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【今は昔】転生!かぐや姫【竹取の翁ありけり】 作者:七師

第1章「天照」

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伍拾肆.若さの秘訣

賀茂のいかづちは上賀茂神社の主神、賀茂別雷大神かもわけいかづちのおおかみの力を借りて雷を落とす魔法だ。そしてここは上賀茂神社の境内の上空である。どうやら月☆読は調子に乗って賀茂明神のご機嫌を損ねてしまったらしい。


 俺が呼び出した雷は、以前三羽烏に使った時の雷の当社比10倍くらいの威力で月☆読に襲いかかった。


 !!!!!!!!!!!


 (しまった。また耳栓を忘れた)


 間近で雷が落ちると、聴覚がいかれて雷の音なんて聞こえない。ただ、何かものすごい衝撃が発生したことが聴覚を通して分かるだけだ。


 いかに天照の弟、三柱の貴子(みはしらのうずのみこ)の1人といえども、賀茂明神の怒りのこもった雷を不意打ちで受けて無事でいられるわけがない。一瞬で真っ黒焦げになってふらふらと落下していった。重力の法則を無視した落ち方になるのは神様だからなのだろうか。月☆読の落ちる様子は、どうにも緊張感なく笑いを誘う雰囲気を漂わせていた。


 月☆読(おねえ…さま…)


 俺が月☆読の後を追いかけて地上に降りると、月☆読はなんだか臭い芝居をしているところだった。とりあえずわざと月☆読に気づかないふりをして定番のボケをかましてみることにした。


 月☆読(ふげっ)

 俺『お、悪い。踏んだ』


 「ふげっ」とか、そこまで念話で話さなくてもいいだろうに。


 …


 俺『はあ。それで、天照を追いかけていたと』


 落ち着きを取り戻した月☆読と俺は、上賀茂神社の境内に腰を下ろして、冷静に今の状況について確認していた。というか、天照に振り回される者同士でなんとなく気が合ってしまったというのが正しい。


 月☆読(そうです。太陽神であるお姉さまにとって、夏至は1年のなかでも非常に重要な日なのですが、ここのところお姉さまは反抗期のようでして、ちっとも言うことを聞いてくださらないのです)


 (反抗期って、子供じゃないんだから。見た目は中学生みたいだけど)


 俺『ところで、天照って何歳なんだ?』

 月☆読(正確な年齢はもう覚えていませんが数百歳です。千歳は超えていないかと)

 俺『数百歳? 46億歳とかじゃないの?』

 月☆読(お姉さまが太陽神に就任なさったのは比較的最近のことですから)


 (へー。神様の世界ってのはそんな風になってるんだ。意外だな)


 月☆読(お姉さまは太陽神としての重責を、まだ年端もいかぬ幼い頃から務めてこられて、大変苦労なさっているのです。私はそのことを思うと涙が止まりません)


 そう言うと、月☆読ははらはらと泣き始めた。俺は若干引いている。


 月☆読(ですからっ、私はっ、お姉さまを全力でお支え申し上げると心に誓ったのですっ!!!)

 俺『はあ、左様さいですか』

日本の暦は現代では西暦と和暦が使われているのですが、戦前までは皇紀というのも使われていました。これは伝説上の初代天皇とされている神武天皇が即位した年を元年としたもので、皇紀元年は西暦紀元前660年ということになっています。


実際に大和朝廷が成立したのは3世紀と考えられていて、紀元前660年に初代天皇が即位したというのはフィクションと考えられていますが、古代から神武天皇の即位を日本のはじまりとする認識は一般的だったようです。なお、皇紀が暦として使われるようになったのは江戸時代後期以降とのことで、平安時代には使われていません。


この話で天照の年齢を数百歳としたのは、史実に沿ったより現実的な年齢を採用したためです。

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