので、顔に緊張の色が見られる。


 俺「そんな緊張しなくても大丈夫だよ。昔はいつも1人でやってたんだし」

 雪「昔ですか?」

 俺「あ、いやー、その、頭の中でシミュレーションをね」


 (やばいやばい。なんか失言しそうになった)


 俺はまず脱衣所で墨の服を脱がせて自分の服を脱ぐと、浴室へと足を踏み入れた。浴室は注文通りに総檜風呂といった趣きで、しばし感動に打ち震えて立ちすくんでしまった。


 雪「どうなされましたか?」

 俺「いや、ちょっと感動して」


 (こんな立派な風呂、現代にいた時も入ったことないよ)


 墨は猫の本能なのか張ってあるお湯に顔を近づけてぺろぺろと舐めている。俺はそんな墨に後ろから近づいて、桶に湯を汲んで背中にかけてやった。


 墨「みぎゃー」


 と突然、この世が終わったかのような叫び声を上げて脱兎のごとく浴室の隅へと逃げこむ。どれだけ格好が幼女になっても猫は猫なのか。


 俺「ん…、はあぁぁぁぁぁ」


 そんな墨はほっておいて俺は自分にも湯をかけて早速湯船に浸かった。気持ちよさに思わずため息が出てしまう。


 俺「墨ー。墨ー。気持ちいいから一緒に入ろうよ」

 墨「…」


 主人の命令なのでさすがに無視できずに墨はもう一度恐る恐る湯船に近づいてきた。そして、右手を伸ばして水面を叩いてみる。


 とそこで俺は墨の脇に手を入れてひょいと持ち上げ、そのまま抱っこして湯船に浸かってみた。


 墨「あう、あう」

 俺「ね、気持ちいでしょ」


 墨が何か涙目で俺を見て訴えてくるが、きっと気持ちいいと言いたいのに違いない。

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