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連載
片田珠美「精神科女医のたわごと」

「コロナばらまき男」から女性に感染、入院先で暴力の危険…反社会性パーソナリティ障害か

文=片田珠美/精神科医
ガラガラの羽田空港(写真:つのだよしお/アフロ)

 愛知県蒲郡市で、自分自身の新型コロナウイルス感染を知りながら、自宅待機の要請を無視し、族に「ウイルスをばらまいてやる」と告げて外出した50代の男性が立ち寄ったパブで濃厚接触した30代のフィリピン人女性のウイルス陽性が判明した。

 このパブは、店内を消毒し、営業自粛に追い込まれている。そのため、事態を重く見た県警は、威力業務妨害容疑などを視野に捜査を進める方針らしい。

 パブの店主も「迷惑で被害届を出す」と話しているようだが、たしかに実に迷惑な話である。この「コロナばらまき男」は、社会を悩ませる「妨害者」なのではないかと疑わざるをえない。

 こうした「妨害者」の最も純粋な形が「反社会性パーソナリティ障害」であり、「コロナばらまき男」もその典型のように見える。この男性は、「週刊文春」(319日号/文藝春秋)によれば、元暴力団員で、複数の前科があるという。

 13年前には、転中にクラクションを鳴らされたことに腹を立て、トラックの運転手を殴り、1000円を巻き上げて逮捕されているし、2年前にも隣人を「椅子を引きずる音がうるさい。殺すぞ」と脅迫し、3000円を脅し取って息子とともに逮捕されている(同誌)。

 このような経歴から浮かび上がるのは、怒りや攻撃衝動をコントロールできず、他人を傷つけたり、他人から金品を奪ったりする男の姿である。しかも、何度も繰り返しており、反省も後悔もしていないように見える。

 つまり、「コロナばらまき男」には、衝動性、攻撃性、安全を考えない無謀さ、逮捕の原因になる行為の繰り返し、良の呵責の欠如が認められる。これらはいずれも「反社会性パーソナリティ障害」の特徴である。

「コロナばらまき男」は入院中にトラブルを起こすかも……

 「反社会性パーソナリティ障害」の人は、どんな社会にも一定の割合で存在する。この手の人が入院すると、しばしばトラブルを起こす。

 たとえば、居酒屋で喧嘩になり骨折したとかで整形外科に入院してきた男性患者は、看護師へのセクハラや暴言を繰り返した。そのため、病棟が困り果て、相談を受けた私が診察することになったのだが、この男性患者は診察の際に「イライラして眠れない」と訴え、多量の睡眠薬と抗不安薬を処方するよう要求した。

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