最愛の父の死をきっかけにひきこもりに
「父が倒れるまで、事務員として働いていました。小さな会社だったのですが、頼りにされていて、居心地のいい職場でした。でも、父が末期がんであるとわかり、子供は私ひとりなので高齢の母に代わって最期までそばにいたいと思って。会社を辞めました」
58歳の長女(独身)は短大卒業後に入社した会社に40歳まで正社員として働いていたが、父が余命わずかとの宣告を受けたことから退職。献身的に看病した。しかし、1年後に父は他界し、彼女の心にぽっかりと穴が開いてしまう。医師の診断は「うつ病」。無気力状態が続き、離職から18年経った今も働きに出られない状況だ。
「頭ではわかっています。働かなきゃいけないって。でも、力が入らないのです。頑張ろうとすると、苦しくなる。母に相談したら、『元気になるまで休めばいい』って言われ、気づけばこんな歳になってしまいました」
昨今、中高年のひきこもりの多さが社会問題化している。彼女のように、それまで正社員として働いていたのに、親の死などが引き金になって自宅にこもってしまう人も少なくないようだ。
内閣府が2019年に発表した調査「生活状況に関する調査(平成30年度)」によると、自宅に半年以上ひきこもっている中高年(40~64歳)のうち、7割以上が正社員として働いた経験がある。また、「初めてひきこもりになった年齢は40歳以上」と答えた人が4割を占めている。