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【今は昔】転生!かぐや姫【竹取の翁ありけり】 作者:七師

第1章「天照」

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卅捌.構わないでくださいっ

 と、突然後ろから誰かにぶつかられた。


 (おっと)


 と思ったら、腰に穿いていた太刀を器用に抜き取られた。ぶつかってきたのは3人組の男で、最初の2人が左右をすれ違いざまにぶつかってバランスを崩して、気を取られている内に最後の1人が太刀を抜き取るという手口だったらしい。なかなか手馴れているので常習犯なんだろうか。


 とりあえず、俺の目からはあまりにも遅すぎる3人組の動きに苦笑しながら、太刀を引っこ抜いた最後の男の太刀を持っている手とは反対の手首を後ろから掴んでみた。一気に駆け抜けようとしていた男の体は、不意に上半身が停止したためバランスを崩してすっ転んだ。


 ドサッ


 チンピラ「イテッ」


 残りの2人のチンピラは思わぬ反撃に俺を左右から挟みこむように距離を取ってガンを飛ばしてくる。


 (なんかどの時代でもおんなじような奴はいるんだな)


 現代でこんなのに絡まれたら、小さくなって愛想笑いをしながら頭を下げてやり過ごすところだが、天照からもらったチート能力のもとでは彼我の力の差にむしろ相手のほうが可哀想に思えてくる。


 すっ転んだチンピラが立ち上がろうとするが、すんなり立ち上がらせるのも癪だし、太刀を返して欲しいしで、天照の悪辣なテクニックを真似して手首をつかむ手に力を込めてみる。


 チンピラ「いっ、いた、痛い痛い、あ゛ー、やめ、や、たす、たすけて、い゛、あ゛、痛い、ぎゃー」


 (あ、泡吹いて気絶した)


 腱の2、3本は切れたかも知れないが骨は多分大丈夫な手首を解放して、俺はチンピラから太刀を回収した。残りの2人は武器を持った俺に恐れをなしたのか、物も言わずに一目散に逃げていった。


 オォー


 なんか、周りから歓声があがる。どうもさっきの立ち回りは見世物になっていたらしく、いつの間にか人だかりができている。恥ずかしくなった俺は足早にその小路を後にした。


 相変わらず周囲から白い目で見られながらも、俺は引き続きあちこちを探索していた。特に庶民の家がどうなっているのか興味があったので、人目は気になるもののそういう区画を回って観察を続けた。


 庶民は1/32町を貰えるといっても、それを1人で使うわけではなく、大家族で使ったり何世帯も同居したりしているので、1人あたりの床面積は意外に現代日本とそれほど大きく変わるわけではない。ただ、2階建ての建物は皆無なので土地の面積で言うとずっとゆったりと使っている印象だった。


 ところで、歩いている内に気づいたのだが、平安京は左右対称になっていない。それどころか四角形でもない。いや、道路はちゃんと四角形で左右対称に作られているのだが、実際に人が住んでいるのは左京北側に偏っていて、四隅の内北東以外には人が住んでいないし、右京は道路沿いに家が立ち並ぶだけでちょっと奥に行くと田畑になっている。


 (そして、左京北側の区画が高級住宅地で貴族街ということか)


 平安京をぐるっと一周して再び貴族街に戻ってきた俺は、ふらふらと貴族の屋敷を眺めて歩いていた。


 「おいっ。道を空けろっ!!」


 突然声をかけられて振り返ると、豪華絢爛な牛車にお供の人たちをたくさん引き連れたご一行様が道をいっぱいに占領して、こっちに向かってきている。その先頭の露払いらしい人が、さっき俺を怒鳴りつけたようだ。理由は分からないがプンスカと怒っている。


 俺「空けろって言ってもこれ以上空けられないですよ」

 露払い「口答えするかっ!」


 そんなことを言っても、俺はすでに道の端っこに立っていて、これ以上下がったら側溝に落ちてしまう。そんな無理難題を言われても困っちゃうなー。

平安京の人口は10万から20万人と推定されていて、そこから計算すると庶民の居住区の一人あたりの土地面積は50平方メートルくらいと推定されます。

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