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【社会】

相模原45人殺傷 死刑 責任能力認める

津久井やまゆり園の居住棟は建て替えが進む=16日、相模原市緑区で

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 相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者ら四十五人を殺傷したとして殺人罪などに問われた元施設職員植松聖(さとし)被告(30)の裁判員裁判で、横浜地裁は十六日、被告の完全責任能力を認めた上で、「十九人もの人命が奪われた結果は他の事例と比較できないほど甚だしく重大」として求刑通り死刑判決を言い渡した。 (丸山耀平)

 事実関係に争いはなく、争点は刑事責任能力の有無や程度。植松被告は公判で控訴しない考えを示しており、一審で死刑判決が確定する可能性がある。

 青沼潔裁判長は判決理由で、犯行動機を「重度障害者を殺害することで不幸が減り、障害者に使われていた金を他に使えるようになるなどして世界平和につながり、自分は先駆者になれると考えた」と指摘。こうした動機は「是認できない内容」だが、園での勤務経験や関心を持つ世界情勢から生じたもので「病的な思考や思考障害によるものではない」として、計画性や違法性の認識もあったことから完全責任能力を認定した。

 その上で、量刑について「計画的かつ強烈な殺意に貫かれた犯行。酌量の余地は全くなく、厳しい非難は免れない。被害者遺族らが峻烈(しゅんれつ)な処罰感情を示すのも当然。死刑をもって臨むほかない」と述べた。

 弁護側は「大麻を長期間、常用したことで病的で異常な思考に陥った」と主張していたが、判決は「大麻が犯行に影響を与えたとは考えられない」と退けた。

 公判は、重傷を負った尾野一矢さん(46)を除き匿名で審理された。当初、「甲A」と呼ばれた犠牲者は途中から美帆さん=当時(19)=と呼ばれて審理された。傍聴席の約三分の一は被害者参加制度を利用した家族らに割り当てられ、他の傍聴席からは見えないよう、ついたてで遮られた。

 判決によると、植松被告は二〇一六年七月二十六日未明、津久井やまゆり園に侵入し、入所者の男女を刃物で突き刺すなどして十九人を殺害、二十四人に重軽傷を負わせ、結束バンドで縛るなどした職員二人にけがを負わせた。

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◆<傍聴記>共生社会へ 試され続ける私たち

 青沼潔裁判長が極刑を告げた瞬間、植松聖被告は背筋を伸ばして座ったまま、微動だにしなかった。その後に発言を求める姿勢からも、判決を受け入れるのでなく、自らが社会に一石を投じた「先駆者」だと言わんとする独善的な姿に見えた。

 一月八日から二月十九日の結審まで計十六回の審理では、植松被告が障害者への差別意識を抱き、殺害を決意する過程の一端が明らかになった。

 小学校低学年で障害者はいらないという作文を書いたというが、障害者への差別思想や殺害しようという計画が強固になるのは、津久井やまゆり園で勤務してから。当初は「かわいい」と話していたが、「いらない」「殺した方がいい」と思考が過激化。両親や友人らの制止に耳を貸さず、犯行に突き進んでいった。

 法廷でも犯行を正当化し続け、事件後の世の中が「重度障害者との共生社会に傾いた」と不本意さをにじませた。間近で遺族らの言葉を聞きながら「『やっぱり(共生社会は)無理だよね』となれば良い」と主張した。

 この事件は、死刑判決が出て終わりを迎えるわけではない。植松被告の思惑を打ち消すには、私たち一人一人が今こそ心の内の差別意識と向き合わなければならない。「共生社会」を理想ではなく現実のものにするために、われわれの社会はこれからも試され続ける。 (曽田晋太郎)

 

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