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《櫻井ジャーナル》

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2012.03.11
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 1年前の3月11日、三陸沖で発生した巨大地震が東北地方を襲った。揺れと津波で甚大な被害をもたらしたが、その際、東電福島第一原発は「過酷事故」を引き起こし、日本だけでなく全世界に放射性物質を撒き散らしている。

 日本ではチェルノブイリ原発の事故より規模ははるかに小さいという宣伝がなされているが、潜在的な要因を含めれば福島第一原発の事故の方が深刻だろう。いや、すでにチェルノブイリ原発事故よりも放出した放射性物質は多いという説もある。

 事故を起こした施設を処理するまで何十年を必要とするのかわからないが、人間を含む生態系への悪影響はそのころから本格化するのだろう。チェルノブイリ原発の事故では避難対象になったような汚染地域にも福島第一原発事故のケースでは人が住んでいるようなので、深刻な事態が予想されている。

 昨年の原発事故が日本列島の生態系に大きなダメージを与えつつあることは間違いないが、信じがたい幸運に恵まれたことも事実。当初、風が太平洋側に吹いていたため、日本人の立場からすれば放出された放射性物質の大半が太平洋へ流れて助かったこと、原子炉の内部で水蒸気爆発や水素爆発が起こらなかったこと、定期点検中だった4号機で行われていた炉内の大型構造物の取り替え工事でミスがあったおかげで使用済み核燃料プールの水がなくならなかったことなどだ。

 アメリカの当局は4号機のプールから水がなくなっていると判断していたようだが、この工事ミスがなければ、つまり予定通りに工事が進んでいたならプールの水は蒸発して燃料棒は露出、大量の放射線と放射性物質を放出することになり、首都圏も全滅していた可能性がある。プール内の燃料棒が水に浸かり続けていたのかどうかは不明だが、ともかく予定外の水が存在していたことで東日本の人びとは奇跡的に助かった。

 ところが、日本政府が幸運に感謝しているようには見えない。例えば昨年9月、フジテレビの「新報道2001」に出演した内閣府特命担当大臣の細野豪志は次のように語ったようである。

「最終的には4号機のプールはずっと水があってですね、干上がってなかったんですね。ですから、そこは日本の認識のほうが正しかった。」

 つまり、「4号機プールは危ないんじゃないかというふうにアメリカは言ってくれた」のだが、この認識は間違っていたと言いたいようだ。細野はプールが干上がる場合を「万万が一」と言っているのだが、工事ミスがなければ干上がるのが必然であり、首都圏を含む東日本が全滅していた可能性が高かった。もし、予定外の水を計算に入れていたのならば、そのように説明するべきだった。

 細野に限らず、日本では閣僚も官僚も東電の経営者たちも嘘をつき続け、その嘘を嘘と承知でマスコミは垂れ流し、その嘘を受け入れている国民が存在する。そうした嘘を広める報道も多い。少なからぬ日本人は嘘で築き上げた妄想の世界に生きているのだ。

 昨年3月11日の前から、電力会社が事故を隠すことはわかっていた。例えば、1973年3月に関西電力美浜原発1号機で起こった燃料棒の折損事故が発覚したのは事故の4年近く後であり、日本原子力発電敦賀原発で1981年1月に起こった冷却水漏れ事故がばれたのは4月になってから、また3月の放射性廃液流出事故も隠されていた。1999年6月には北陸電力志賀原発1号機では誤って制御棒が3本引き抜かれ、15分にわたって臨界になるという事故があったが、この事故が明るみに出たのは2007年3月だ。明らかになっていない事故があるかもしれない。

 1995年12月には動燃(現在は日本原子力研究開発機構)の高速増殖炉「もんじゅ」でも事故隠しがあった。出力上昇の試験中に温度計が折れ、そこからナトリウムが漏れるという事故が発生、動燃は事故直後に現場をビデオ撮影しているのだが、このビデオは公開されず、12時間後に撮影されたビデオを編集した映像が公開されたのである。この件で調査を担当した、つまり事実関係を最も詳しく知っているはずの西村成生総務部次長は翌年の1月13日、ホテルの駐車で遺体となって発見された。

 要するに「原子力ムラ」のメンバーは嘘をつくのである。情報を公開する意志はない。そんなことはマスコミも承知しているはずで、原子力ムラの情報を垂れ流す意味も十分に理解しているはずだ。つまり、情報を垂れ流した時点で「共犯」ということになる。

 福島第一原発の事故後、原子力ムラの住民、その中にはマスコミ社員も含まれているわけだが、そうした人びとが突然、正直になったはずはない。今でも嘘をつき続けている。せいぜい、「アリバイ工作」的な報道を目立たないようにするだけのことだ。

 勿論、マスコミは原子力の分野だけで嘘をついているわけでもない。例えば、中東/北アフリカの状況、アメリカなどで展開されている公平なシステムを求める抗議活動、ギリシャなどでの債務問題、沖縄の基地問題等々では米英の支配層にとって都合の悪い話は伝えず、嘘をついている。日本の経済問題でも支配層のプロパガンダ機関として機能してきた。

 福島第一原発の事故から1年、日本のマスコミを信頼する人は大幅に減少しただろう。もっとも、報道の問題に多少でも興味がある人には「昔からわかっている」と言われそうだが。






最終更新日  2012.03.11 20:40:44


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