1. 菜種油の基本情報
菜種油は現在、日本での供給量No.1の植物油であり、世界でもパーム油・大豆油に次いで第3位の消費量を誇るまさに植物油の代表格とも言うべき油です。
菜種油単体としても販売はされていますが、ブレンドが主なのでサラダ油と言えば菜種油が多少なりとも含有されていると思ってもらっても間違いでは無いというくらいサラダ油として広く普及しています。
アブラナ科/菜種の種子を搾って抽出するのが菜種油ですが、日本はその殆どの原材料を輸入によって賄っています。最近は菜種油糧種子の9割をカナダから輸入しています。
油糧種子としての菜種の最大の生産国はカナダであり、次いで中国、インドと続いていきます。日本は約240万トンを輸入する中国に次いで第2位の菜種油原料の輸入国なのです。※2001年時点では1位の生産国は中国でありカナダは2位でした。
※カナダは2001年からこの15年でなんと3倍の生産量となりました。
ちなみに、日本おける菜種油糧は1970年時点ではわずか約40万トンの輸入量だったのですが、1980年には約100万トンに、1990年には約180万トンになるなど日本のサラダ油の消費量とともに輸入量も増加していきました。
その後も徐々に増加を続け、一旦2002年頃には落ち着きをみせるかと思ったのですが、中国の経済力が上がり、大豆の価格が高騰するにつれまた菜種油糧の輸入量が増え、現在の約240万トンに至るという状況になっています。
菜種油の紹介をする前に、一つだけお伝えしておかなければいけない事があります。それは、菜種の種類についてです。現在、日本で大量に使われているのは1970年代後半に、カナダの研究者たちが菜種の毒性部分を減らすのに成功した品種改良のキャノーラ種です。日本の菜種の自給率は1970年初頭までは100%でしたが、現在では0.1%以下にまで減少しています。
油には遺伝子組み換え食品の表示義務はありませんが、日本が輸入の許可を出している遺伝子組み換え作物の中で、植物油の原料となっているものは「大豆・菜種・とうもろこし・わた(綿実)」です。なので、これは遺伝子組み換えの菜種が使用されていると思ってほぼ間違いないでしょう。
ただし、本来の菜種(セイヨウアブラナ)から搾油した油には種類によってはエルカ酸/(C:22/1)を40%~50%、最大55%含む場合があり、(※エルカ酸については下のうんちくコーナーで)それを品種改良して1%以下に抑えたのがキャノーラ種という事になるのです。
なので、菜種油=キャノーラ油という訳ではなく、菜種油の種類の一つがキャノーラ油だと覚えておいてもらえたらと思います。また、菜種油の種類によってはエルカ酸を5%以下に抑えているものもありますが、その場合、今度はリノール酸が多く含まれるようになり、それはそれで心配がつきない油になってしまうという何ともやっかいな油なのです。
2. 菜種油の年間供給量
菜種油の供給量:1,085,931トン(日本の植物油では1位の供給量)
2015年 農林水産省「油糧生産実績調査」 財務省「通関統計」
国内生産量が1,073,881トン、菜種油としての輸入量はわずか12,000トン。
2位のパーム油とは2倍近い差があり、まさに日本の植物油の王様と言えるでしょう。
参照:2015年 農林水産省「油糧生産実績調査」 財務省「通関統計」
3. 菜種油の含有脂肪酸
参考:日本油脂検査協会
菜種油(キャノーラ種)はオレイン酸/約57%、リノール酸/23%とオリーブオイルと似た脂肪酸構成になっています。
※ものによってはもっとオレイン酸の含有量が多いものもあります。
※在来の菜種(セイヨウアブラナ)はこの脂肪酸構成がまったくと言っていいほど異なります。(詳しくはうんちくコーナーにて)
4. 菜種油の精製方法
原材料に由来の名称 | 精製しない油 (浮遊物除去のみ) |
精製油 (脱酸・脱臭・脱色) |
サラダ油 (脱ワックス) |
---|---|---|---|
大豆油 | – | 精製大豆油 | 大豆サラダ油 |
なたね油(キャノーラ油) | 赤水 | 精製なたね油 | なたねサラダ油 |
ごま油 | ごま油(焙煎) | 精製ごま油 | ごまサラダ油 |
オリーブオイル | バージンオリーブオイル | 精製オリーブオイル | – |
こめ油 | – | 精製こめ油 | こめサラダ油 |
調合油(2つ以上の油を混合) | – | – | 調合サラダ油 |
菜種油は低温圧搾法、高温圧搾法、溶剤抽出法等で搾油します。
菜種の油分は35~40%と多いのですが、採算性を重視しているので多くは溶剤抽出法が使われます。ただ、低温圧搾法・一番搾りのプレミアム菜種油も少ないですが存在しています。中でも、精製をほぼせずに浮遊物除去のみの油は赤水と呼ばれていますが、その名の通り本当に赤い油です。
本来、菜種から搾油するとその色は赤いと思ってください。それを精製加工して色や匂いを除去していき私達の知っている薄い黄色~透明に近いような菜種油となります。
その最中では化学溶剤を使用して大量に精製しているものも多く存在しますので、そこには注意が必要です。※油が抽出された後は家畜の飼料として使用されていきます。
5. 菜種油のうんちく
元々の在来種菜種(セイヨウアブラナ)から搾油した油には種類によってはエルカ酸/(C:22/1)を最大40~50%含むものでした。では、そのエルカ酸には何か問題があるのでしょうか?
上記が脂肪酸の種類なのですが、脂肪酸の分類解説の記事でも書いているように、脂肪酸は飽和脂肪酸や不飽和脂肪酸という分類だけではなく、さらにその中でも幾つかの種類に分かれています。※炭素原子数(横の座席が)と二重結合数(何回分断されているか)というイメージでOKです。
参考記事油の種類で変わる脂肪酸って何?飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の違いは?脂肪酸の分類解説
エルカ酸は一価不飽和脂肪酸/22座席が1~11と12~22の間で一回分断されている机のイメージですであり、他の油にはあまり含まれないどちらかというと珍しい脂肪酸です。
そのエルカ酸は1955年にカナダの研究所で「エルカ酸を含むナタネ油をオスのラットに与えると、心臓に壊死(えし)の発生する」という論文が発表され、それ以後エルカ酸と心臓への毒性についての因果関係は各国に広まっていきました。
ただ、その実験は犬、豚、猿なども行われたらしいのですが、そこでは壊死の報告はありません。また、菜種油をよく食べるフランスや、エルカ酸含有量の高いマスタード油を常食とするインドにて心臓障害で亡くなった人を解剖して調べたらしいのですが(1970年代)、フランス269体、インド100体の中に一例も心臓壊死の例はなかったそうです。
その結果、品種改良された菜種(キャノーラ種)は上記の「脂肪酸構成図」にも記したようにオレイン酸が約60%とほぼオリーブオイ】のような脂肪酸構成を持つ、大量生産が可能な油糧種子となりました。
大豆油を広げるために、動物性油やココナッツオイルに多く含まれる飽和脂肪酸のネガティブキャンペーンがアメリカで行われ、その波が日本にも普及し学校給食にバターではなくマーガリンが出続けていたように(植物油の健康イメージを植え付けられていたように)、菜種油も莫大な研究費を投入して、収穫量を増やす事を可能にした遺伝子組み換え菜種油を広めるために、伝統的な菜種油のネガティブキャンペーンをした結果の現在の状況なのでは?という疑念はついて回りますね。
その結果、菜種油は世界でパーム油・大豆油に次ぐ3番目に消費量の多い油へ成長していきました。本当にスケールの大きなビジネスですよね。
菜種油の栄養素や効能、選び方とオススメ商品について知りたい方は、ぜひこちらの記事も合わせてチェックしてみてください。