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【社説】

子どもたちへ スズメと遊ぼう春休み

 学校が長いお休みになり、やったあ…と喜(よろこ)んでいた子も、そろそろ退屈(たいくつ)してはいませんか? 「うちにいてもすることがないなあ」と思ったら、窓(まど)の外を見てください。小さな友だちがいますよ。

 スズメです。日本で一番古い歴史(れきし)の本「古事記(こじき)」にも出てくる、身近な小鳥。冬を乗りきったこのごろは、元気よくさえずったり、好きな相手を追いかけたりしますから、観察(かんさつ)すると楽しいですよ。

 観察の合間には、スズメの本を読んでみましょう。

 小学校の低学年(ていがくねん)の子なら、絵本「すずめくん どこで ごはん たべるの?」(福音館書店(ふくいんかんしょてん))がおすすめです。動物園に飛(と)んできたすずめくんが、カバやクマにごはんを分けてもらうのですが、ワニのところでは…。ロシアの有名な詩人マルシャークの詩から生まれた本です。

 小学校の高学年から中学生には「ある小さなスズメの記録(きろく)」(文春文庫(ぶんしゅんぶんこ))。第二次世界大戦中(だいにじせかいたいせんちゅう)の英国(えいこく)で、一人の音楽家が傷(きず)ついた子スズメと出あう実話です。

 クラレンスと名づけられたスズメはやがて元気になり、戦争(せんそう)で苦しい毎日を送る人たちの心をなぐさめるのでした。クラレンスと同じようにこの本が、新型肺炎(しんがたはいえん)のせいで学校に行けず、外でも遊べない子の支(ささ)えになりますように。

 もう一冊(さつ)は「スズメの謎(なぞ)」(誠文堂新光社(せいぶんどうしんこうしゃ))。鳥の学者の三上修(みかみおさむ)さんが二〇〇八年、日本のスズメの数を調べた結果(けっか)の本です。これはとても難(むずか)しい調査(ちょうさ)ですが、三上さんはさまざまな方法(ほうほう)や資料(しりょう)を使い、およそ千八百万羽と推理(すいり)しました。また一九九〇年からの二十年間で、スズメが半分に減(へ)ったという考えにもたどり着きます。

 探偵(たんてい)が謎を解(と)くようなおもしろさのある本ですが、これをおすすめする理由がもう一つあります。

 みなさんが大人になると、新型肺炎のような病気や地球の温暖化(おんだんか)など、難しい問題とも向き合わなくてはなりません。そのとき、思いつきで何かをしたり「温暖化なんてうそだ」とごまかしたりしては、むしろ混乱(こんらん)が広がります。

 大切なのは、多くの人の意見や知恵(ちえ)を集め、きちんとした証拠(しょうこ)や調査に基(もと)づいて、しっかりした対策(たいさく)を取ることです。そんな筋道(すじみち)の通った考え方や行動を身につけるためには、三上さんの本がきっといい参考(さんこう)になるでしょう。休校が続く子たちも、学校が再開した子たちも、この三冊をはじめ多くの本を読み、そこからたくさん学んでください。

 

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