覚えれば家ごはんがぐっと充実の、定番ポトフ!
学校が休みになったり、会食が減って、家での食事の回数が増えた、という人も多いのではないでしょうか。今日のレシピはみなさんおなじみの、ポトフです。仕込んでしまえば、他のことをしながらのんびり作れるスープですから、リモートワークの合間に料理するにもぴったりです。
塩をした鶏肉をベースに、あっさりと、でもうまみのじんわり感じられるスープをめざします。コンソメキューブやソーセージなどの加工肉を使わず、肉と野菜から出るうまみだけで作ったスープは、やさしくてほっとする味わいです。
春になると、ボールのように丸く、葉のやわらかい春キャベツが出回ります。ビタミンカラーのにんじんと合わせて、いろどりも春らしい、軽やかなポトフを作りましょう。
チキンとにんじん、鶏肉のポトフ
材料(2人分) 所要時間50分
鶏もも肉 1枚(約350g)
にんじん 中1本
キャベツの葉 3枚ぐらい
塩 小さじ1と1/2
胡椒 少々
(好みで)マスタード
水 1200mL
作り方
1.鶏に塩胡椒をする
鶏もも肉をポリ袋に入れ、塩と胡椒を加えてもみこむ。★1
2.鶏と野菜を煮る
鶏肉を鍋に入れ、1200mLほど水を張って、中火にかける。アクが出たらすくって弱火に落とし、にんじんのヘタを取ってタテ半割にしたものを加えて15分加熱する。その後、大きく切ったキャベツを加えて弱火のまま15~20分煮る。★2
3.味をととのえ、盛りつける
野菜がやわらかくなったら、塩(分量外)で味を調える。鶏を取り出し、半分に切って野菜と一緒に皿に盛りつけ、好みでマスタードを添える。
レシピのポイント解説
・鶏の下ごしらえ
・鶏と野菜の煮方
・ポトフの食べ方
★1 鶏の下ごしらえ
鶏肉に塩胡椒します。一番簡単で手が汚れないのはポリ袋に入れてもみこむことです。ポリ袋がなければ、もちろん直接まぶしてもOK。塩をこぼさず、しっかり鶏につけるようにしてください。
塩の量は、鶏の重さの2%ほど。今回は小さじ1と1/2を使っています。
それほど厳密でなくても大丈夫
まんべんなく塩がつくように、しっかりともみ込んで
このまま袋から出してすぐ煮込みはじめてもよいのですが、この状態で1日か2日冷蔵庫に置いたものを使うと、鶏に塩がしっかりしみこんで、とてもおいしい塩鶏のポトフになります。ぜひお試しください。
★2 鶏と野菜の煮方
ポトフのレシピは、肉と野菜を全て一緒に煮始めるものがほとんどです。それぞれの野菜からうまみが出て混沌とするのがポトフの良さではあるのですが、野菜にはそれぞれ煮え加減があります。にんじんが煮えるころには、キャベツやたまねぎが煮崩れてスープが濁ってしまう……これが、ポトフを失敗する大きな原因のひとつです。
ですので、肉を最初に入れ、だしが出たところで、野菜を煮えにくい順に入れていくという方法をとってみます。
まず、鶏肉をポリ袋から出して鍋に入れ、水1000~1200mLを加え、中火にかけます。
鍋の大きさはあまり小さすぎず、大きすぎず。この鍋は径20cm。ふたはしない
沸騰すると、鶏からたくさんのアクが出てきますので、これを丁寧にすくいます。
ある程度すくいとった後で火を弱めると、アクが出なくなる
ここで、まずはにんじんを入れます。にんじんはタテ半割、皿に対して少し大きいなと思ったらさらにヨコ半分に切ります。にんじんは大きすぎると鶏肉とのバランスが悪くなるので、中型から小型のものがよいでしょう。皮は、むいてもむかなくても、お好みで結構です。
盛り付ける皿を想定して、切り方を決めるとよい
鶏の脇に、にんじんを入れて煮続ける
ポトフを作るときには、ふたをせずに煮ます。ふたをした方が効率的なようですが、ふたをすると鍋の中の温度が上がり過ぎ、沸騰してスープが濁ってしまうからです。コトコト、ゆっくりと煮込むのがポトフの最大のポイントです。そんなにマメに様子を確認する必要はなく、ある程度火を弱めておけばタイマーをつけて放置しておいて大丈夫です。
さて、にんじんを入れて15分ほど経ったら、キャベツを入れましょう。大きく切っておきます。ポトフだとよく見かける串切りのキャベツを入れても構いませんが、20cmぐらいの鍋の場合は葉をバラバラにしておくと入れやすいですし、また盛り付けるときも崩れることを心配しなくてすみます。キャベツの量は、1/4個までをめやすに、鍋の大きさに合わせて適当に入れて大丈夫です。かさばっているようでも小さくなります。
キャベツは大きく切る。手でちぎってもよい
鍋にゆとりがあれば串切りキャベツでもOK
あとはキャベツがやわらかくなるまで15分から20分。その頃にはにんじんもすっかりやわらかく煮えていると思います。念のため、にんじんを串などでさしてみてください。
スープの味を見て、塩で味をととのえます。鍋の大きさや火加減による蒸発の具合にもよりますが、鶏にした塩だけでは弱いはずです。後述のように、薄味に仕立てておいて、食卓で塩を補うのも良い方法です。
野菜がすっかり煮えたらできあがり
★3 ポトフの食べ方
「ポトフに食べ方なんてあるのか!」と思われる方もいると思いますが、それが、あるんです。 まず、ポトフの本場・フランスでは、具材とスープを別々に食べます。写真のような感じです。
メインとつけあわせの野菜とスープで、完璧な食事!
ただ、塩味だけの野菜や肉は、食べ飽きてしまうのも確か。そこで、フランス人は酸味と塩気のあるマスタードや粗塩をつけて、具材を食べます。また、ピクルスのような酸っぱいものを添え、アクセントにするのです。
日本人にとっては、具だくさんスープ的なイメージのあるポトフは、一皿で食べることが多いですよね。それでよいと思います。
盛りつけはともかく、「単調な味にアクセントをつける」という役割を考えればいいわけで、絶対マスタードというわけでなく、マヨネーズなんかもよく合います。特にポトフの野菜にマヨネーズをたっぷりつけて食べるのは案外おいしいものです。先ほど紹介したように、粗塩を食卓に出し野菜にちょっぴり振りながら食べても、ポトフの単調さが解決できます。この場合はスープの塩味を薄めにしましょう。
最後に盛りつけ方のコツを。ポトフのような大きな具のスープは、具を皿に置いてからスープを注ぐとうまくいきます。まず、にんじん、キャベツの順で皿の向こう側に盛りつけ、鶏を出して半分に切って(やけどをしないように注意!)お皿の手前に置きます。
にんじんを土台にして立体的に盛り付けると美しい
究極のシンプル料理を気軽に楽しんで
ポトフほどシンプルな料理はありません。なんといっても、鍋に肉と野菜と水を入れて、煮るだけ。野菜を大きなまま煮るから特別な技も不要だし、入れる野菜に決まりもなく、懐の深いスープです。
肉も野菜もたっぷり食べられますし、ノンオイルだから胃腸にもたれません。具材は塩ゆでに近いので、もし肉や野菜を食べ残しても、サラダに使ったり、他の料理に使いまわすことも可能です。無駄がなく経済的でもあります。
休みの日、半日でも家にいられるのなら、最初に仕込んで放っておけば、ある程度は放置して、家事や仕事、趣味に没頭していても大丈夫。時間を味方につけましょう。
一仕事終えたら、おいしいスープができているというのは、とても幸せなものだと思います!
【アレンジ】ありあわせの野菜で、お米を入れて、自由自在
ポトフは野菜の組みあわせで味わいに変化がつきます。にんじんとキャベツ以外では、たまねぎ、ながねぎ、かぶ、じゃがいも、まるごとのトマト、ブロッコリー、いんげんなど。根菜との相性がいいですね。れんこんや白菜、きのこなどを使って、和風にまとめるのもよいものです。
スープをブイヨンとして使うと、もっとさまざまな料理ができます。ここでは雑炊を紹介しておきます。
チキンと新たまねぎのポトフ
野菜は1種類でもいいのです。今の時期なら、新たまねぎもおいしいですね。小さめならまるごと、大きければ半分に割って、鶏を煮込み始めて15分ぐらいのタイミングで入れましょう。つまようじをさしておくと、柔らかく煮えても崩れません。
ポトフのおじや
鶏のポトフのスープは、これがそのままチキンブイヨンといえます。具だけを食べてしまって、スープは別の料理にするなんていう食べかたもありです。さまざまな料理に使えますが、ごはんを入れて食べるのはやっぱり最高! 煮た鶏を少量、小さく切ってごはんと一緒にスープに入れ、卵でとじます。
お知らせ
3月12日、文響社からスープの新刊が出ました! この日は、私がスープを作り続けて3000日目の記念日。この連載でお届けしているスープレシピのアイデアも、毎朝のスープから生まれたものです。
この本では、ありふれた食材と、基本の調味料で作れるシンプルなスープ58種類をご紹介。作っているうちに、料理をもっと気楽に自由に楽しむことができるようになるはずです。