挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
ブックマーク登録する場合はログインしてください。
【今は昔】転生!かぐや姫【竹取の翁ありけり】 作者:七師

第1章「天照」

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました
35/362

卅伍.精神攻撃は基本

 (なんていう精神攻撃だ…)


 式神の助手としての働きは正確で、湯煎で溶かした蝋が冷えて固まることなく、湯が蒸発して少なくなることもなく、極めて順調に法具作成のプロセスは進んでいた。ただ一点、俺の精神的疲労を除いては。


 式神は暑い暑いと文句を言いながら、ワンピースの裾をまくり上げてパタパタとあおぐ。その度に白い太ももが顕になり、その奥まで見えそうになる。ただでさえ式神は俺と同じで魅力値が振り切っているのに、そんな扇情的な格好をされるとこっちがおかしくなりそうだ。


 (汗が気持ち悪い)


 俺は全身汗だくになりながら呪文を唱え続けた。この汗はただ蒸し暑いというだけではないことは確かだが、口も手もふさがれた俺にはそれを解決するすべはない。見ると式神も汗をびっしょりかいていて、ワンピースが肌にぴったりと貼りついている。


 俺は極力早口になるように努力した。目をつぶってしまえば式神を見なくてもよくなるが、カラスの羽も見えなくなるので蝋を確実にかけられなくなる。だから、できるかぎり急いで終わらせるより他に逃れようがない。


 ごくっ、ごくっ。


 精神を集中して呪文を唱えていると、本能が刺激される音が聞こえてきた。汗のかき過ぎで喉が渇いた式神が、桶の水を柄杓で汲んで飲み始めたのだ。


 式神『プハー。あぢー』


 俺も喉から手が出るほど水が飲みたいが、当然呪文を唱えながらでは水を飲めるわけがない。手がふさがっているから自分で柄杓も持てないし、式神に水をくれとお願いすることもできない。


 (ああ、頼むから早く終わってくれ)


 ようやく呪文の終わりが見え始めたところで式神が口を開いた。


 式神『ねえ。これってさ、羽を上から吊るしておけば、一人で蝋をかけながら水も継ぎ足せたんじゃない?』

 俺『$&※×%○…』

 式神『竹姫ちゃんもうっかりだよねー。まあ、私としてはー、竹姫ちゃんのかわいい顔が見れたから満足なんだけどー』


 (しまった。それで十分だったじゃん。ていうか、墨に羽を持たせておけばよかったんだ…)


 後の祭りである。


 式神『あー、もしかしてー、竹姫ちゃん、私に会いたくてこんな回りくどいことをしたのかなー』


 (くそー。反論できねー)


 式神のやつ、口調もだんだん調子にのってきた。俺は相変わらず手も口も出ない。相変わらず水を注ぐ方は完璧なのでそっちの方面については文句はないのだが。


 式神『あー、あづい、あづいなー』


 パタパタ


 (なんか、わざと見えるようにやっているのじゃないかという気がしてきた。早く終われー。終わってくれー)


 俺『…%×$○$』


 永遠に続くかと思われた呪文もようやく唱え終わって、最後の1匙の蝋を羽にかけた。


 (終わった…)


 すると最後の蝋がかけられた部分から羽が光を放ち始めた。

前回の後書きの続きです。


熊野権現というのは熊野の三山の神様のことで、天照を生んだイザナギ、その妻のイザナミ、そして天照の弟のスサノオが主神ということになっています。八咫烏はこの中でも特にスサノオの使いということのようです。


平安時代には熊野は浄土信仰と結びついて頻繁に熊野詣が行われるようになりました。熊野は浄土または浄土に近い場所であるという認識が広まったのです。しかし、それは摂関政治が衰退して院政が発展してきてからのことで、小説の舞台の時代ではまだ熊野詣はそれほどポピュラーなものではありませんでした。

  • ブックマークに追加
ブックマーク登録する場合はログインしてください。
ポイントを入れて作者を応援しましょう!
評価をするにはログインしてください。
この小説は、一定の条件の下、改変、再配布自由です。詳しくはこちらをお読みください。

作者のサイトをチェック

― 感想を書く ―

1項目の入力から送信できます。
感想を書く際の禁止事項をご確認ください。

※誤字脱字の報告は誤字報告機能をご利用ください。
誤字報告機能は、本文、または後書き下にございます。
詳しくはマニュアルをご確認ください。

名前:


▼良い点
▼気になる点
▼一言
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。