シンガー・ソングライターの鬼束ちひろさん(30)に暴行を加えたとして、傷害罪で逮捕、起訴された知人の無職・古宮裕輔(39)の初公判が16日、東京地裁で開かれた。
スーツ姿で法廷に現れた古宮被告人は手錠に腰縄。背は高く、ガタイがいい。ふんぞり返って座る姿には威圧感がある。顔立ちはハッキリしており、美形の部類に入るかもしれない。
罪状認否では「え~っと、ま、え~っと、事実と違うとこ、ありますけど」と起訴事実を一部否認。傍聴席に背を向けたとき、首筋のタトゥーがちらりと見えた。
起訴状や冒頭陳述、証拠による、鬼束ちひろさん暴行事件についての概要はこうだ。
今年8月上旬、玩具店で偶然出会い、交際をスタートさせた2人。ほどなく鬼束さんのマンションで同居を始めた。当初は良好だった2人の関係だが、古宮被告人は徐々に不満をつのらせていったという。
そして8月17日夜、知人の店でハイボール数杯を飲み、帰宅後にリビングで就寝。早朝に目が覚めると、不満を伝えよう、と鬼束さんの寝ている寝室へ向かい布団をはぎ取り、おもむろに平手打ち。怒った鬼束さんが平手打ちを返すとこれに激高。顔を数回殴り、脇腹を蹴りつけ、床に倒れ込んだ鬼束さんの頭を掴み、床に数回叩き付けた上、両目に目つぶしをしたという。
この暴行により、鬼束さんは左肋骨骨折、頬骨骨折など全治一カ月の重傷を負った。
認否では「暴行は、一発、頬を叩いただけです。ソレ以外やってない。左肋骨骨折には心当たりがない」と主張、鬼束さんが全治一カ月を要する傷害を負ったことについては、
「ま、私が平手打ちして、倒れたりして、そのときにキズ、負ったと思います」。
ところで、このように一部否認のケースだと、検察側の請求証拠である被害者の調書に
ついては弁護人が不同意を申し立て、証人尋問が行われるというのが一般的な流れである。ところが今回、検察側が請求した鬼束さんの被害届も調書も弁護側は不同意とせず、裁判所に採用されていた。よって、鬼束さんが証人出廷することはなく、書面での立証となった。
そして採用された鬼束さんの調書。処罰感情についてはこうある。
「この被害で私は男性不信になりました。男の人に近づくのが怖くなってしまいました。顔にひどい怪我を負わされたことは絶対に許せません」
厳重処罰を望んでいるようだ。こんなひどい被害に遭ったのだから当然だろう。
鬼束さんの同僚だという女性の調書も読み上げられた。
「マンションに駆けつけると、彼女が泣きながら『怖かった。殴られたり、蹴られたり、目つぶしされた』と言ってました。部屋に入ると、パソコンの液晶画面が壊れていたり、壁やドアが凹んでいました」
古宮被告人には傷害罪と、暴力行為等処罰に関する法律違反の前科が複数あり、服役の過去もある。婚姻歴はないが、子どもはいる。
また今回、鬼束さんの件だけでなく、別の傷害事件でも起訴されている。
検察側の冒頭陳述によれば今年3月、下北沢のコンビニ前で見知らぬ男性から「そのサスペンダー、かっこいいっすね」と言われたことに激高。「テメー、生意気な口ききやがって」と持っていた牛丼を叩き付け、男性を殴りつけた上、倒れた男性の腹や顔面を殴る蹴るなどしたという。
こちらについては一部否認どころか「全く、ちょっと、記憶ないんで、分からないです。そこに行った記憶がない。この日時、この場所にはいないと思います」と完全否認。来年には被害男性が証人出廷する予定だ。
古宮被告人は、検察官が証拠を読み上げている間、手元の書類をめくったり、傍聴席を見回したりと、落ち着きのない様子を見せていた。
“平手打ち1回で、全治一カ月の傷害を負わせた”……果たして、この主張が通るのか。
(文=高橋ユキ)