FPSキーワード探究 第二回 「FPS」

第二回は名称が被ってややこしいが「FPS」について。これは“Frames Per Second”の略で
日本ではフレームレートと呼称される事が多い。First Person Shooterと略語が一緒なので
今回のフレームレートの方を小文字で書いて解り易い様にしたりもするが、一般的には
大文字で記すので今回もそうする。なおゲームにおいてフレームレートの話をする際に
その意味は大別して二つに分けられるが、それは順に追っていく事にする。

 

基礎編。最初に基礎的な事を書くので、既にある程度知識のある方は飛ばして構わない。
通常「フレームレート」と言った時、それは描画コマ数の事を意味している(第一の意味)。
秒間のコマ数でそれを表し、30FPSであれば一秒間に30コマで描画するという意味になる。
ゲーム内の世界は現実世界の様に時間が途切れなく連続している訳では無いので、
細かく刻まれた各瞬間を連続させてパラパラ漫画の様にして連続した世界に
見せているのである。

このFPSはゲームによって、処理負荷に応じて動的に変化させるタイプ(可変)と、
一定値に固定(ロック)する物が在る。また可変の場合でも上限が設けられている際には
キャップと呼ぶのが一般的。「60FPSキャップ」なら上限値が60と言う意味。
ゲームをプレイ中にFPSの値を出すには、何等かの外部ツールを使うのが普通で
そのゲーム自体が機能を備えているケースもあるが稀である。代表的なのがFraps
スクリーンショットを撮影するツールとして有名だが、FPSの表示機能も備えている。
基本機能のみの使用ならば無料。後は最近Steamにもその機能が加わった。

このFPSと密接な関係を持つのが、それを映すモニター側のリフレッシュレートになる。
リフレッシュレートとはモニターが一秒間に何回画面を書き換えるかで、60Hzならば
60回書き換えるの意味である。これは画面の上から下へと書き換えていく形で
行われるが、通常人間には順に書き換わっていく様は検知出来ない。
リフレッシュレートはいろいろと変更出来るモニタもあるがこの60Hzが最も一般的な値で、
これよりも低いモニターはPC用途ではまずない。なお60Hzという値はCRTモニター時代に
これよりも低いとチラつきが感じられたり眼精疲労が発生したりで目に良くないという
調査基準から来ている。

このモニター側のリフレッシュレートはハードウェア的な処理なので常に一定である。
一方でゲーム側のFPSは可変ならば常に変動している事になる。するとモニターが
正確に1/60秒間に一度(60Hz)画面書き換えを行っている最中に、ゲーム側が処理した
次のコマが出来てしまうケースがある。この時にどう処理するかの設定が必要で
その設定を垂直同期(V-Sync)と呼ぶ。この設定はゲームの中の設定画面か
無いならビデオカードのドライバ側から強制的に指定したりも出来る。

V-Syncがオンの場合、モニター側の描き換えタイミングが優先され、次のコマが
完成していても待ち状態となり、モニター側の次の描き換え時にそれが反映される。
V-Syncがオフの場合、これは同期を取らないの意味となり、モニター側が画面の
上から下へとあるコマを描いている途中でも、新しいコマが来たら即座にそれを
途中から新しく描き込んでしまうという意味になる。

両者にはそれぞれ利点と欠点が在り、まずV-Syncがオフと言うのは新しいコマが来たら
途中からそのコマに切り替えてしまう事になるので、これが人間の目に検知されてしまう
ケースが出て来る。特に描画の変化が激しい際に顕著で、異なるコマの境目に
分断状態が発生する事からテアリングと呼ばれる(wikiの参考画像)。
原理上リフレッシュレートが60Hz設定の際に、FPSが60を上回る状況だと発生し易いが
60よりも低い場合には発生しなくなる。

一方でV-Syncがオンの場合、モニター側が一つのコマを書き終えるまで更新しないので
テアリングは発生しない。だがモニター側のタイミングを待つ事から遅延が生じてしまう。
例えばあるコマを描き終わったが次のコマが来ない場合、モニター側では再度直前の
コマを描くが、それを描き始めた瞬間に次のコマが到着しても現在の書き込みが
終わるまではそれを更新しない。結果として描画更新に遅れが生じる。
これが頻発すると描画にカク付き(Stutter)が発生し滑らかではない見た目になる。
(瞬間的にコマが止まった様に見える状態が不定期に断続発生する)。
こちらはリフレッシュレートが60Hz設定の際に、FPSが60を下回る状況だと発生し易いが
常時60を超えているなら発生はしなくなる。

ベンチマークを計測する際にはV-Syncはオフでないとならない。V-Syncがオンの場合、
モニター側の描き込みを待つという仕様から、リフレッシュレートよりもFPSは上がらない。
(60HzならばFPSは60を超えない)。よってPC側の純粋な性能を測るのならば
オフで計測しないと意味が無い。ベンチマーク専用ソフトであれば自動的にそうなるが
ゲームでコンソールから実行したりする場合には現在の設定がそのまま使われたりも
するので注意が必要だ。

じゃあ「どっちに設定すれば良いのか?」となると、これはケースバイケースである。
FPSを高くするにはオフの方が有利だが、テアリングが発生するケースがある。
その際にテアリングが気になるレベルならばオンにするしかないかもしれない。
逆にオンにしてカク付きが気になるケースではオフにすると解消される可能性がある。
他にはオフの方がインプットのラグに対して有効といった区別もあるのだが、
これはこれでまた複雑な話になるのでここでは割愛。

なおこの設定問題に対してはいろいろと新たなテクノロジーも開発されつつある。
例えばNvidiaの「Adaptive VSync」。上記の説明の通りにFPSの値がリフレッシュレートを
上回っている状態ならV-Syncがオンの方が有利、下回っている際にはオフの方が有利と
いう点から、FPSの値が上下動するゲームにおいて、リフレッシュレートの上か下かで
自動的にオンオフを切り替えるという機能である。これはドライバ側から設定が可能。

更に革命的とも言われる新機能が「G-sync」。これはNvidiaによる自社機能の呼称であり、
同等の機能として業界標準を目指したAdaptive-Syncと呼ばれる物も登場している。
これはモニターのリフレッシュレートをビデオカード側から制御してしまおうという技術で
常に一定だったモニターのリフレッシュレートを可変制御する。ビデオカード側のFPSに
合わせてそれが切り替わる為、原理的にテアリングもカク付きも発生しない
(滑らかに見せるにはある程度のFPSは必要)。
日本では高FPS状態での滑らかな描画を「ヌルヌル」などと表現するが、
これが60より低いFPS値でも実現出来るというメリットもある(下限はあり)。
当然ビデオカード側とモニター側の双方が規格に対応している必要があるので
新規に対応品を購入しないとならず普及はこれからだし、どちらの規格がメジャーに
なるのかは判らないが、長期間ゲーマーを悩ませていた問題が解決されそうな
明るい状況ではある。

 

ここから本題。「FPSの値はどれだけあったら良いのか?」。ここでのFPSの値とは
描画コマ数を示すものとする。FPSの値は自由に指定出来るものではなく、
そこには処理負荷という制限が加わる。これは大きく二段階に分けられ
一つ目の前段階が「ゲーム内世界が現在どういう風になっているか」を確定する処理。
ロジック処理とも呼ばれCPUが担当。それがFPS(一人称)にしろTPS(三人称)にしろ
ゲーム内世界がプレイヤー視点からどういう風に見えているかを決定する処理である。
プレイヤーの現在位置, 敵の位置, 様々なオブジェクトの位置といった場所情報の他、
それに関連する処理内容も含まれる。これが決定した後にビデオカード側にて
それを実際の描画として完成させるから、どんなにビデオカードが速くても
このロジック処理の生成コマ数以上のフレームレートは出せない事になる。

そこに移動可能なのかという衝突判定や銃撃の当たり判定などは軽い方だが、
重めな負荷としては例えばAI処理。次にどういう風にAIが動くのかの計算が遅いと
それが完了するまで新しいコマは生成出来ない。多数のAIを同時に出現させて
尚且つ高度な計算をさせたりすると大きな負荷となる。そして特に負荷が高い物として
知られるのが物理演算関連である。15FPSの精度でやるとか演算精度を決めて
(1秒間に15回現在の対象オブジェクトの位置や状態を更新する)実行するが
爆発時等に計算対象オブジェクトが多かったり、ラグドールの様に多関節オブジェクトで
計算が複雑だったりした場合、計算が間に合わずに数FPSまで落ちたり止まったりが
発生するケースがある。よって演算精度を設定で変えられるゲームも結構ある。
物理演算は高速なCPUが少しよりも、低速のCPUが多数で計算した方が速いという
傾向を持ち、それ故にNvidiaのPhysXの様にビデオカード側のシェーダーユニットに
計算を任せるというシステムもある。いずれにしろFPS低下の原因としては
ビデオカードの方が目立つ存在だが、現在ではCPU側の負荷も相当な物になっている。

第2段階としてビデオカード側で実際の描画を完成させるが、これは解像度であるとか
エフェクトや影描画の設定、アンチエイリアシングやポストプロセッシングの有無とかが
負荷に影響するというのは御存知だろう。設定による影響の詳細は省略するが
描画負荷が高いほど一つのコマを生成するのに時間が掛かるから
FPSが低下するという意味である。

そこでこの処理負荷とFPSを考えた場合、具体的な分岐点となるのが
「30FPS vs 60FPS」という命題である。先に下限の方に触れておくと、
こちらはほぼ20FPSが限界ラインという点で業界の意見は一致している。
20FPSを切った状態でプレイすると大半のプレイヤーが画面のカク付きに気付いて
それを不快に感じるという意味である。FPSの変動をグラフ化出来るツールなどでは
この下限ラインとして20FPSの部分にチェック用に線が引かれていたりも見られる。

では上の方はどうなのか。これは様々なゲーム関連の掲示板でも定期的に論議される
テーマである。映画やTVだと24コマなのでそれだけあれば十分といった意見は
昔から見られるのだが、連続してブラーが掛かっている映像とぶつ切れのコマでは
単純に比較は出来ない。

どんなゲームも簡単に60FPSで作れるなら、それは高い方が良いに決まっている。
アニメーションとして描画が30FPSよりも滑らかになるからだ。だが描画を綺麗にするなら
30FPSの方が有利である。制作会社によって技量は異なるし使用エンジンの性能も
関わってくるが、ある制作チームが作るとした場合、60FPSよりも30FPSにした方が
綺麗に出来るのは間違いない事実。具体的にはキャラクターの描画により凝れるし
高ポリゴンのキャラクターやオブジェクトを多数画面に表示出来る。各種エフェクトの派手さも
30FPSの方が有利となる。

そこで実際にどうなっているのかだが、FPS/TPSのジャンルでここ5年辺りで言うなら、
画像の綺麗さを優先して30FPSを選択するゲームが多いと言える。現在のこのジャンルは
コンソール主導のタイトルがほとんどで、そしてコンソールでは各機種の性能が固定なので
PCに比べるとグラフィックスがどれだけ綺麗なのかが比較対象にされ易い。
(PCでは最高設定にすると綺麗とか、標準程度でも綺麗とか評価の軸が多様)。
そこで見た目に綺麗という30FPSを採るか、滑らか画質という60FPSを採るかになり
前者の方が有利だと判断する開発会社の方が多いという話になる。

それと私自身は新世代機(PS4, Xbox One)の性能について良く知らないが
前世代よりも飛躍的にパワーアップをしているはずではあるが、描画環境が720pから
900pや1080pへと移行しつつある中で、解像度の増加はかなりの描画負荷に繋がるため
新世代機だから楽々60FPSで作れるぞ、という風には行っていないのかもしれない。
またどこかの会社が30FPSで作って「我々が最も綺麗だ」とか宣伝し始めると、
60FPSの滑らかさをアピールするよりも、同じ30FPSで対抗した方が良いとなって
皆が30FPSでの争いに流れ込んでしまうという面はあるだろう。

話を戻してもうちょっと突っ込んで書くと、例えばFPS比較動画なんかも沢山あって
議論の際にそれを見せて「60FPSの方が滑らかだ」という主張をする人は絶えない。
だがここでの論点はそこではなく、30FPSが見た目にどうなのかが問題なのである。
60FPSと30FPSの映像を比較で見せて、60FPSの方が滑らかだと理解したとする。
しかしそれをもって「もう60FPSでなければ我慢出来ないはずだ」となるのかと言うと
それは違う。ブルーレイとDVDの対決でもそうだったが、ブルーレイの方が明らかに
綺麗だと大半が理解していても、実際にDVDからの移行はなかなか進まなかった。
DVDを見ている際にその画質が我慢出来ない位に汚いと感じるのかが肝心であって
そう感じる人が少なかったというのと同じで、30FPSでのアニメーションを
「我慢が出来ない位に滑らかではない」と感じる人がどれだけいるのかという点が
ポイントとなる。

そして実際には30FPSでは滑らかではないと感じる人は、無視出来るレベルで
少数派というのが現実である。そもそも30FPSにしたのはユーザーに綺麗だと思わせるのに
有利だからであって、それを「これは綺麗だけど滑らかじゃないぞ」と気が付く人が
一定数以上居たら30FPSを選択する意味が薄れる。言い換えれば30FPSでは
駄目だと感じる人がそれなりに多いなら、優先して60FPSを維持しようとするメーカーも
増えるはず。ソースが見付からなかったのだが、開発初期から大量のテスターを
使ってプレイテストを繰り返しているValve社が、自分達の意見ではなくテスト結果として
「30FPSでのプレイに滑らかではないという不満を述べるプレイヤーは少数しかいない。
だからなんでコンソール業界が60FPSだと声高に騒いでいるのか理解出来ない。」
といったコメントをしていたが(多分参入当時の2008年頃)、他の制作会社における
プレイテストでも同様の結論が出ていると考えられる。

 

60FPSであるべきだというプレイヤーは実はPCゲーマーの方により多く、コンソール側では
ずっと少なくなる。そこで第一回のFOVでの「PCユーザーにFOVの狭さについて文句をいう
人が多いのに対し、コンソールの方では文句をほとんど聞かないのは何故か?」
と同様に、「なぜコンソールでは30FPSでもOKなのか?」について書いてみよう。

まずはスタンダードなスタイルとして、コンソールでは大画面TVから離れて視ているのに対し
PCではより近い距離から画面を見ているという違いがある。この場合PCゲームにおいては
より高精細な画像を眺めている事になり、その方がアニメーションのブレや遅れに
気が付き易いというのが一つ。

そしてマウスとコントローラーという操作デバイスの違い。なんで操作デバイスがFPSに
関係するのかと思われる方もいるだろうが、実はこれは大きな関連性を持つ。
両者の違いとして、FPS/TPSのどちらにしろ視点移動速度に大きな差があり
個人別の設定差はあるとしても、一般的にはマウスの方がずっと高速である。
ここでは話を簡単にするために、マウスでの視点移動速度がコントローラーよりも
平均して2倍速だと仮定してみる(実際には加速もあるので単純ではない)。
ここで180度水平方向へと視点を移動させるのに、マウスでは0.5秒, コントローラーでは1秒
掛かったとする。マウスでは30FPSならこの間を15コマ、60FPSなら30コマ描画となる。
同様にコントローラーではそれぞれ30コマと60コマになる。この比較で解るように
マウス操作での60FPSとコントローラーの30FPSは同等のコマ数であり
それだけコントローラー操作時のコマ落ち感は少なくなるという理屈。

ゲームの掲示板などで「自分のPCでは30FPS程度しか出せなくて困る」、
「30FPSのロックを外せないのでプレイし辛い」といったコメントに対し
「可能だったらマウスではなくコントローラーでプレイすれば違和感は減るよ」
といった返答がたまに見られるがこの件を指して言っている。

見方を変えると、「マウス感度が高速で」, 「頻繁に視点を高速移動させる」ほど
低FPSでのコマ落ち状態に敏感となり易い。具体的には索敵が重要な対人戦の
マルチプレイがその代表。シングルプレイではそこまで敵のAIに警戒するケースは
少ない為に、30FPSでも比較的問題は起き難いと言える。

 

続いてはフレームレートの持つ第二の意味。ゲーム内世界のシミュレーション精度について。
ここまでは60FPSを捨てるゲームが多いとか、大して重要な要素ではないというような
内容だったが、実際にはFPSの値は非常に大きな影響を持っているという話を始める。

フレームレートは通常描画コマ数の意味で使われる事が多いが、
こちらのシミュレーション精度の意味で使われているケースもある。だがこの意味の方を
意識していない人も多い。ゲーム開発側が話している際には両方の意味で使っていたりと
ハッキリしないケースもあるので、余計に解り難い項目ともなっている。

ゲーム内世界は連続していないコマ割の状態である。それを秒間30枚とか60枚で
計算して連続した世界として見せている訳だが、動いているオブジェクト類の位置情報の
正確さは、当然60FPSで計算している方が精度が高くなる。そして非常に重要な
事項である「操作入力に対するレスポンス速度」の面でも60FPSは優位となる。
世界がどう変化したのかを計算する最小単位時間が短いから、新しい入力データの
処理が速く且つ細かくなるからである。(60FPSでは常に1/60の待ち時間で処理が
行われるという意味では無い。入力遅延はかなり難解な事項なので、ここでは単に
30FPSよりも60FPSの方が入力に対するレスポンスが速いという認識でOK)。

実際に60FPSにしてくれという要望が多いジャンル、或いは制作側が「我々のゲームは
60FPSだ」と宣伝する様な物としては、格闘ゲーム, レースゲーム, 対戦マルチプレイの
FPS/TPSなどが挙げられるが、これらは全て正確なオブジェクトの位置情報の更新と
入力へのレスポンス速度が、特に重要視されているジャンルとなる。
格闘ゲームは相手の動きを見て次の攻撃を読むのが重要だし、自分側の入力も
高速で処理されないとならない(複雑な必殺技コマンドなども)。レースゲームでも
高速移動中のハンドリングやブレーキングのタイミングが正確でないとならないし
対戦マルチプレイのFPS./TPSでは相手の正確な位置情報と、こちら側の攻撃操作への
レスポンス速度が死活問題となるのは言うまでも無い。

ここで実例データとして英語だが以下の実験コラムを採り上げる。
Measuring Responsiveness in Video Games (2008)

簡単にその内容をまとめると、
1.秒間60フレームの連続撮影が可能なデジカメを用意
2.三脚に固定してモニター画面を撮影する状態にする
3.そのフレーム内に自分の持っているコントローラーを入れる
4.この状態でゲームをスタートし、ボタン押しやスティックを倒したりの基本操作を行う
5.連続撮影画像を検証し、操作の完了から実際の反応までのフレーム数を計測

なお使用しているプラズマTVの表示遅延は2/60sなので、反応速度はこれを差し引いた値で
計算している。画像の反応速度が10/60sだった場合、実際の反応速度は8/60sという意味。

結果として各種60FPS動作しているゲームは全て3/60や4/60sといった高速反応で
実際のプレイ感でも操作遅延は感じられない。一方で30FPSの方は6~18/60sと
結構なバラツキがあり、入力へのレスポンスでは明らかに劣るというデータが出ている。
ただしラグを感じさせない様なレベルの物も在って、30FPSでは駄目だという訳では無い。
またゲームのジャンル, シーン, 操作の種類等により、体感的にはいろいろと変化が在る
とも述べている。プログラミングのテクニックにより30FPSでも入力ラグは減らせるので
そこに力を入れる事が重要。しかし普及価格帯の大型液晶モニタTVの遅延速度は
テストで使用した2/60sよりもずっと長いので(2008年の話だが)、それを考えると30FPSは
不利という点は変わらない。

この様にFPSとは単にアニメーションとしての見え方のスムースさというだけではなく
反応速度というゲームの中核な要素に関わっていたりもするので
「他者のプレイ画面(動画)だけ視ていて、30FPSでもなんら違和感が無いのでそれで十分」
という単純な話にはならない。

入力タイミングの正確さに繋がるなら、FPSは60FPSよりももっと高ければ良いのかとなると
人間にとって差が判別出来る範囲内であればそうなる。しかし各人のPCでのFPSが
大きな幅を持つようになると、FPS値による入力タイミングのズレといった問題も発生するため
入力タイミングを重視するならFPSは可変では無く一定値ロック形式の方が良い。
だが例えば120FPSでロックというのは平均性能的にずっと先の話になってしまうだろう。

後は設計段階で想定している範囲内であればという条件も付く。昔のゲームなどは現行PCで
動作させると200,300といったFPSを出したりもするが、これだと操作がままならなかったり
ゲーム内での時間進行がおかしくなったり(高速化等)とトラブルの恐れもある。
こういったケースではVsyncをオンにすればリフレッシュレート以上にはFPSは上がらない為
ゲーム側で設定可能ならばそうして、無いならビデオカードのドライバ側から強制的に
オンにしてみるといった対策を採る。

 

PCゲームにおいて現在起きているFPS上限に関わる問題。次はこれを解説する。
ゲームに対して60FPSを要望する層はある程度の数は存在しているし、また近年では
更に上のFPSを要求される事も増加している(60FPSで固定せず可変で上限無しに)。
これには液晶モニタ側に120Hz以上のリフレッシュレートに対応する物が増えて来た事が
強く影響している。それに合わせてFPSを120まで増加させてシンクすれば
より滑らかになるからである。

そしてその要求は単にゲームを60FPS以上で制作せよではなく、正確には「コンソールは
ハードウェアが単一性能なので30FPSにロックされるのはまあしょうがない。しかしPCは
ハードウェア構成によって遥かに高速化が可能なのだから、PC版ではFPSの値を可変にして
高速マシンを使っているなら60FPS以上でプレイ可能にして欲しい」となる。

その様な対応をちゃんとしてくれるゲームも中には有るが、未対応でユーザー側にて
30FPSのキャップを外す方法や改造プログラムを開発して対応、または方法が
見付からないのでどうしようもない状態にあったりの方が一般的である。

では開発側からするとこの要望はどういう風に映るのだろうか。彼等がFPSの値を
コンソール版が30FPSなら、PC版でもそれにロックしたい理由を挙げてみよう。
第一に社内方針。前にソニー&マイクロソフトから、PC版もコンソール版と同様に
30FPSにロックするようにと指示を受けているといった件を開発者が漏らしたという
騒ぎがあったが(真偽は知らない)、こういうのはこちらでは窺い知る事が出来ない。

第二にソフトウエアとしての最適化問題。60FPS(以上)でも動かせる様にするなら
60FPS動作への最適化等の手間が増える事になり、それが面倒という理由から。
第三にハードウェア的なテストの必要性。60FPS(以上)でも動かせる様にするなら
それなりのテストが必要となってしまう。例えば高負荷による熱暴走系のトラブル等。

更に操作タイミングの問題が加わる。30FPSと60FPSでは見え方が異なるし
入力タイミングも違う。60FPSだとより正確に見えたり、入力も正確になるから
問題無いのではと考えるかもしれないが、実際にはタイミングのズレが生じたりが
発生する危険性がある。例えばQTEなんかは微妙なタイミングを計っているから、
60FPSでのタイミングではむしろ成功が困難になるという可能性あり。
同じく入力タイミングの変化により近接打撃攻撃や刀での斬り付けタイミングが変わって
想定よりも難しくなるとか、敵のアニメーションなども微妙に変わるので動きを見切っての
攻撃タイミングが30FPSの時とは異なるといった事も起きる。つまり60FPSやそれ以上を
見越しての可変FPSを採用すると、プレイテストの面でも全てのFPSでのテストを
実施しないとならず大きな負荷が掛かってしまう。

後は悲しい話になるが、PCゲーマー自身が自分の首を絞めているという側面もある。
仮に30FPSや60FPSのキャップを解除するのは未サポートだが可能としたケースで
その通りに自己責任という形で収まればそうしてくれる所も増えるかも知れない。
ところが未サポートなのに掲示板等で、「重過ぎるけどどうなっているんだ」とか
「操作や動きが変だぞ」とか騒ぎ立てる輩が出て来る。テストはしていないが
要望を受けて解除方法を提示しただけなのに非難されてはたまらない。
同じくキャップを外している事を書かずにサポートに障害として訴えてきたりでは
障害切り分けを行うサポートにも負荷が掛かるから、その様な行為が絶えないなら
どんな手段でも解除を不可能に設定しようとも考え出すだろう。

以上の様に結果的にPC版でも30FPSのロックは外さないし、またそれを解除するような
抜け道も用意したくないという所が増える。PC版の市場が大きければもっと話も
聞いてくれるのだろうが、残念ながらそうはなっていないのが現状である。
PC版の売上比率が比較的高いゲームでもないとなかなか声は届かない。
それにPCゲーマーの中で高FPSにこだわるプレイヤーの割合が多いという訳でもない。
私自身も対戦マルチプレイやレースゲームはほとんどやらなくなったし、
以前に比較するとFPSへのこだわりは薄れている。

 

最後に現実としてFPSの値はどう設定するべきなのか。これはゲームのジャンルや
ゲーム性により、どの程度のFPS値が求められているのかが変わってくるので
一概には言えない。そしてハードウェアの平均性能(コンソールなら現行機の性能)にも
強く影響されるという面も持っている。

例えばゾンビが出現するゲームにおいて、かなりの数のゾンビが同時に出るという
設定だとしよう。ここでゾンビをどれだけリアルに見せるか, 同時にどれだけ多数出すか,
倒した死体や千切れた四肢をどれだけ画面上に残すか、等は重要な事項だが
全て描画負荷となりFPSを低下させる。しかしゾンビのディテールを落とし,
同時出現数を減らし, 倒した敵はすぐに消える、でも60FPSで動きます!
とするのがユーザーから歓迎される行為なのか? となってくる。
それなら30FPSの方がゲームとして面白くなるから
60FPSにはこだわらないというのは肯ける姿勢である。

一方で格闘ゲームであれば、入力へのレスポンス速度は非常に重要。
グラフィックス面では30FPSの方が有利だが、同時に画面に表示されるキャラクターが
二体だけ等に限定されるといった有利な条件もあるので、他の普通のゲーム並の
クオリティは60FPSでも出せる。よってそれ以上にはこだわらずに60FPSで作るというのも
一つの理解出来る判断である。

以上の様に全部のゲームを引っくるめて、全部30FPSで十分とか
60FPSでなければならないと議論するのはナンセンスであると言えよう。
個々のジャンルやゲームで考えるべき要素と言える。
全部可変設定にしてユーザーのマシン性能に任せれば良いというのも
そんなに簡単な話では無い事は上でも述べた通り。

以上の様にFPSをどうするのかは相当深い話題でもあり話は尽きない。
そして非常に長くなったのでもう一つの話題は別の項で記す事にする。

「FPSキーワード探究 第二回 「FPS」」への1件のフィードバック

  1. 「一般的には」慣例で小文字表記しちゃいますよw
    むしろ「正しくは」大文字で示す、かと。

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