肆拾捌.有髷丼
キーーーーーーン
どこかでジェット機が飛ぶ音がする。京都の近くに空港ってあったっけ? 伊丹空港…は大阪か。だとするともっと小さい地方空港か、それとも自衛隊か…
(って、どこの平安時代にジェット機が飛んでるんだっ!!!)
俺は音のする方向を探して空を見上げた。淡い光の粒がものすごい勢いでこっちに飛んでくるのが見えた。
(いっ、隕石? 直撃!?)
突然のメテオストライクの危機に俺の頭は沸騰した。何か、何か隕石の衝突を防ぐ魔法はないか…
(このままじゃ、京が…、雪が…)
俺は能力の限界まで頭をフル回転させて記憶の中の魔法事典を検索した。隕石の到着までもう数秒もないはずだ。1秒以内で展開できて高エネルギー大質量大運動量の物体を一瞬で静止させる、もしくは弾き返すような魔法が必要だった。
(くそっ、くそっ)
ダメだっ、間に合わないっ!!
…
…
隕石着地の瞬間、無駄だと知りながら反射的に頭と胸をかばって手を上げた。…が、予想された衝撃波が到達しない。狩衣の袖に視界を塞がれて何が起きているのかわからないので、恐る恐る手を下げて見た。
『あー、姫ちゃん! 来てくれたんだね』
こっ、この声は。
俺『天照! お前が隕石を止めてくれたのか?』
さっすが日本の最高神。やっぱりやるときにはやってくれる。俺はこの時ほど天照のことを尊敬したことはなかった。ちゃらんぽらんに見えてもきちんと力を使うべき時は心得てるってことか。
天照『へ? 隕石? ナンノコッチャ?』
天照は頭の上にはてなマークをいくつも浮かべて、淡く光りながらふらふらと空中を浮いたまま漂っていた。って、リアルにはてなマークを頭の上に再現するな!! その記号はこの時代には存在しないだろうが!!!
(淡く光り…、空中を浮いたまま…)
!
俺『お~ま~え~か~』
天照『なんか姫ちゃん顔が怖いよ』
俺『俺が一体どれだけ心配したと…』
天照『あの、姫ちゃん? 姫さま…?』