ブログ管理者のP.Hです!
Raspberry Piは販売台数が3000万台を突破しています。多機能かつ低価格なのが売れている理由だと思いますが、Raspberry Piを組み込んで販売する時には品質上の考慮しないといけない部分が多々あります。今回は産業用途等で組み込んで販売する場合に、どんなことに注意する必要があるか、またどうすれば産業用途で使用することができるか、について考えてみたいと思います。
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- Raspberry Piの種類(ハードウェア)
- 産業用途のCompute Module
- 教育用途のRaspberry Pi *B、zero
- Raspberry Piを組み込んで産業用途で使用する
- OSのクラッシュ問題について
Raspberry Piの種類(ハードウェア)
Raspberry Piには種類がいくつかあり、教育用途のものと産業用途のものがあります。
- 教育用途 : Raspberry Pi 2B、3B、4B、zero
- 産業用途 : Raspberry Pi Compute Module
産業用途のCompute Module
Compute Moduleは産業用途向けですが、GPIO、USB、LAN等の機能を使うためには自分で周辺回路を設計し、電気基板を作る必要があります。Compute Module単体では何もできません。そのため、産業用途で使用するためには、自分で設計した周辺回路とともに品質の評価を行い、テストをPassしないと自信を持って販売することは難しいでしょう。
教育用途のRaspberry Pi *B、zero
教育用途のRaspberry Piを産業用途で使用するには、品質上の信頼性が確保されていないので、そのまま組み込んで使用するとリスクが大きいです。以下のような懸念事項が考えられます。
電源が不安定
Raspberry Piの電源が不安定という問題は有名ですね。特にUSBを使うときは注意が必要です。通常は問題なく、過負荷時(電力消費が大きい時)のみ問題が発生するので、問題解決に時間がかかる場合があります。毎回必ず発生してくれる問題は原因がわかりやすいですが、稀に現象が発生する問題は解決まで時間がかかってしまう場合があります。
GPIOピンのノイズ耐性が低い
Raspberry PiのGPIOは、ノイズ耐性が低いため、稀に予期せぬ動作をします。これも現象の発生頻度が低い場合が多く、問題解決に時間がかかる場合が多いです。また、対処法も技術的に難しくなります。
そもそも教育用途
もし何か問題が発生し、"Raspberry Piって教育用途ですよね?品質上問題あるんじゃないですか?"と品質について言及されたときに何も根拠のある回答ができません。設計上の問題を指摘されて、責任を追及されるかもしれません。
Raspberry Piを組み込んで産業用途で使用する
それでは、どうすればRaspberry Piを産業用途で使用できるか考えてみます。
- Compute Module用の周辺回路を設計し、品質も自ら保証する
- Compute Moduleを使用した評価済みの製品を購入する
- 顧客と相談して、通常のRaspberry Piで了承を得る
Compute Moduleを使用し、周辺回路を設計する
これを出来る企業であれば、この方法で良いと思います。用途によって専用カスタマイズができますし、大量に生産すればスケールメリットで価格も安くできます。ただ、設計~評価、生産までこぎつけるには、かなりの時間を要すると思います。
Compute Moduleを使用した、評価済みの製品を購入する
私はこの方法をお勧めします。下記のRevolution Piという製品は、以下のような仕様になっています。PLC(シーケンサー)レベルの品質の規格試験をPassしていますし、OSがRaspbianなので、Raspberry Piと同じように使うことができます。
- EN61131-2規格を取得済み
- EMC試験も実施済み
- 動作温度-40℃~55℃
- 産業用途で使用することができます。
- OSはRaspbianなので、Raspberry Piと同じように使える ※EN61131-2とは・・・産業プロセス測定および制御に使用する「PLC 及び関連周辺機器」の「要求事項及び試験」に関するIEC規格
下記のAmazonから購入できます。多少値段は上がりますが、これで品質が確保できると思えば安いものです(自分でこの品質を確保しようとすれば、時間も費用もとんでもなくかかります)。
顧客と相談して了承を得る
これも有効な方法だと思います。Raspberry Piは産業用ではないということを説明して、顧客が了承済みであれば、何も問題はありません。以下の条件であれば、かなり安心できると思います。
- GPIOは使わない
- USBを使用する場合は、セルフパワーのUSBデバイスを使用する
- LANは使っても問題ない
OSのクラッシュ問題について
Raspberry Piは基本的にRaspbianというOSをインストールして動作をさせています。OSが何か重要なデータを書き込み中に電源を遮断してしまう(いきなり停電等)と、OSが起動しなくなる場合があります。Windowsで経験したことがある人も多いと思います。この問題についても考慮が必要です。下記の2つの対策が考えられます。
- OSをRead Only設定にして、書き込みできないようにする
- シャットダウンボタンを付けて、終了処理(シャットダウン)後に電源をOFFにしてもらう
OSをRead Only設定にする
下記のページの通りにコマンドを実行すると、OSをRead Only設定にすることができます。書き込みをしないのでOSクラッシュの心配はありません。ただ、書き込みができないのでログ出力等をしたい場合は、設定を変更する等の対応が必要です。
GitHub - josepsanzcamp/root-ro: Read-only Root-FS with overlayfs for Raspian
シャットダウンボタンを付ける
Windowsと同じようにシャットダウン処理をした後に、電源をOFFにしてもらえれば、何も心配はありません。停電等が心配であれば、UPS(無停電電源)を付ければ対処できます。シャットダウンさせる方法はいろいろとあります。
- GPIOでスイッチの状態を読む ⇒ スイッチが押されたらシャットダウン
- タッチパネルで画面表示できるなら、画面上にシャットダウンボタンを作り、ボタンタップでシャットダウンするようにする
- 特定のUSBデバイスを挿入するとシャットダウンする
他にも考えれば、リモートでシャットダウンさせる等、いろいろとあると思います。
Raspberry Piを組み込んで販売する、産業用途で使用する場合の注意点について説明をしました。 教育用途は家で使う時には、考えなくてもよくとても便利なRaspberry Piですが、組み込んで販売するとなると検討事項がいくつかあります。参考にして頂ければと思います。