【ニューヨーク=後藤達也】世界株安が加速している。16日の米ダウ工業株30種平均は前週末比2997ドル安の2万0188ドルに急落。12日に記録した過去最大の下げ幅(2352ドル)を塗り替えた。下げ幅は一時3000ドルを超えた。米連邦準備理事会(FRB)は15日に緊急利下げしたが新型コロナウイルスの流行拡大で投資家の不安が鎮まらない。欧米では入国制限が相次ぎ、経済活動の停滞も強まっている。
ダウ平均は取引開始から2000ドルを超える下落となり、米国株の取引は一時中断された。その後も全面安が続き、特に消費財やエネルギー、小売り関連の株が大きく値下がりした。ボーイングが21%下がり、マクドナルドやJPモルガン・チェースも14~16%下落した。ダウ平均は2月に付けた史上最高値からの下落率が31%強に達した。
トランプ米大統領は16日午後、ホワイトハウスで記者会見し、新型コロナウイルスの流行が続く時期に関して「7月か8月か、その辺りを議論している人がいる」と指摘。記者団から米国が景気後退に入る可能性について問われ、「かもしれない」と答えた。経済への悪影響が長期化する可能性を示唆したと受け止められ、株安が一時加速した。
欧米では新型コロナの感染者が急増している。米欧で移動制限が広がり、カナダも外国人の入国禁止措置を設けることを決めた。世界各地でレストラン休業など流行拡大を封じ込める措置も相次ぐ。個人消費や供給網など世界経済への打撃は大きく、国民の不安も高まっている。
FRBは15日に1.00%の大幅利下げや量的緩和の再開などを緊急に決めた。だが投資家は新型コロナが経済に与える打撃や期間の長さを読めず、株安に歯止めがかからなくなっている。社債やコマーシャルペーパー(CP)など米企業の資金調達も厳しくなっており、市場では企業の破綻が相次ぐリスクも意識され始めている。
投資家の恐怖心を映すVIX指数は83台に上昇し、リーマン・ショック時に付けた08年の記録を上回った。
欧州株も5%前後下落するなど世界的に株安は連鎖した。シカゴ市場の日経平均先物は一時1万6000円を割り込む場面があった。ニューヨークの原油先物相場も大きく値下がりし、一時1バレル28ドル台を付けた。米長期金利は低下し、円相場は一時、1ドル=105円台前半まで円高・ドル安が進んだ。