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 関西電力が2010年代の経営危機時にカットした役員の報酬の一部を、退任後に補塡(ほてん)していたことが分かった。東京電力福島第一原発事故以降に福井県の原発が停止して大幅な赤字を出した際、「身を切る改革」として役員報酬の最大7割をカットしていたもの。当時、電気料金を値上げする際の理由の一つにもなっていたが、補塡が秘密裏に行われていた。

 同社が16日、明らかにした。2016年7月~19年10月、退職した役員18人に2億6千万円を支払った。補塡は豊松秀己元副社長に90万円など月ごとの分割払いで行われ、役員らの金品受領問題が発覚してやめるまでに18人の報酬カット総額19億4千万円の1割超に達していた。

 金品受領問題を調べた第三者委員会の最終報告によると、報酬の補塡は2015年に森詳介会長(当時)と八木誠社長(同)が決め、翌年7月から始まった。関電が13年5月と15年6月の2度にわたって電気料金を値上げした直後で、16年に相談役に退いた森氏は当初から補塡を受け始めたとみられる。

 原発停止後の経営危機は18年ごろまで続き、関電が原発の再稼働で電気料金を震災前の水準に戻したのは18年7月。この間、社員への賞与支給も13年から16年夏まで見送りとなり、18年6月まで基本給もカットしていた。関電は「経営難の労苦を考えた対応だったが、今後、返還を求めたい」(広報)としている。(西尾邦明)