ミクラミヤマクワガタ

僕は子供のころムシキングをやっていた。

というか僕くらいか僕より年上の人たちはみんなやっていたのではないだろうか。

いーややっていないわけがないね、なんていったってムシキングだからね。

ムシキングをやっていた人はお気に入りのムシというものがいたのではないだろうか。

僕は何匹かいた、そりゃあれだけいたら1匹に絞るのは難しいからね(^q^)。

優柔不断な性格はよろしくないかもしれないが、まあ、そういうこともあるだろう。

 

そういうわけで僕のお気に入りのムシのうちの1匹は「ミクラミヤマクワガタ」である。

こいつのムシキングでのステータスは以下の通りだ(一応ピクシブ百科事典でも確認した)。

・つよさ100

 ・超必殺技:サーフィンライド

・属性:チョキ(←必殺技の手が属性と呼ばれてるのを初めて知った。)

・体長:33ミリメートル

・生まれたところ:みくら島・こうづ島

・アタックタイプ

 

まあ、つよさ100ということからわかる通り弱めである。

しかもアタックタイプだから体力はもう貧弱極まりない。

何発か食らったらすぐにお陀仏である。

そしてこいつは全く聞いたことがない名前をしているが日本生まれだ。

みくら島とこうづ島というのがどこにあるのか…子供の時はすごい気になっていた…。

今調べたら伊豆諸島の島で感じだと御蔵島神津島らしい、へぇ~。

 

まあ、このムシの魅力はそこにはない。

大切なのは今から書く、カードに書かれてるミクラミヤマクワガタの説明である。

 

みくら島とこうづ島にしかいないミヤマクワガタ

羽を開くことはできるが飛ぶことができない。

 体は小さいが気が荒く、よくケンカする。

 

”飛ぶことができない”

 

これは当時このカードを当てた僕に衝撃を与えた。

世の中にいるカブトムシとクワガタムシは須らく飛ぶことができるものだと思っていた。

それなのに日本という同じ国に住んでいるクワガタムシの中に飛べないクワガタムシがいる。

「飛べないだと!じゃあなんで羽は開けるんだ!ペンギンだって羽が飛べないように見えるだろう!それならこいつも変な羽なのか!?」

こんな感じで頭がぐちゃぐちゃだった。

今なら鶏を出すだろうが、当時はペンギンが出てくるあたり子供っぽいと今思った。

いや、もしかしたら当時の僕は鶏が飛べると思っていたかもしれない。

 

そんな感じで飛ぶことができないクワガタ…そいつは僕の興味を惹きまくった。

サーフィンライドはミクラミヤマクワガタを当てる前に当てていたので使ってみた。

っていうか当ててたか覚えてないけどミクラミヤマクワガタが出た後すぐに使ったことと、初めて使ったときにサーフィンライドを見たことを考えればまあ、持っていたのだろう。

するとどうだろう?

 

サーフィンライドの時飛んでるじゃん!

 

飛んでるやん…確かにトルネードスローとかで飛ぶならわかるよ?カブトムシが飛べるからね。

でもお前は飛べないのに飛ぶ奴が超必殺技なのか?どうなってるんだ…

 

当時はサーフィンライドを使った後すぐに、筐体のカードリーダーに立てかけてたカード(しまうの面倒だからあそこに立て掛けて置くよね?)を見直した記憶がある。

いやだって飛べないって言ってたからなんとなく使ってた見たのに飛ぶやん…。

 

プレイを進めて終わらせ、家に帰った後も僕はそのことをずっと考えてた。

ミクラミヤマクワガタ…お前はなんでサーフィンライドを超必殺技にしたんだ…。

どうして…あんなに飛びまくる技を超必殺技にしたんだ…。

 

そのとき僕は気づいてしまった。

よく考えたら周りが飛べる甲虫で溢れている(かどうかは御蔵島神津島の生態系を知らないからわからないけど)のに自分だけ飛べないというのはやはり悔しいところがあるのではないだろうか。

そりゃカブトムシだってノコギリクワガタだってオオクワガタだって飛んでるのに自分だけ飛べないのだ(いまここに日本のムシ上げようとしたけどカブトムシってカブトムシしかいない気がしてきた)。

悔しいだろう、うらやましいだろう。

そんなミクラミヤマクワガタでもムシキングの中では空を飛べるのだ。

何を気にすることもなく飛ぶことができるのだ。

それは…彼に許された唯一の自由ではないだろうか…?

そんなことを漠然と考え、自分もその自由を守ってやりたい。

そう考えた子供時代の僕はミクラミヤマクワガタをできるだけ空に飛ばしてやれるように飛ぶ技を中心にわざカードをセットしてずっと使っていた。

 

 

アホな話だな、想像力豊かなガキはろくなものではない。

 

 

いまこの記事を書きながらそう思った。

ただ今でもミクラミヤマクワガタは好きです。