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【今は昔】転生!かぐや姫【竹取の翁ありけり】 作者:七師

第1章「天照」

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卅壱.白くて熱くてすぐに固まるんです

 (天照と俺の関係は決定した感じだな)


 雪が着付けをしてくれているので、俺はその間考え事をしていた。主に昨晩のことについて。


 (妹キャラかと思ったんだけどなー)


 結局最後の最後で、わがままご主人様とそれに振り回される下僕という立ち位置が決まってしまった感じがする。


 (自分から「天照様」って言っちゃったしな)


 完全に心が折れていたあの瞬間に使い魔契約とかされたら、契約が成立してたかもしれない。まあ、下僕と使い魔とどう違うのかと言われると実質大差ない気もするけど。


 えっ? 下僕になるのが夢だったんじゃないかって? あれはお話で妄想で2次元なわけで、現実に下僕になりたいと思ってるわけないじゃないか! ま、まあ、相手によっては考えなくもないけど…。


 雪「終わりました」

 俺「うぉ、あ、ありがとう」


 (危ない、危ない。変な考え事をしてたらキョドってしまった)


 俺「ねぇ、雪。お願いがあるんだけど」

 雪「はい。なんでございますか?」

 俺「ちょっと、用意して欲しいものがあって。ろうそくを10本と幅5寸の鍋と幅10寸の鍋にスプーンを1本、それに火桶ひおけを持ってきて火を起こしてくれる?」

 雪「火桶ですか? もう夏なので少し時間がかかるかもしれませんけど」

 俺「時間がかかっても構わないわ。あと、桶に水を張って柄杓と一緒に持ってきて」

 雪「分かりました」


 俺の妙なお願いを文句も言わずに引き受けてくれる。なんてできた女子おなごだろう! 雪は、俺のお願いを何か重要なことだと思ったらしく、神妙に返事をすると表情を引き締めて部屋から出ていった。


 さて、今日の予定である。本当は天照を満足させられるようなネタを探しに外に出かけたいのだが、生憎の雨だから仕方ない。そこで、前から1つやってみたいと思っていた法具づくりに挑戦してみることにしたのだ。


 法具というのは魔法を使う時に使う道具のことだ。広い意味では魔法で作った薬のような消耗品も法具だが、普通、法具という時は繰り返し使えるものを指す、と天照の本に書いてあった。例の木箱や紙に変わる服、小さくなる本も法具である。


 午後になって、雪は準備ができたらしく、頼んでいたものを部屋に持ち込んできた。火桶や水を張った桶なんかは重そうなので手伝おうとするのだが、雪に丁重に断られてしまう。


 雪「竹姫さまは貴い方ですから、このような仕事をなさってはいけません」


 そう言われてしまうと雪の気持ちを無下にはできないので、直接手伝わないで重量を軽くするおまじないを聞こえないように口の中で唱えることにした。これは唱えている間だけ対象物の重さを2割軽くすることができるという便利魔法だ。引越しでもしないと使い道がないと思っていたけど、意外なところで使えるものだ。


 俺「じゃあ、これから夕方まで、誰も入らないようにお願いできるかしら?」

 雪「分かりました。任せてください」


 雪が火桶に火を起こしたのを見届けて、雪に人払いをお願いした。理由はよくわからないが、雪はなんだか張り切っている。


 (さて、ここからが問題なんだよな)


 部屋に置かれたろうそくの束、火桶、鍋2つ、スプーン、水を張った桶、柄杓を使って何をするのか、勘のいい人ならもう気づいているかと思うが、蝋を湯煎にして溶かそうというのだ。その溶けた蝋を、昨日採取したカラスの羽にかけながら呪文を唱えることで、ある法具ができあがる。


 ただ、問題は、その呪文がどんなに早口で唱えても1時間はかかるということなのだ。湯煎のお湯が蒸発してなくなるって。

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1寸は約3センチメートルなので、幅5寸の鍋は幅15センチメートルの鍋で、10寸は30センチメートルです。なお、土の鍋は人類が火を使い始めた頃から使われていましたが、鉄の鍋は平安時代から登場して使われるようになったらしいです。蝋を湯煎にする用途なので、ここで使っているのは鉄の鍋ということで。


ろうそくは奈良時代に中国から伝わったそうです。当初は輸入品で超高級品だったのですが、平安時代には松ヤニからろうそくが作られるようになってもう少し広く使われるようになったようです。といっても依然として高級品ではありましたが。

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