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【今は昔】転生!かぐや姫【竹取の翁ありけり】 作者:七師

第1章「天照」

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肆拾参.空を自由に飛びたいな

 俺はそのままふわりと浮き上がった。羽は物理的に羽ばたいて飛ぶためのものではなく、空を飛ぶための力を概念的に与えるものらしく、羽の向きとは無関係な方向に自由に飛ぶことができる。


 三羽烏(…!!!)


 隣では三羽烏が絶望の色を浮かべて目を丸くしていた。三羽烏は墨とは違って空を飛べたので、たとえ俺の逆鱗に触れたとしてもいざとなれば空に逃げればなんとかなるという微かな希望を持っていたのだが、俺が空を飛んだことでそれも潰えてしまったのだ。しかし、そんなことに俺が気づくはずもない。


 (ん? なんか変か?)


 三羽烏が変な顔をして俺をじっと見つめているので、俺は羽の生え方が変なんだろうかと身体を捩って確認してみたが、特におかしな所は見られなかった。


 (それにしても、この姿は目立つな)


 俺は姿をカラスの姿に変化させてみた。これも八咫烏の羽の効果の1つで、普通のカラスよりも一回り大きな身体になり、足は3本もつ八咫烏の格好に自由に変化することができるのだ。この格好で空を飛んでいけば、普通のカラスとほとんど見分けがつかない。


 俺(じゃー、行くぞー。お前らもついて来いよー)


 …


 …


 空を飛ぶのはなんて気持ちが悪いんだろう…。三半規管が揺さぶられて吐き気がする…。なまじっか八咫烏の羽の力が強すぎて、加速性能が高すぎて、Gがかかりすぎて…。オエップ。


 三羽烏はセンサーの狂った追尾ミサイルのように自然界にはあるまじき速度でランダム飛行する俺を気にして、できるだけ安全距離を保ってついて来た。うっかり体当たりされたら撃墜されてもおかしくないその速度と予測不能なその軌道。それは恐怖という以外の何者でもない。


 (やっと着いた)


 空を飛べば数分で着くはずの俺の家。空の旅はその何倍もの時間にも感じた。というか、実際2倍くらいは時間がかかっていたと思う。3次元ジグザグ飛行で飛んできたので。


 ふらふらしながら庭に着陸して、フラフラする頭でまわりの様子を確認すると、カラスの姿から人の姿に戻った。ばれない内に急いで八咫烏の羽を解除する。


 俺「熊野の神よ、八咫烏よ、その力を鎮めたまえ」


 俺が右手を掲げてそのように唱えると、背中の羽が消えて右手に羽が現れる。これで解除完了だ。


 ほっとして部屋に向かって歩き出したところ、ちょうどその時、ふと向こうの方から廊下を曲って雪が姿を現した。


 (げっ。目が合った)


 雪は驚いた表情でこちらを見つめ、慌てて走り始めた。


 (やばい。やばい。やばいよー)


 俺も自分の部屋に向かって同時に走りだした。雪が乗り込んでくる前に早く式神と交代しないと。警戒して雪が俺の部屋を監視し始めたら、俺が部屋に入れなくなって、お腹が空いているのにご飯が食べられなくなって、雪にも甘えられなくなって、墨を抱き枕に寝ることもできなくなってしまう。


 俺『式神ー! 交代だっ!!!』

私事ですが、先週はノロウイルスに感染して大変な1週間でした。お見舞いの言葉を募集しています :p

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