伍拾.ミラクルチェンジ
…
(俺もいい加減天照の遊びに付き合うのがうまくなったよな)
俺はうつぶせに倒れている天照の元へと歩み寄った。天照はピクリとも動かないが、これはいわゆる死んだふりというやつだ。大体、最後の方の技は見た目だけ派手な花火で殺傷能力は皆無なのだ。相手が天照では万が一にもかすり傷もつくはずがない。
と、天照が手を使わずにむくりと起き上がった。
天照『…、ふっ、…、ふっふっふ。はっはっは。私には魂が4つあるのだ。今のはその内の1つを倒したにすぎん。私を倒したければ残り3つも倒してみせろっ!』
俺『…、いや、そういうの、もういいから』
天照『…』
(前言撤回だ。やっぱり付き合いきれなかった)
天照『私を倒したければ残り3つも倒してみせろっ!!』
俺『…』
天照『私を倒したければ残り3つも倒してみせろっ!!!』
天照の手の上に太陽のような輝きを持つ光の玉が出現して徐々に大きくなってきた。眩しいだけじゃなくて尋常じゃなく暑い。
(何だあの太陽みたいなのは…、って、まさかあの地上に存在してはいけない核融合してる本物のあれじゃないだろうな)
心なしか地面が蒸発し始めている気がする。あ、あの放電現象はプラズマ?
俺『ま、待ってくれ。わかった。わかったから、残り3つも倒すから。だから頼むからその物騒なものをしまってくれ、いや、ください。お願いします。』
遠くの声(…えさまー)
天照『やばっ、もう追ってきた』
天照は急に慌てて例の物騒な玉を消滅させると、突然俺の目の前に瞬間移動してきた。
天照『ね、姫ちゃん。ちょっとだけ協力してくれない? お願いっ!』
俺『へ? 何だよいきなり』
天照『細かいことは後で。ね。あたしを助けると思って』
天照の言うことはさっぱり要領を得ないが、俺はいい奴なので困っているのを見て手を貸さないという選択肢は持ち合わせていない。
俺『ま、まあ。できることならいいけど』
天照『やったぁ! じゃあ』
と言って、天照は俺から少し距離をとってポーズを決めた。手にはどこから出したのか魔法少女っぽいマジカルスティック的なものを持っている。
天照『ミラクルチェーンジ(はぁと』
俺は前フリなく、いきなりなんだかよく分からない(俺の頭の中の魔法事典にも載っていなかった)魔法をかけられて面食らってしまったが、特に何もダメージは負っていないようだ。
天照『エイッ』
天照は更にスティックを上に向かって振り上げると、閃光弾のようなものが頭上で発火した。
天照『じゃ、あとはよろしくねー』
そう言うと、天照は閃光弾の放つ光に溶けるように姿を消してしまった。